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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

神経内分泌腫瘍への放射性物質ルテチウム投与、特別措置病室での入院治療も可―社保審・医療部会(2)

2022.3.2.(水)

「ソマトスタチン受容体養成の神経内分泌腫瘍」への「ルテチウムオキソドトレオチド」(Lu-177)投与療法では、呼気に放射線が排出されない特徴を踏まえ、放射線治療室以外にも「一定の防護措置・汚染措置を施した特別措置病室」での入院治療が可能である―。

特別措置病室の整備を推進するため、医療法施行規則を改正して「放射線治療室よりも、やや緩和した整備基準」を明確化してはどうか―。

2月28日に開催された社会保障審議会・医療部会では、厚生労働省医政局地域医療計画課の鷲見学課長からこうした報告が行われ、了承されました(関連記事はこちら)。

2月28日に開催された「第86回 社会保障審議会 医療部会」

放射線治療室が不足する中、一定の防護措置などした特別措置病室に注目集まる

がん治療方法の1つとして「放射線内用療法」があります。放射性同位元素(放射線を発する物質)をがん患者の体内に設置し、恒常的に発せられる放射線によりがん細胞死滅を狙うものです。

この「放射線内用療法」は、原則として「放射線治療室」で行われます。患者には放射性医薬品が投与されているため、患者から放射線が発出されることとなり、一般病室や自宅などでの治療では、他の患者や放射線診療従事者などが被曝してしまう恐れがあります(こちら放射線治療室での放射線内用療養について、2022年度診療報酬で対応が行われています、関連記事はこちらこちら)。

具体的には、次のような基準に沿って運用されています。
【放射性医薬品の投与】
▽診療放射性同位元素使用室で実施

【入院】
▽他の患者の被曝が3か月で「1.3mSvを超える」おそれがある場合
→放射線治療病室への入院が必要
▽他の患者の被曝が3か月で「1.3mSv以下」と見込まれる場合
→一般病室での入院も可能(ただし実際にはこの場合でも放射線治療病室への入院が多い)

【退院】
▽公衆の被曝が年間「1mSv以下」となった場合には、退院し自宅等に戻ることが可能

ただし、放射線治療室については、初期投資・維持費が高く、我が国では150床程度の整備にとどまっています。



ところで、2017年から放射性物質「ルテチウムオキソドトレオチド」(Lu-177)の「ソマトスタチン受容体養成の神経内分泌腫瘍」への投与に関する治験が始まり、昨年(2021年)6月に薬事承認が行われました。

この放射性医薬品では、他の放射線医薬品と異なり、「呼気」に放射線が出ないことが大きな特徴(他の放射性医薬品に比べ、他者の被曝量が少ないと言える)です。このため、放射線治療室が不足する中では「ルテチウムオキソドトレオチドを用いる患者では、放射線治療室以外にも、一定の防護措置・汚染防止措置を講じた『特別措置病室』での入院治療を可能としてはどうか」との検討が始まり、今般、「特別措置病室」の基準設定(医療法施行規則の改正)が行われるものです。

「放射線治療室」と「特別措置病室」とで基準を見比べると、例えば、特別措置病室では「使用前検査は不要である」「洗浄・排水設備についてポータブルトイレなどの設置でよい」などと緩和されています。特別措置病室は日本全国で「10床程度」の整備にとどまりますが、設置基準等が明確になったことを受け、今後、整備が進んでいくことが期待されます。

なお、特別措置病室では「空気中の放射性同位元素の濃度」について放射線治療室の「10分の1以下」との基準が設けられており、現在は、呼気に放射線が排出されない「ルテチウムオキソドトレオチド」投与患者のみが入院可能となります(その他の放射性医薬品を用いる放射線内用療養患者は、従来どおり放射線治療室に入院する)。

特別措置病室の基準案(社保審・医療部会(2)1 220228)

医療法施行規則の改正案(その1)(社保審・医療部会(2)2 220228)

医療法施行規則の改正案(その2)(社保審・医療部会(2)3 220228)

医療法施行規則の改正案(その3)(社保審・医療部会(2)4 220228)



この改正内容について2月28日の医療部会では、山崎學委員(日本精神科病院協会会長)らから「最新の知見を踏まえて基準の見直しなども進め、放射線内用療養を日本国内で十分に受けられる体制整備に努めてほしい」(現在、放射線治療室不足により多くの患者が数か月間の入室待ちを迫られている)などの指摘が出たものの、改正内容には異論が出ていません。

この4月(2022年4月)に基準を盛り込んだ改正医療法施行規則が公布され、一定の準備期間をおいて施行開始される見込みです。



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