「急性期病棟の介護・リハ力強化」と「地域包括ケア病棟の重症対応強化」の双方を実現すべき―地ケア病棟協・仲井会長
2023.8.7.(月)
2024年度の診療報酬改定に向けて「高齢の急性期入院患者をどの病棟で受け入れるか」が議論されているが、「急性期病棟の介護・リハ力強化」と「地域包括ケア病棟の重症対応強化」の双方を実現すべきではないか—。
関連して「トリアージの精緻化」が必要であり、平素から「地域の高齢患者の外来・在宅医療を行うかかりつけ医療機関」と「入院医療機関」との連携を強化することで、「ときどき入院、ほぼ在宅」を実現できる—。
地域包括ケア病棟協会の仲井培雄会長が8月4日にオンライン記者会見を開催し、こうした考えを強調しました。
「急性期病棟の介護・リハ力強化」と「地域包括ケア病棟の重症対応強化」は二者択一でない
Gem Medでも報じているとおり、2024年度の次期診療報酬改定に向けて「高齢者の急性期入院医療、救急搬送をどの病棟で受け入れるべきか」という議論が中央社会保険医療協議会で進められています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
急性期一般1病棟にも要介護高齢者、認知症高齢者、リハビリが必要な者が相当程度入院している一方で、介護福祉士やリハビリ専門職配置が薄いことから、「寝かせ切り」が生じ、これによりADL低下・廃用・認知機能低下などにつながり、「寝たきり」状態に陥ってしまうのではないかとの課題が浮上しています。
このため、(1)高齢者の急性期入院医療は、介護力・リハビリ力の整っている「地域包括ケア病棟」で対応してはどうか(2)急性期一般1の介護力・リハビリ力強化に向けて、介護福祉士・リハビリスタッフ配置を評価してはどうか―という大きく2つの方向が浮上しています。
ただし(1)の方向については「看護配置が13対1にとどまる地域包括ケア病棟では、重症の急性期患者を受け入れることは難しい。一口に高齢者の急性期入院・救急患者といってもさまざまな病棟がいる」との問題点が、また(2)の方向には「介護従事者不足が指摘される中、急性期病棟での配置は非現実的であり、また介護従事者不足に拍車をかけてしまうのではないか」との問題点が指摘されています。
この点について仲井会長は、「二者択一ではなく、歩み寄り双方を実現することはできないだろうか?急性期病棟においてはリハビリ力の強化、NST(栄養サポートチーム)の強化などを図り、地域包括ケア病棟においては初期加算(急性期患者支援病床初期加算、在宅患者支援病床初期加算)の強化を図ることが重要ではないか。このためには『入院料の引き上げ』が必要である。とりわけ地域包括ケア病棟では包括評価がなされており、重症者への手厚い対応をより円滑に行えるよう、入院料の引き上げが必要となる」との考えを示しています。あわせて、こうした対応により「地域の救急医療体制に余裕が出てくる」とも見通します。
関連して「オーバートリアージ」問題も浮上しています。
仲井会長は「救急隊員や外来医師・看護師は、アンダートリアージの結果、3次救急等への再搬送、高次機能の院内転棟が生じることを避けるために、オーバートリアージなりやすい。その結果、搬送時は高度急性期病院に行きがちになり、入院時は急性期病棟を選びがちになる」と分析し、トリアージの精緻化の必要性を指摘。
このために、例えば「在宅医療等を行うかかりつけ医療機関」と「救急搬送患者を受け入れる病院」とが平時から密接に連携をとり、「在宅療養などの患者の容態が重くなる前に『平素に比べて状態がおかしい』と情報共有し、必要があれば病院に入院させる」ことで、早期対応・早期退院が可能となり、いわゆる「ときどき入院、ほぼ在宅」を実現できます。すでに、こうした取り組みを実践している病院が存在しており、仲井会長は「理想的な対応を行っている病院があることに感銘を受けている」とコメントしています。
このほか仲井会長は、次のような点にも言及しています。
▽2022年度の前回改定後に、地域包括ケア病棟の一定数が「在宅医療提供要件などの厳格化」により急性期一般1へ転換した。うち半数は地域包括ケア病棟への復帰を希望しているが、半数は急性期一般1にとどまっている。これは「地域医療構想の実現」「病院病棟の機能分化」の面で問題があるのではないか
▽従前の「病棟の機能分化」から、現在は「病院の機能分化」が重視されている。このため地域包括ケア病棟を病院の基軸に据え、地域の実情を踏まえて「自院では急性期機能を付加してはどうか」「うちは慢性期機能を強化しよう」などと考えていくべきではないか
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