「能力に応じた負担、必要に応じた給付」の全世代型社会保障構築急げ!コロナ補助・報酬特例見直しを!―財政審建議
2022.12.5.(月)
財務省の財政制度等審議会(以下、財政審)が11月29日、来年度(2023年度)予算編成等に関する建議をまとめ、鈴木俊一財務大臣に提出しました(財務省のサイトはこちら(本文)とこちら(概要)とこちら(参考資料1)とこちら(参考資料2)とこちら(参考資料3)とこちら(参考資料4))。
財政の健全化にむけ「新型コロナウイルス感染症対策の補助金や診療報酬特例の見直し」「医療・介護制度改革」などを検討するよう強く求めています。すでに社会保障審議会などで議論されている項目もあり新味には欠けますが、今後明らかになる改革の全体像に注目が集まります。
コロナ診療報酬特例、病床確保料などの見直しを
財政審建議は、次年度の予算編成に向けた重要な提言です。高齢化の進行や医療技術の高度などで医療・介護をはじめとする社会保障費が増加を続けています。社会保障費の財源は、保険料や公費、自己負担で構成されることから、社会保障費増は「国費増」にもつながり、これが歳出(国の支出)の適正化を遅らせ、財政の健全化を妨げていると指摘されます。このため財政審は、国家財政を健全化させる(税収などを確保するとともに、支出を適正化する)ために「社会保障改革」に向けた具体的な提言を行っているのです。
まず新型コロナウイルス感染症対策については、「医療関係の特例的な支援について順次、見直していくべき」との考えを提示し、▼病床確保料は平時の診療収益の2-12倍となり、コロナのための空床確保が通常医療を圧迫しているとの指摘もあることから、在り方や支援額の水準について更なる見直しを行う▼ワクチン接種協力医師への支援について人件費単価に上限を設けるほか、他経費の使途を明らかにした上で内容を見直す▼特例的な補助金や診療報酬について、項目ごとに早急に縮小、廃止を検討する—などの提案を行っています。
「能力に応じて負担し、必要に応じて給付する」全世代型社会保障の構築急げ
また医療・介護に関しては、次のような様々な提言を行いました。
【全世代型社会保障の構築】
▽現在の仕組みは「能力に応じて負担し、必要に応じて給付する」全世代型社会保障に近づいておらず、改革を進める
【医療提供体制関係】
▽地域医療構想について、▼実施状況を十分にフォローする▼医療費適正化計画において「病床の機能の分化・連携の推進」を必須記載事項とする▼都道府県の責務の明確化、権限の強化などについて必要な法制上の措置を行う▼進捗が乏しい場合の経済的・規制的手法の活用も検する—などし、実現に向けた制度的な対処を行っていく(関連記事はこちら)
▽かかりつけ医機能を強化するための制度整備を行う(関連記事はこちら)
▽医療法人の経営状況把握・データベース化において、現場で働く医療従事者の処遇の把握を行い、費用の使途の『見える化』を通じた透明性の向上を図る観点から、職種ごとの1人当たりの給与額についても確実に把握できるような制度設計を行う(関連記事はこちら)
【医療保険関係】
▽「保健医療支出の伸び」が「経済成長率」と乖離しないことを1つのメルクマールとし、乖離が生じた際にはそれを調整する方向で議論を深める
▽「現役世代1人当たりの後期高齢者支援金の伸び」を「1人当たりの後期高齢者の保険料の伸び」の水準まで抑える制度改正を行う(関連記事はこちら)
▽現行「前期高齢者の加入者数に応じた調整」となっている前期高齢者納付金について、後期高齢者支援金の仕組みと同様に「報酬水準に応じた調整」に移行する(関連記事は(関連記事はこちら)
▽リフィル処方箋の導入・活用促進による医療費効率化効果(医療費ベースでマイナス470億円、改定率換算で▲0.1%の見込み、関連記事はこちら)を早急に検証し、制度の普及促進に向けた周知・広報、積極的な取組を行う保険者へのインセンティブ措置 による評価を行う
▽2023年度薬価改定については、物価高における国民の負担軽減の観点から 対象品目を広げ、適用ルールも通常と同じくした「完全実施」を実現する(関連記事はこちら)
▽薬価見直しにおける「調整幅」については、可及的速やかに廃止を含めて制度の在り方を見直し、少なくとも段階的縮小を実現する
▽既存医薬品の保険給付範囲について「OTC類似医薬品等の保険給付範囲からの除外」「患者負担を含めた薬剤費等に応じた保険給付範囲の縮小」などを検討する
【介護関係】
▽介護保険の利用者負担を原則2割化する(関連記事はこちら)
▽現役世代並み所得等の判断基準を見直す(関連記事はこちら)
▽介護老人保健施設、介護医療院等の多床室について、特別養護老人ホームと同様に「室料負担」を利用者から徴収する(関連記事はこちら)
▽ケアマネジメントにも利用者負担を導入する(関連記事はこちら)
▽要介護1・2への訪問介護・通所介護について地域支援事業への移行を目指し、段階的にでも生活援助型サービスを始め、地域の実情に合わせた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を可能にする(関連記事はこちら)
▽介護事業所の大規模化を推進する
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