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2017年度の生活習慣病医療費、入院外では「糖尿病」がシェア第1位に躍り出る—健保連

2019.7.23.(火)

2017年度における生活習慣病の医療費を分析すると、▼入院では家族において、脳血管障害の医療費シェアが大きく増加している▼入院外では、糖尿病が生活習慣病における医療費シェア第1位となった―。

健康保険組合連合会が7月19日に公表した2017年度の「生活習慣関連 10 疾患の動向に関する調査」から、このような状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)(前年度の状況はこちら)。

健保組合加入者の家族、脳血管障害の医療費シェアが大きく増加

主に大企業で働くサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)は、さまざまな角度からレセプトを分析し、各種提言を行うなど、かねてからデータヘルスに積極的に取り組んでいますり(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)、今般、1280組合におけるレセプト3億7908万5541件を対象に、生活習慣病(▼糖尿病▼脳血管障害▼虚血性心疾患▼動脈閉塞▼高血圧症▼高尿酸血症▼高脂血症▼肝機能障害▼高血圧性腎臓障害▼人工透析―の10疾患)医療費について分析を行いました。以下、分析結果を眺めてみましょう。

 
 2017年度における健保組合加入者の医科・調剤医療費は約3兆4827 億億円で、このうち生活習慣病10疾患の医療費は4554億円で、医科・調剤医療費に占める割合は全体の13.1%(前年度に比べて1.9ポイント増)となりました。入院と入院外に分けると、入院591 億円(生活習慣病10疾患医療費の13.0%)、入院外3964億円(同87.0%)で、入院外が9割を占めています。

 ここから、入院と入院外に分けて、疾患別に医療費の状況を見ていきましょう。

 「入院における生活習慣病10疾患医療費」を100として、疾患別の構成を見ると、▼脳血管障害:34.0%(前年度から0.4ポイント増)▼虚血性心疾患:31.7%(同0.3ポイント増)▼糖尿病:12.6%(同0.1ポイント減)▼高血圧症:9.4%(同0.6ポイント減)▼人工透析:8.9%(同増減なし)—などが多くなっています。
健保連 2017年度生活習慣病医療費分析1 190719
 
被保険者本人(以下、本人)と家族で分けて見ると、本人では▼虚血性心疾患:37.6%(同0.4ポイント増)▼脳血管障害:31.5%(同増減なし)▼糖尿病:11.8%(同0.1ポイント減)▼高血圧症:8.8%(同0.5ポイント減)▼人工透析:7.0%(同0.1ポイント減)―、家族では▼脳血管障害:41.3%(同1.4ポイント増)▼糖尿病:14.9%(同0.3ポイント減)▼人工透析:14.6%(同増減なし)▼虚血性心疾患:13.9%(同0.4ポイント減)▼高血圧症:11.3%(同0.7ポイント減)―の順となっています。家族で脳血管障害のシェアが大きく増加している点が気になります。
健保連 2017年度生活習慣病医療費分析2 190719
 

生活習慣病医療費を3要素に分解し、それぞれの特性に応じた適正化対策を

 医療費は、「患者数」と「1人当たり医療費」に分解することができます。ここでは後者の「1人当たり医療費」について詳しく見てみましょう。

 本人では、▼虚血性心疾患:1062円(前年度に比べて20円増)▼脳血管障害:890円(同8円増)▼糖尿病:333円(同増減なし)▼高血圧症:249円(同11円減)▼人工透析:198円(同増減なし)―の順で医療費が高くなっています。

さらに、これら疾患の「1人当たり医療費」を、(1)受診率(1000人当たり件数)(2)1件当たり日数(3)1日当たり医療費—の3要素に分解してみると、次のような状況が分かります。

▽虚血性心疾患:「1日当たり医療費」が4万4949円(前年度比べて1628円増)と他疾患に比べて極めて高い(最多)

▽脳血管障害:「1件当たり日数」が16.5日(同増減なし)と2番目に高く、「1日当たり医療費」が2万5399円(同554円増)と3番目に高い

▽糖尿病:「受診率」が7.2(同増減なし)と2番目に高い

▽高血圧症:「受診率」が8.8(同0.1増)と最も高い

▽人工透析:「1日当たり医療費」が3万2853円(同233円減)と2番目に高い
健保連 2017年度生活習慣病医療費分析7 190719
 
一方で家族では、「1人当たり医療費」が高い疾患は▼脳血管障害:505円(同37円減)▼糖尿病:183円(同4円増)▼人工透析:178円(同7円増)▼虚血性心疾患:170円(同2円減)▼高血圧症:138円(同3円減)―の順で医療費が高くなっています。

3要素に分解してみると、次のような状況が伺えます。

▽脳血管障害:「1件当たり日数」が17.9日(同増減なし)、「1日当たり医療費」が1万8880円(同1046円増)で、ともに2番目に高い

▽糖尿病:「受診率」が4.2(同増減なし)で2番目に高い

▽人工透析:「1日当たり医療費」が2万7965円(同270円増)で群を抜いて高い(最多)

