災害拠点病院・救命救急センターの耐震化率は全国で93.6%、ただし奈良や大阪では8割に届かず―厚労省
2021.7.27.(火)
昨年(2020年)9月1日時点における病院の耐震化は、前年に比べて1.3ポイント向上し77.3%となったが、都道府県別に見ると、静岡・宮城などで進む一方、京都や福島などで依然として遅れが目立つなど、地域差がある—。
また災害発生時の医療拠点となる災害拠点病院・救命救急センターの耐震化率は同じく1.2ポイント向上し93.6%となった。ただし都道府県別に見ると、秋田・山形など21県では100%を達成できている一方で、奈良や大阪では8割に届かないなど、やはり地域差がある―。
厚生労働省が7月20日に公表した、2020年の「病院の耐震改修状況調査の結果」から、こういった状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(前年の記事はこちら、前々年の記事はこちら、その前年の記事はこちら)。
目次
病院全体の耐震化率、日本全国では前年から1.3ポイント向上して77.3%に
2011年に発生した東日本大震災を大きな契機として、病院の耐震化が重要な政策課題となっています。病院の倒壊・崩壊を防ぎ入院患者や医療従事者を守ることはもちろん、大地以外の災害時に、病院が「一時的な避難先」としての重要な機能を持つことから、▼入院患者の安全確保▼被災者への適切な医療提供確保―を目指し、国は病院の耐震化支援を推進しています。
その後も、大きな地震が日本各地で相次いでおてり、厚労省では、例えば▼医療施設耐震化促進事業(医療施設運営費等補助金)▼災害拠点病院施設整備事業(医療提供体制施設整備交付金)▼地震防災対策医療施設耐震整備事業(同)▼医療施設耐震整備事業(同)―などの耐震化を支援する補助金メニューを準備。あわせて、毎年9月1日時点における「病院の耐震化状況」を調べ、公表しています。
昨年(2020年)9月1日時点における病院全体の耐震化状況は次のようになっています。
▽「全ての建物に耐震性のある」病院の割合【耐震化率】:77.3%(前年比1.3ポイント向上)
▽「一部の建物に耐震性がある」病院の割合:7.5%(同0.1ポイント減)
▽「全ての建物に耐震性がない」病院の割合:1.2%(同0.2ポイント減)
▽「建物の耐震性が不明」な病院の割合:14.0%(同1.0ポイント減)
病院の耐震化率は、2005年に36.4%であったことから、15年間で40ポイント超向上しており、着実に「耐震化が進んでいる」ことが分かります。
病院の耐震化、静岡・宮城などで進むが、京都・福島などで遅れ
次に都道府県別に病院の耐震化状況を見ると、▼静岡県(171病院):91.8%(前年比0.2ポイント低下)▼宮城県(136病院):89.7%(同0.6ポイント向上)▼山形県(67病院):89.6%(同2.8ポイント向上)▼滋賀県(57病院):89.5%(同増減なし)▼島根県(47病院):89.4%(同5.7ポイント向上)—などで高くなっています。
また今年度(2020年度)末時点の耐震化率見込みを見てみると、全国では77.5%(2019年9月1日時点に比べて0.8ポイント向上)、都道府県別では▼静岡県:91.8%(同0.2ポイント低下)▼宮城県:89.7%(同0.6ポイント向上)▼山形県:89.6%(同2.8ポイント向上)▼滋賀県:89.5%(同増減なし)▼島根県:89.4%(同5.7ポイント向上)―などとなりました。上位の顔ぶれは変わらず、また「これ以上の上乗せは、近々には望めない」状況が伺え、「さらなる支援」の検討が必要となってきそうです。
逆に、耐震化が十分に進展していない地域としては、▼京都府(163病院):65.6%(前年比1.1ポイント向上)▼福島県(133病院):69.7%(同3.0ポイント向上)▼大阪府(514病院):69.8%(同1.5ポイント向上)▼山口県(142病院):69.7%(同1.4ポイント向上)―などがあげられます。より一層の努力に期待したいところです。
災害拠点病院などの耐震化、依然、奈良や大阪などで遅れ目立つ
次に、災害時の医療提供拠点となる災害拠点病院・救命救急センター(763病院)に限定して、耐震化状況(2020年9月1日時点)を見ると、次のような状況です。
▽「全ての建物に耐震性のある」病院の割合【耐震化率】:93.6%(前年比1.2ポイント向上)
▽「一部の建物に耐震性がある」病院の割合:6.2%(同0.9ポイント低下)
▽「全ての建物に耐震性がない」病院の割合:0%(同増減なし)
▽「建物の耐震性が不明」な病院の割合:0.3%(同0.2ポイント低下)
また災害拠点病院・救命救急センターの耐震化率を都道府県別に見てみると、▼岩手県(11病院)▼秋田県(14病院)▼山形県(7病院)▼茨城県(17病院)▼群馬県(17病院)▼富山県(8病院)▼石川県(10病院)▼福井県(9病院)▼長野県(13病院)▼静岡県(23病院)▼滋賀県(10病院)▼和歌山県(10病院)▼鳥取県(4病院)▼島根県(10病院)▼徳島県(11病院)▼香川県(10病院)▼高知県(12病院)▼長崎県(14病院)▼大分県(14病院)▼宮崎県(12病院)▼鹿児島県(14病院)―21県で100%を達成できています。前年から、岩手県・島根県・大分県の3県が新たに100%を達成しました。
一方、▼奈良県(7病院):71.4%(前年比増減なし)▼大阪府(19病院):78.9%(同増減なし)▼青森県(10病院):80.0%(同増減なし)▼岡山県(11病院):81.8%(同1.8ポイント向上)▼広島県(19病院):84.2%(同5.3ポイント向上)—などでは耐震化が遅れています。早急な対応とともに、都道府県による支援のテコ入れを検討する必要がありそうです。
【関連記事】
災害拠点病院・救命救急センターの耐震化率、日本全国では92.4%に達したが、福島や大阪、奈良などでは8割に届かず―厚労省
災害拠点病院・救命救急センターの耐震化率、2018年9月には90.7%に向上も、地域別のバラつきあり―厚労省
災害拠点病院・救命救急センターの耐震化率、2017年には89.4%―厚労省