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四国がんセンター、2023年4月1日に遡って「特例型」の都道府県がん診療連携拠点病院に指定しなおす―がん拠点病院指定検討会

2023.6.27.(火)

都道府県がん診療連携拠点病院として指定されている「四国がんセンター」(愛媛県)については、従前からの指定要件の1つである「緩和ケアにおける連携協力に関するカンファレンス」要件を2022年度中に満たすことができなかったため、本年(2023年)4月1日に遡って「特例型」に指定しなおす—。

6月26日に開催された「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」(以下、指定検討会)で、こういった方針が固められました。

四国がんセンター、「2022年度内の要件充足」をクリアできず

「日本全国のどの地域に住んでいても、優れたがん医療を受けられる体制を整える」(均てん化)という方針の下、我が国では、高度ながん医療を提供する病院を▼都道府県がん診療連携拠点病院▼地域がん診療連携拠点病院▼地域がん診療病院▼特定領域がん診療連携拠点病院—として指定しています(以下、本稿では全体を拠点病院等と呼ぶ)。

拠点病院等として指定されるには、国の定めた整備基準(指定要件)を満たすことが求められます。この整備基準(指定要件)は昨年(2022年)8月に見直しが行われ、例えば、▼均てん化と集約化のバランスを確保する(希少がん対策などの機能は集約化し、医療の質を高めていく)▼「都道府県やがん医療圏単位」でのBCP(事業継続計画)策定を求める▼地域がん診療連携拠点病院について「高度型」類型を廃止する▼地域がん拠点以外の都道府県拠点・地域がん診療においても、要件をクリアできていない「特例型」を位置づける(いわばイエローカード)▼「保険適用外の免疫療法等」について、実施にとどまらず、「推奨しない」ことを明確化する▼がん相談支援センターの機能強化、アクセス確保などを行う—などの点が注目されます(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

◆がん診療連携拠点病院の指定要件はこちら(厚労省サイト)

がん診療連携拠点病院等の指定要件見直し内容の大枠(がん拠点病院指定検討会1 230119)



指定検討会は、この新整備指針に則り、新たながん診療連携拠点病院等の指定内容を決定し、この4月(2023年)4月1日から稼働しています(関連記事はこちら)。要件をすべて満たすことが原則で、その場合には「一般型」として指定されますが、一部要件を満たさない場合には「1年間、特例型の指定」を受け、その間に要件充足を目指すことになります(言わばイエローカード、1年間で要件充足が適わない場合には指定が外れることになる)。

要件を一部満たせないがん診療連携拠点病院は「1年限りの特例型」に指定される(がん拠点病院指定検討会1 230626)



ところで、この指定に際に次のような救済措置(要件充足が確認されずとも「一般型」として指定する)が設けられました。新整備基準(指定要件)の決定は昨年(2022年)8月1日ですが、指定のベースとなる「9月1日の体制・診療実績確保」までの間に、わずか1か月しかなかったことを受けたものです。

(1)新規の指定申請
(a)従前からの必須要件は「推薦時点での充足」を求める
(b)新規の必須要件は「検討会時点(2023年1月19日)での充足」または「本年(2023年)9月1日時点での充足見込み」で良しとする

(2)指定類型変更・指定更新
(a)従前の必須要件は「見解時点での充足」または「本年(2023年)3月31日時点での充足見込み」を求める
(b)新規の必須要件は「検討会時点2023年1月19日)での充足」または「本年(2023年)9月1日時点での充足見込み」で良しとする

この(2-a)の救済措置の対象の1つとして、愛媛県の都道府県がん診療連携拠点病院である「四国がんセンター」があります。

具体的には、従来からの必須要件である「地域の病院や在宅療養支援診療所、ホスピス・緩和ケア病棟等の診療従事者と協働して、緩和ケアにおける連携協力に関するカンファレンスを月1回程度定期的に開催している」との要件について、「3月末時点で充足できる見込み」と報告され、「それ(3月末の要件充足)を条件に一般型の都道府県がん診療連携拠点病院に指定」されていました。

しかし、同センターでは、地域カンファレンスのリーダー役としての体制整備に時間がかかったことから、「3月末時点での充足」はかなわなかったことが明らかになりました(4月20日に充足することができた)。

この点について6月26日の指定検討会では、「『直後に充足されているので良しとすべき』との考え方もあるかもしれない。しかし、それでは他の病院との平等性が確保されず、がん診療連携拠点病院制度に対する患者・国民の信頼性が損なわれてしまう。『要件充足が期限内に満たされていなかった』点を重く見るべき」との考えが、患者・国民代表である村本高史構成員(サッポロビール社人事部プランニング・ディレクター)や、黒瀨巌構成員(日本医師会常任理事)から強く出され、「本年(2023年)4月1日に遡って、特例型に指定しなおす」ことが決定されました(1年間指定)。



ところで、がん診療連携拠点病院等では、診療報酬上の加算(A242【がん拠点病院加算】)を次のように算定できます。

▽加算1の「イ」:入院初日に500点
→がん診療連携拠点病院(地域がん診療連携拠点病院(特例型)を除く)、キャンサーボードについては看護師、薬剤師等の医療関係職種が参加していることが望ましい

▽加算1の「ロ」:入院初日に300点
→地域がん診療連携拠点病院(特例型)、地域がん診療病院

▽加算2(小児がん拠点病院加算):入院初日に750点
→小児がん拠点病院、キャンサーボードについて看護師、薬剤師等の医療関係職種が参加していることが望ましい

▽加算がんゲノム拠点病院加算:入院初日に250点(上記に上乗せ)
→がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院の指定を受けていると