▽虚血性心疾患:「1日当たり医療費」が1万444円(同400円増)で3番目に高い

▽高血圧症:「受診率」が4.6(同増減なし)で最も高い
健保連 2017年度生活習慣病医療費分析8 190719
 
 まず、受診率の高い疾患(本人・家族ともに高血圧症・糖尿病・高脂血症)については、生活習慣の改善が最も重要です。この点、まさに「保険者の重要な役割」であり、健保連等が主導して、各保険者に対し「生活習慣の改善」に向けた教育や普及・啓発を図ることが期待されます。

また、1件当たり日数の長い疾患(本人・家族ともに動脈閉塞や脳血管障害、人工透析)については、「早期退院」に向けて、入退院支援や在宅医療体制整備、早期のリハビリテーション実施などを総合的に進める必要があります。

さらに、1日当たり医療費の高い疾患(本人・家族ともに脳血管障害や人工透析)については、医療の質が低下しては本末転倒なため、必要な医療を確保した上で、同じ効果で低価格の後発医薬品の使用を進めることなどが重要です。

入院外では、糖尿病の医療費シェアが増加し、生活習慣病で第1位に

 次に入院外を見てみましょう。前述のとおり、生活習慣病医療費の9割は入院外で発生しており、その動向を確認することが医療費適正化に向けて極めて重要です。

「入院外における生活習慣病10疾患医療費」を100として疾患別の構成を見ると、▼糖尿病:29.1%(前年度から同1.2ポイント増)▼高血圧症:29.0%(同1.5ポイント減)▼高脂血症:18.3%(同0.1ポイント減)▼人工透析:15.9%(同0.3ポイント増)▼虚血性心疾患:2.6%(同増減なし)—などが多くなっています。糖尿病が高血圧症を抜き、第1位に躍り出ています。
健保連 2017年度生活習慣病医療費分析3 190719
 
本人・家族別に見ると、本人では▼高血圧症:29.9%(同1.6ポイント減)▼糖尿病:29.7%(同1.2ポイント増)▼高脂血症:17.5%(同増減なし)▼人工透析:14.8%(同0.2ポイント増)▼高抗尿酸値血症:3.0%(同0.3ポイント増)―、家族では▼糖尿病:27.1%(同1.0ポイント増)▼高血圧症:26.2%(同1.3ポイント減)▼高脂血症:20.9%(同0.2ポイント減)▼人工透析:19.4%(同0.6ポイント増)▼脳血管障害:2.7%(同0.1ポイント減)―の順です。
健保連 2017年度生活習慣病医療費分析4 190719
 
 1人当たり医療費を見てみると、本人では▼高血圧症:5776円(同219円減)▼糖尿病:5750円(同323円増)▼高脂血症:3380円(同38円増)▼人工透析:2860円(同78円増)―の順で医療費が高くなっています。

3要素に分解してみると、次のような状況です。

▽高血圧症:「受診率」が843.5(同13.5増)と最も高い

▽糖尿病:「受診率」が559.8(同13.3増)と3番目に高い

▽高脂血症:「受診率」が748.9(同81.9減)と2番目に高い

▽人工透析:「1件当たり日数」12.4日(同増減なし)と「1日当たり医療費」3万724円(同361円増)が飛び抜けて高い(いずれも最多)
健保連 2017年度生活習慣病医療費分析9 190719
 
一方、家族では、「1人当たり医療費」が高い疾患は▼糖尿病:2081円(同66円増)▼高血圧症:2008円(同120円減)▼高脂血症:1601円(同30円減)▼人工透析:1487円(同35円増)―などです。糖尿病が「1人当たり医療費」第1位に浮上しました。

3要素に分解してみると、次のような状況が分かります。

▽糖尿病:「受診率」が244.3(同2.4増)と3番目に高く、「1日当たり医療費」が6047円(同211円増)と2番目に高い

▽高血圧症:「受診率」が340.6(同3.0減)と2番目に高い

▽高脂血症:「受診率」が360.7(同2.1減)と最も高い

▽人工透析:「1件当たり日数」が12.6日(同増減なし)と「1日当たり医療費」が2万8815円(同233円増)と、飛び抜けて高い
健保連 2017年度生活習慣病医療費分析10 190719
 
 人工透析については、1件当たり日数は横ばいですが、「単価」(1日当たり医療費)が増加しており、今後の「診療報酬改定」でも適正化のターゲットとなる可能性があります。

40歳を過ぎた頃から虚血性心疾患、脳血管障害、高血圧症のリスクが急騰

さらに、「生活習慣病10疾患の医療費」を100として、年齢階層別に「10疾患の構成割合」を見てみると、次のような状況が浮かんできました。ここからも40歳以上を対象とした「特定健診」「特定保健指導」の重要性を再確認することができます。

【入院】
▽本人では、30歳代後半から「虚血性心疾患」の医療費シェアが高くなり、55歳を過ぎると4割程度になる
 
▽家族では、「脳血管障害」の医療費シェアが高く、とくに40-59歳では4-5割を占める
健保連 2017年度生活習慣病医療費分析5 190719
 
【入院外】
▽本人・家族とも、40歳代から「高血圧症」の医療費シェアが増加する
健保連 2017年度生活習慣病医療費分析6 190719

 
 
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