Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

金沢大病院の敷地内施設で行われる免疫療法に強い懸念―がん拠点病院指定検討会(2)

2022.3.8.(火)

都道府県がん診療連携拠点病院である金沢大学附属病院と同一敷地内にある「医療法人社団金沢先進医学センター」で、いわゆる免疫療法が行われており、そこには「金沢大病院の医師」も勤務(副業・兼業)している-。

これが先進医療や臨床研究の枠組みで行われていないのであれば、患者サイドは「都道府県がん診療連携拠点病院で実施されている、安全・安心な治療法である」と誤解してしまうことなどが強く懸念される―。

3月4日に開催された「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった議論も行われました。

がん拠点病院等では「先進医療・臨床研究の枠組みでない免疫療法」の実施はNG

「日本全国のどの地域に住んでいても、優れたがん医療を受けられる体制を整える」(均てん化)という方針の下、我が国では、優れたがん医療を提供する病院を▼都道府県がん診療連携拠点病院▼地域がん診療連携拠点病院▼地域がん診療病院▼特定領域がん診療連携拠点病院—として指定しています(以下、全体を拠点病院等と呼ぶ)。

拠点病院等に指定されるためには、▼体制(人材、設備、相談窓口ほか)▼診療実績(手術、化学療法、放射線療法ほか)―などのほかに「保険適応外の免疫療法を提供する場合は、原則として治験を含めた臨床研究、先進医療の枠組みで行うこと」が求められます。

免疫療法と一口に述べても、例えばオプジーボやキイトルーダなどの免疫チェックポイント阻害剤を用いた科学的根拠に基づくものと、科学的根拠に基づかないものとがあります。後者の中にも「効果が期待できる」ものがあると思われますが、一般の患者が「どの免疫療法が効果的なもので、どの免疫療法が怪しげなものなのか」の区別をつけることは極めて困難です。

このため、少なくとも、我が国のがん医療の砦となる拠点病院等では「怪しげな免疫療法は行わない」「免疫療法を含め、新たな治療方法を実施するのであれば、先進医療や臨床研究といった科学的根拠に基づいた枠組みの中で、有効性・安全性を確保しながら実施する必要がある」こととされ、上記の指定要件が設けられたのです。現に「他の要件はすべて満たしているが、先進医療・臨床研究でない形で『免疫療法』を行っている」ために、拠点病院等指定が見送られたケースもあります(関連記事はこちら)。

がん診療連携拠点病院では、免疫療法を行う場合「先進医療や臨床研究の枠組み」によることが求められている



ところで、従前より「金沢大病院と同一の敷地内にある『医療法人社団金沢先進医学センター』において、いわゆる免疫療法が行われている」ことが患者団体から問題視されています。

3月4日の検討会では、患者代表として参画する村本高史構成員(サッポロビール株式会社人事部プランニング・ディレクター)から、次のような問題点を掲げて「患者が都道府県拠点病院である金沢大病院への信頼をもとに、免疫療法を選択してしまうことが強く懸念される」ため、「免疫療法が先進医療・臨床研究の枠組みで行われていないのであれば、1年以内に中止させるべき」との提案がなされました。
▽金沢先進医学センターは金沢大学附属病院と同一敷地内に所在している
▽同センターは自由診療の免疫療法を行っており、ホームページ内で「副作用が少ない」、「他治療との併用による相乗効果が期待できる」などのメリットを示すが、「臨床研究、先進医療の枠組み」である旨は記載されていない
▽同センターの免疫細胞療法医師として、金沢大病院の勤務医が複数名掲載されている



ただし、現行の指定要件からは、「拠点病院が先進医療等の枠組み外で免疫療法を実施してはならない」旨が読み取れ、「拠点病院の敷地内病院に存在する他法人が、先進医療等の枠組み外で免疫療法を実施してはならない」と拡大解釈することは困難です。このため「中止要請」などを行うことは見送られました。