「→」以下は施設基準の抜粋ですが、ここからは「特例型の都道府県がん診療連携拠点病院」は1の「イ」(500点)を算定するようにも読めます。

しかし、施設基準の示された2022年3月時点には「特例型」は地域がん診療連携拠点病院にしか設定されておらず、上述のとおり、その後の2022年8月に「都道府県がん診療連携拠点病院の特例型」が新設されたという経緯があります。施設基準の趣旨・特例型が設置された経緯を踏まえると、「特例型の都道府県がん診療連携拠点病院」は1の「ロ」(300点)を算定するとも考えられます。

この点について、厚生労働省健康局がん・疾病対策課では「特例型に指定しなおされた場合に、診療報酬の返還が必要になる可能性がある」としており、今後、厚労省保険局医療課で整理が行われることでしょう。

仮に「特例型の都道府県がん診療連携拠点病院」が「1の『ロ』(300点)遡ってを算定する」との解釈が示された場合には、四国がんセンターでは「差額200点分を本年(2033年)4月1日に遡って返還しなければならない」ことになります。

「2023年9月1日に要件充足見込み」となっている病院について、今後充足状況を確認

また上記の救済措置(2-b)について、今後、厚生労働省が「本年(2023年)9月1日時点で充足しているか否か」を確認していくことになります。

6月26日の指定検討会では、「充足されていなかった場合の対応」について、次のような方針を決定しました。

▽現行の指定類型が特例型ではない場合(一般型の場合)
→原則として「特例型への類型変更」を行う(4月1日から9月1日までは一般型としての指定を維持し、9月2日から「特例型」に指定しなおす)

▽現行指定類型が特例型の場合
→既に特例型であるため、原則として対応は不要(指定しなおしなどは原則として行わない)



今後、各病院の状況を踏まえて上記の方針に沿った対応が進められますが、特別な事情がある場合には、改めて指定検討会を開催するなどして対応方法を検討する可能性もあります。

なお、黒瀬構成員は「仮に未充足があり『9月1日までは一般型、9月2日から特例型』となる拠点病院が現れた場合、9月1日に入院した患者では加算1の『イ』(500点)を算定するが、9月2日に入院した患者では同じく加算1の『ロ』(300点)の算定となる。こうした運用が適切かどうか確認してほしい」と要望しています(がん・疾病対策課から保険局医療課に伝えられ確認が行われる)。



なお、がん診療連携拠点病院については「毎年9月1日時点の体制・診療実績」を踏まえて、「類型変更の必要性があるかどうか」の確認が毎年度に行われる(仮に要件がすべて充足され「4年間の一般型指定」となったとしても、途中に要件未充足が明らかになれば、翌年度から「特例型」に変更される。また「特例型」として1年間指定を受けても、その後に要件充足がなされれば、翌年度から「一般型」に復帰できる)点に留意が必要です。

がん治療法の選択、患者・家族と医療者とでは「大きな情報格差」がある点を考慮せよ

ところで、がん診療連携拠点病院には「保険適用外の免疫療法等について、治験、先進医療、特定臨床研究、法に基づく再生医療等の枠組み以外の形では実施・推奨しないこと」との要件が設けられています。

がん診療連携拠点病院の整備指針では「保険適用外の免疫療法について、先進医療などの枠組み以外で実施してはならない」旨を規定(がん拠点病院指定検討会3 230626)



この点、石川県の都道府県がん診療連携拠点病院である「金沢大学附属病院」について、「敷地内にある別法人『金沢先進医療センター』において、自由診療の免疫療法が実施されている」点が問題視されました。

別法人による「自由診療の免疫療法」実施であるため、上記の要件に違反するものではありませんが、「敷地内の施設で実施されれば、患者サイドは『大学病院、拠点病院が実施している』と誤解することは想像に難くない」と指定検討会の内外から、多くの指摘・批判があったものです(関連記事はこちら)。

金沢大病院でも批判を重く受け止め、▼院内の掲示物や広報物を確認し、「金沢先進医学センターに関するもの」を排除した▼「金沢先進医学センターは別組織である」ことを強調した案内に変更した▼金沢先進医学センターにおける免疫療法(自由診療)の初診受付は昨年(2022年)3月で、治療中の患者への免疫療法(自由診療)も同じく12月末ですべて終了した▼今後、自院が「免疫療法においても連携している」との誤解を招かないように努める—との再発防止策を提示し、6月26日の指定検討会で報告が行われました。

金沢大病院による再発防止策(がん拠点病院指定検討会2 230626)



ただし、金沢大病院による「自由診療の免疫療法について、治療法の選択はがん患者・家族の自由意思によるもので、当院の医師が積極的に免疫療法を推奨しているという事実はない」との説明に対し、村本構成員は「患者・家族と医療者との間には圧倒的な情報格差があり、医療者の意見は治療法選択に極めて大きな影響を及ぼす。その点を勘案せずに『患者・家族の自由意思』と簡単にいってほしくない」と非常に強い調子で批判。また泉並木構成員(日本病院会副会長)も「権威のある大学病院から説明・紹介されれば、患者・国民はそれを非常に重く受け止める。今後も類似の事例が生じないように注視していく必要がある」と指摘しています。金沢大病院にとどまらず、すべてのがん診療連携拠点病院が、こうした声を重く受け止める必要があります。



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