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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

一口に「メンタル系疾患」と言っても、疾患の種類・診療形態・性年齢により状況は様々、きめ細かなフォローが必要—健保連

2023.8.17.(木)

▼統合失調症、統合失調症型障害および妄想型障害(以下、統合失調症等)▼躁うつ病を含む気分[感情]障害(以下、気分障害)▼神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害(以下、神経症性障害等)―の有病者や医療費を分析すると、疾病の種類によって構造が大きく異なり、また同じ疾病でも、入院と入院外で構造が変わってくる―。

健康保険組合連合会が先頃公表した、2021年度の「被保険者のメンタル系疾患の動向に関するレポート」から、こういった状況が改めて確認できます(健保連のサイトはこちら)。

メンタル系疾患についても、疾患の種類や診療形態、性別・年齢などきめ細かいフォローが必要です。

統合失調症等の入院外医療、受診率は女性、1日当たり医療費は男性で高い

主に大企業の会社員とその家族が加入する「健康保険組合」の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)では、かねてよりデータに基づく保健事業(データヘルス)に積極的に取り組んでいます。

今般、1308組合の被保険者(家族を含まない会社員本人)1582万9097人(男性:1033万2550人(65.3%)、女性:549万6680人(34.7%)、月平均で算出しており合計とは一致しない)のレセプト1億3998万4498件(男性:8547万9998件(61.1%)、女性:5450万4500件(38.9%)を対象として、▼統合失調症等▼気分障害▼神経症性障害等—などの医療費を分析し、その結果を公表したものです。



まず統合失調症・統合失調症型障害・妄想性障害について見てみると、入院外では、有病者の年齢構成は、次のような状況です。
【男性】
▼40-49歳:31.8%(前年度から0.9ポイント減)▼50-59歳:28.9%(同0.7ポイント増)▼30-39歳:21.2%(同増減なし)—

【女性】
▼40-49歳:29.1%(同0.8ポイント減)▼30-39歳:27.6%(同0.3ポイント減)▼20-29歳:20.8%(同0.6ポイント増)▼50-59歳:18.7%(同0.3ポイント増)―

統合失調症等の入院外患者年齢構成(健保連2021年度メンタル系疾患分析1 230720)



1人当たり医療費を見てみると、男性466円(前年度から22円増)、女性512円(同42円増)となりました。これを医療費の3要素(受診率、1件当たり日数、1日当たり医療費)に分解してみると、次のような状況です。
▼受診率は、男性59.8(前年度から3.5ポイント増)、女性67.4(同5.9ポイント増)で、女性が高い
▼1件当たり日数(一連の治療に係る通院日数)は、男女とも1.5日(前年度から男性で0.1日短縮、女性で増減なし)で、男女変わらず
▼1日当たり医療費、男性5067円(前年度から12円減)、女性4955円(同2円増)で、男性がやや高い

また1人当たり医療費を年齢階層別に見てみると、男性では▼40-44歳:600円(前年度から18円増)▼45-49歳:592円(同21円増)▼50-54歳:563円(同18円増)—、女性では▼35-39歳:643円(同41円増)▼40-44歳:633円(同23円増)▼30-34歳:603円(同69円増)▼45-49歳:583円(同30円増)―で高くなっています。

統合失調症等、入院医療費は女性が高いが、入院日数は男性が長い

統合失調症等の入院に目を移すと、有病者の年齢構成は次のような状況です。
【男性】
▼50-59歳:30.7%(前年度から1.3ポイント減)▼60-69歳:19.6%(同0.4ポイント増)▼40-49歳:19.5%(同1.0ポイント減)―

【女性】
▼30-39歳:24.6%(同2.6ポイント増)▼40-49歳:24.0%(同0.2ポイント増)▼50-59歳:24.2%(同4.9ポイント増)―

統合失調症等の入院患者年齢構成(健保連2021年度メンタル系疾患分析2 230720)



1人当たり医療費を見てみると、男性189円、女性215円。医療費の3要素(受診率、1件当たり日数、1日当たり医療費)に分解してみると、次のような状況です。
▼受診率は、男性1.0、女性0.9で、ほぼ同じ
▼1件当たり日数(一連の治療に係る通院日数)は、男性20.3日、女性18.6日で、男性が長い
▼1日当たり医療費、男性9088円、女性1万2851円で、女性がやや高い



また推計平均在院日数は、男性で60.0日(前年度から1.0日短縮)、女性で47.2日(同2.0日短縮)となりました。入院期間短縮が進んでいます。

なお推計新規入院件数(1000人当たり)は、男性0.35(前年度から0.12ポイント増)、女性0.36(同0.24ポイント増)となっています。

気分障害の入院外医療、受診率・1日当たり医療費は男性が高いが、受診率は女性が高い

躁うつ病を含む気分[感情]障害に目を移すと、有病者の年齢構成は次のような状況です。
【男性】
▼50-59歳:30.7%(同0.3ポイント増)▼40-49歳:30.1%(前年度から0.7ポイント減)▼30-39歳:20.0%(同増減なし)―

【女性】
▼40-49歳:27.1%(同0.8ポイント減)▼30-39歳:25.4%(同0.2ポイント減)▼20-29歳:22.6%(同0.9ポイント増)▼50-59歳:20.0%(同増減なし)―

気分障害の入院外患者年齢構成(健保連2021年度メンタル系疾患分析3 230720)



1人当たり医療費は、男性2757円(前年度から20円増)、女性2729円(同202円増)となりました。医療費の3要素に分解すると、次のような状況です。
▼受診率は、男性276.4(前年度から1.9ポイント増)、女性:290.0(同3.49ポイント増)で、女性の方が高い
▼1件当たり日数は、男女とも1.5日(前年度から増減なし)で変わらず
▼1日当たり医療費は、男性6828円(前年度から380円減)、女性:6376円(同297円減)で、男性の方が高い