もっとも、▼臨床研究の枠組みで実施されているのか、金沢大がどこまで関与しているのかを厚生労働省で確認する必要があるのではないか(羽鳥裕構成員:日本医師会常任理事)▼「金沢大との連携」を謳うことそのものが患者サイドに大きな誤解を招くものである(田中敦子構成員:東京都福祉保健局技監)▼検討会として「重大な懸念」を持っていることを都道府県拠点病院である金沢大に適切に伝える必要がある(唐澤久美子構成員:東京女子医科大学放射線腫瘍学講座教授・講座主任)―などの厳しい意見が構成員から出されています。藤也寸志座長(国立病院機構九州がんセンター院長)も「検討会として何らかのアクションを行うことを検討する必要がある」との見解を示しています。

藤座長は、拠点病院の指定要件の見直しを議論する「がん診療提供体制の在り方に関する検討会」および「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」の座長も兼ねており、「先進医療・臨床研究の枠組みでない免疫療法の禁止」規定の在り方も検討していく考えもあわせて示しています。例えば、拠点病院本体だけでなく「一定の関係がある施設での実施も禁ずる」ことなどが議論される可能性があります(一定の関係をどう規定するかが重要ポイントになる)。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

【関連記事】

石巻赤十字、長岡赤十字、磐田市立総合、加古川中央の4病院を地域トップの「高度型」がん拠点病院に指定―がん拠点病院指定検討会(1)
秋田赤十字病院が一般型がん拠点病院に復帰、石巻赤十字病院や公立藤岡病院等は要件満たさず特例型に―がん拠点病院指定検討会
地域トップの「高度型がん拠点病院」、新規に藤沢市民病院・浜松医大病院・伊勢赤十字病院・香川労災病院を指定―がん拠点病院指定検討会(1)
砂川市立病院や社会保険田川病院など9病院、一般型の地域がん拠点病院へ復帰―がん拠点病院指定検討会
高度型がん拠点病院、実績ナンバー1項目が最低1つ必要、IMRT実績の要件化を将来検討―がん拠点病院指定検討会(2)
高度型の地域がん診療連携拠点病院、北里大病院、八尾市立病院、日本海総合病院など33施設を新指定―がん拠点病院指定検討会(1)
群馬大病院、2019年7月から「都道府県がん診療連携拠点病院」に復帰―厚労省
都道府県がん拠点病院50施設、地域がん拠点病院339施設など4月1日から新指定―がん拠点病院指定検討会
地域がん診療連携拠点病院、機能・実績に応じ「高度型」「特殊型」など3分類に―がん診療提供体制検討会
がん携拠点病院の新要件固まる、2019年4月から新要件に基づくがん体制始まる―がん診療提供体制検討会
地域がん拠点病院、2019年から機能や実績に応じて3区分に―がん拠点病院指定要件ワーキング
拠点病院にABCの区分設け、補助金などに反映―拠点病院の指定要件ワーキング

第3期がん対策推進基本計画を閣議決定、ゲノム医療推進や希少・難治がん対策など打ち出す
病院にピアサポーターが必要な本当の理由、がん患者を支える非医療職の実像

同一医療圏で複数のがん拠点病院を指定する場合、明確な「相乗効果」が必要―がん拠点病院指定検討会


小児がん拠点病院の集約化に向け診療実績要件厳格化、小児に配慮した妊孕性温存要件―小児がん拠点病院指定要件WG
がんゲノム医療拠点病院等の指定要件見直し論議始まる、エキスパートパネルの重点化なども検討―がんゲノム拠点病院指定要件WG
2022年夏にがん携拠点病院の指定要件見直し、高度型の意義、診療実績・体制要件等を議論―がん拠点病院指定要件WG
がん拠点病院・小児がん拠点病院・ゲノム拠点病院等の指定要件、2022年度に整合性とって改訂―がん診療提供体制検討会