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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

統合失調症や気分障害は男性で、神経症性障害は女性で1人当たり医療費が高い—健保連

2017.5.2.(火)

 ▼統合失調症、統合失調症型障害および妄想型障害(以下、統合失調症など)▼躁うつ病を含む気分[感情]障害(以下、気分障害)▼神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害(以下、神経症性障害など)―を分析すると、統合失調症などと気分障害では「男性のほうが1人当たり医療費が高い」が、神経症性障害などでは逆に「女性のほうが1人当たり医療費が高い」―。

 健康保険組合連合会が4月25日に公表した、2015年度の「メンタル系疾患(被保険者:入院外)の動向に関するレポート」からこのような状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。

統合失調症、男女で有病率に差はないが、男性のほうが1人当たり医療費が高い

 主に大企業で働くサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)では、データヘルスに積極的に取り組んでおり(関連記事はこちらこちらこちら)、今般、1234組合の被保険者(サラリーマン本人)1447万2130人(男性974万8194人、女性472万3984人、月平均で算出しており合計と一致しない)のレセプト7578万4748件(男性4773万5762件、女性2804万8986件)を対象として、▼統合失調症など▼気分障害▼神経症性障害など—の医療費などを分析しています。

今般の健保連調査における対象疾患

今般の健保連調査における対象疾患

 

 まず統合失調症などについて見てみると、2015年度における有病率(被保険者に占める有病者数の割合)は男女ともに0.38%ですが、暦月でみると男女ともに10月・12月・3月にやや有病率が高く(0.39%)なっています。

 有病者の年齢階層別の構成比率を見ると、男性では40-44歳(18.58%)、45-49歳(17.81%)、50-54歳(14.59%)、35-39歳(14.39%)が多く、35-54歳で有病者全体の65%超を占めています。女性では、40-44歳(18.28%)、45-39歳(16.73%)、30-34歳(16.59%)、45-49歳(13.55%)が多く、30-49歳で有病者全体の65%超を占めています。男性に比べて女性のほうが若い世代の有病者が多くなっていますが、女性のほうが「母数となる被保険者が若い世代で多い」ことも関係している可能性があります。

 次に医療費に目を移しましょう。統合失調症などの1人当たり医療費は男性479円、女性441円と男性のほうが高くなっています。これを医療費の3要素(受診率、1件当たり日数、1日当たり医療費)に分解すると、▼受診率は男性(45.8)のほうが、女性(46.0)より低い▼1件当たり日数は男性(1.7日)のほうが、女性(1.6日)より長い▼1日当たり医療費は男性(6176円)のほうが、女性(5906円)よりも高い—ことが分かり、主に「1日当たり医療費」が男性で高くなっている点に、1人当たり医療費の高さの原因があると伺えます。

 さらに年齢階層別に1人当たり医療費を見ると、男性では40-44歳(634円)、45-49歳(615円)、35-39歳(590円)、50-54歳(561円)で高く、女性では40-44歳(578円)、35-39歳(567円)、30-34歳(523円)、45-49歳(485円)で高くなっています。健保連では「女性のほうが、男性に比べて比較的若い年齢層で1人医療費が高い傾向が示された」とコメントしています。

性・年齢階層別に見た統合失調症、統合失調症型障害および妄想型障害の1人当たり医療費。男性のほうが高いことが分かる

性・年齢階層別に見た統合失調症、統合失調症型障害および妄想型障害の1人当たり医療費。男性のほうが高いことが分かる

気分障害、男性で有病率・1人当たり医療費ともに高い

 次に気分障害について見ると、2015年度における有病率(被保険者に占める有病者数の割合)は男性1.95%、女性1.73%と男性で高くなっています。暦月で見ると、男性では10月、12月、3月、女性では6月、10月、12月、3月にやや高くなります。