また1人当たり医療費を年齢階層別に見てみると、男性では▼50-54歳:3676円(前年度から113円減)▼45-49歳:3460円(同63円減)▼55-59歳:3290円(同16円増)―、女性では▼25-29歳:3111円(同393円増)▼35-39歳:3057円(同227円増)▼40-44歳:3033円(同102円増)―で高くなっています。前年度と同じく、女性に比べて、男性で「年齢階層別の1人当たり医療費のバラつきが大きい」ことが確認できるとともに、女性で「20歳代後半が1人当たり医療費が最も高くなっている」点に注目が集まります。

気分障害の入院医療、男性で医療費が高く、受診率・入院日数が長いことが要因

気分障害による入院を見てみると、有病者の年齢構成は次のような状況です。
【男性】
▼50-59歳:35.8%(前年度から0.1ポイント増)▼40-49歳:21.7%(前年度から0.5ポイント減)▼60-69歳:19.1%(同0.9ポイント増)―

【女性】
▼50-59歳:23.5%(同1.3ポイント増)▼40-49歳:21.6%(同2.7ポイント減)▼30-39歳:20.5%(同1.6ポイント減)―

気分障害の入院患者年齢構成(健保連2021年度メンタル系疾患分析4 230720)



1人当たり医療費を見てみると、男性157円、女性140円。医療費の3要素(受診率、1件当たり日数、1日当たり医療費)に分解してみると、次のような状況です。
▼受診率は、男性1.4、女性1.2で、男性がやや高い
▼1件当たり日数(一連の治療に係る通院日数)は、男性17.9日、女性16.4日で、男性がやや長い
▼1日当たり医療費、男性6232円、女性6995円で、女性がやや高い



また推計平均在院日数は、男性で43.3日(前年度から0.9日延伸)、女性で35.5日(同0.6日延伸)となりました。

なお推計新規入院件数(1000人当たり)は、男性0.59(前年度から0.20ポイント増)、女性0.57(同0.37ポイント増)となっています。

神経症性障害等の入院外医療、受診率・1日当たり医療費とも女性がやや高い

最後に神経症性障害・ストレス関連障害・身体表現性障害を見てみましょう。入院外における有病者の年齢構成は次のようになりました。
【男性】
▼50-59歳:28.4%(前年度から0.2ポイント増)▼40-49歳:28.3%(同0.4ポイント減)▼30-39歳:19.9%(同0.1ポイント増)―

【女性】
▼40-49歳:27.0%(同0.7ポイント減)▼30-39歳:23.5%(同0.1ポイント減)▼20-29歳:21.4%(同1.0ポイント増)▼50-59歳:21.3%(同0.1ポイント減)―

神経症性障害等の入院外患者年齢構成(健保連2021年度メンタル系疾患分析5 230720)



1人当たり医療費は、男性597円(前年度から47円増)、女性867円(同116円増)となり、医療費の3要素に分解すると次のような状況です。
▼受診率は、男性229.6(前年度から16.9ポイント増)、女性294.6(同34.2ポイント増)で、女性のほうが高い
▼1件当たり日数は、男女とも1.4日(前年度から増減なし)で、男女差はない
▼1日当たり医療費は、男性1848円(前年度から29円増)、女性2061円(同52円増)で、女性のほうが高い

また1人当たり医療費を年齢階層別に見てみると、男性では▼40-44歳:672円(前年度から57円増)▼45-49歳:665円(同56円増)▼50-54歳:658円(同38円増)—、女性では▼15-19歳:973円(同274円増)▼40-44歳:954円(同105円増)▼25-29歳:938円(同181円増)—などで高くなっています。

神経障害等の入院医療、医療費は女性で高く、入院日数は男性でやや長い

神経障害等による入院では、有病者の年齢構成は次のような状況です。
【男性】
▼50-59歳:32.2%(前年度から1.0ポイント増)▼40-49歳:21.3%(同0.9ポイント減)▼60-69歳:20.2%(同0.9ポイント増)—

【女性】
▼30-39歳:26.1%(同0.6ポイント減)▼40-49歳:22.2%(同0.7ポイント減)▼50-59歳:21.2%(同0.8ポイント増)▼20-29歳:20.2%(同増減なし)—

神経症性障害等の入院患者年齢構成(健保連2021年度メンタル系疾患分析6 230720)



1人当たり医療費を見てみると、男性20円、女性33円。医療費の3要素(受診率、1件当たり日数、1日当たり医療費)に分解してみると、次のような状況です。
▼受診率は、男性0.9、女性1.1で、女性がやや高い
▼1件当たり日数(一連の治療に係る通院日数)は、男性15.0日、女性12.8日で、男性がやや長い
▼1日当たり医療費、男性1487円、女性2342円で、女性がやや高い



また推計平均在院日数は、男性で28.9日(前年度から1.2日短縮)、女性で22.1日(同0.3日短縮)となりました。入院日数の短縮が進んでいるようです。

なお推計新規入院件数(1000人当たり)は、男性0.48(前年度から0.16ポイント増)、女性0.65(同0.42ポイント増)となっています。



このように、同じメンタル系疾患でも、疾病の種類によって有病者の発生状況や医療費の構造(つまり診療内容)が大きく異なることが分かります。さらに、同じ疾病でも、入院外(比較的軽度者)と入院(比較的重度者)では、医療費の構造が全く異なる状況を改めて確認できます。

国や保険者による、疾病別・性別・年齢別・重症度別の「きめ細かいフォロー」が、有病者の抑制(医療費の抑制、生産性の向上、国民自身のQOL向上につながる)に必要と言えるでしょう。



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