 有病者の年齢階層別の構成比率を見ると、男性では45-49歳(18.51%)、40-44歳(17.46%)、50-54歳(15.96%)、35-39歳(13.00%)が多く、35-54歳で有病者全体の65%弱を占めています。女性では、40-44歳(17.13%)、35-39歳(15.27%)、30-34歳(14.58%)、45-49歳(14.18%)が多く、30-49歳で有病者全体の60%超を占めています。前述の統合失調症などと同様の傾向と言えるでしょう。

 1人当たり医療費を見てみると、男性3075円、女性2428円とやはり男性のほうが高くなっています。医療費の3要素に分解すると、▼受診率は男性(238.5)のほうが、女性(211.6)より高い▼1件当たり日数は男女とも同じ(1.6日)▼1日当たり医療費は男性(8219円)のほうが、女性(7390円)よりも高い—ことが分かりました。男性のほうが1人当たり医療費が高い原因は、「受診率」と「1人当たり医療費」にあるようです。

 さらに年齢階層別に1人当たり医療費を見ると、男性では45-49歳(4480円)、50-54歳(4239円)、40-44歳(3861円)、35-39歳(3376円)で高く、女性では40-44歳(2982円)、35-39歳(2849円)、45-49歳(2808円)、30-34歳(2605円)で高くなっています。女性に比べて、男性では「年齢階層別の1人当たり医療費のバラつきが大きい」点が気になります。

性・年齢階層別に見た躁うつ病を含む気分[感情]障害の1人当たり医療費。男性のほうが高く、かつ年齢によるバラつきが大きなことが分かる

性・年齢階層別に見た躁うつ病を含む気分[感情]障害の1人当たり医療費。男性のほうが高く、かつ年齢によるバラつきが大きなことが分かる

神経症性障害、女性のほうが有病率・1人当たり医療費ともに高い

 最後に神経症性障害などについて見てみましょう。2015年度における有病率は男性1.47%、女性1.70%で、先ほどまでと異なり女性で高くなっています。暦月で見ると、男性では10月、12月、3月、女性では6月、10月、12月、3月に増加する傾向があり、さらに「女性では暦月の有病率の変動が大きい」ことが伺えます。

 有病者の年齢階層別の構成比率を見ると、男性では45-49歳(16.16%)、40-44歳(15.68%)、50-54歳(14.66%)、35-39歳(12.17%)が多く、35-54歳で有病者全体の60%弱を占めています。女性では、40-44歳(16.16%)、45-49歳(14.07%)、35-39歳(13.91%)、30-34歳(13.20%)が多く、30-49歳で有病者全体の60%弱を占めています。統合失調症などや気分障害と比べて、有病者が若干幅広い年齢層に分布しています。

 1人当たり医療費を見てみると、男性527円、女性668円と女性のほうが高くなっています。医療費の3要素に分解すると、▼受診率は男性(180.5)のほうが、女性(209.1)よりも低い▼1件当たり日数は男女とも同じ(1.5日)▼1日当たり医療費は男性(1991円)のほうが、女性(2166円)よりも低い—ことが分かりました。女性で1人当たり医療費が高い原因は、「受診率」と「1人当たり医療費」にあることが分かります。

 年齢階層別に1人当たり医療費を見ると、男性では45-49歳(629円)、50-54歳(628円)、40-44歳(602円)、35-39歳(569円)で高く、女性では40-44歳(766円)、45-49歳(743円)、35-39歳(740円)、30-34歳(701円)で高くなっています。

性・年齢階層別に見た神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害の1人当たり医療費。女性のほうが高くなっていることが分かる

性・年齢階層別に見た神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害の1人当たり医療費。女性のほうが高くなっていることが分かる

 

 このようにメンタル系疾患と一口にいっても、疾病の種類によって、有病者の発生状況や医療費の構造(つまり診療内容)は相当程度異なっていることが分かります。国は、事業者に従業員に対するストレスチェックを義務付けするなどメンタルヘルスにも力を入れていますが、性別・年齢別にきめ細かいフォローを行うことがより効果的と言えるでしょう。

 
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