がん医療費は医療費全体の1割強、うち乳がんの医療費が最多で14.5%占める―健保連調査
2016.10.18.(火)
健康保険組合連合会の医療費総額(3兆4155億円)のうち、10.5%はがん(悪性新生物)が占めており、がんの種別に見ると、乳がんが最も多く、次いで大腸がん、胃がんの順となっている。また、がんの種別に1入院当たり医療費を見ると、男性では甲状腺がん(51万1192円)、女性では乳がん(55万5429円)が最も高い―。
健康保険組合連合会が12日に公表した「悪性新生物(がん)の動向に関する調査分析」から、こういった状況が明らかになりました(関連記事はこちら)(健保連のサイトはこちら)。
がんは我が国の死因第一位で、医療費に占める割合も高くなっており、生活習慣の改善による予防や検診受診による早期発見・早期治療をより積極的に進める必要があります。
1入院当たり医療費、男性では甲状腺がん、女性では乳がんが最も高い
今回の調査は、1124の健康保険組合(主に大企業の従業員とその家族が加入する公的医療保険)の加入者2620万193人のレセプトデータ(2014年度)をもとに、(1)胃がん(2)肺がん(3)大腸がん(結腸、直腸がんを含む)(4)子宮がん(5)乳がん(6)男性生殖器がん(7)肝がん・肝内胆管がん(以下、肝がん)(8)甲状腺・その他内分秘腺がん(以下、甲状腺がん)―の状況を調べたものです。
1124健保組合の2014年度医療費総額は3兆4155億円で、疾患別に見ると、もっとも大きなシェアを占めるのは呼吸系疾患で16.1%となっています。がんは医療費シェア第2位で、その割合は10.5%となっています。このほか、循環器系疾患10.3%、内分泌・栄養・代謝疾患9.2%、消化器系疾患7.2%などが大きなシェアを占めています。
がんの医療費について、がん種別のシェアを見ると、上記8がん種でがん医療費の47.6%とほぼ半分を占めています。さらに8がん種別に限定して医療費のシェアを見てみると、最もシェア率が高いのは乳がんで30.4%、次いで大腸がん22.1%、胃がん13.5%、気管・肺がん12.1%と続きます。男女別に見ると、男性では大腸がん31.9%、胃がん20.7%、男性生殖器がん18.7%、気管・肺がん18.5%、女性では乳がん52.2%、大腸がん14.9%、子宮がん11.3%、胃がん8.3%という状況です。
さらに、8がん種別に1入院当たり医療費(推計)を見ると、男性では甲状腺がんが最も高く51万1912円、次いで乳がん46万9636円、気管・肺がん45万604円と続きます。また女性では、乳がんが最も高く55万5429円、次いで甲状腺がん52万3315円、気管・肺がん45万1003円という状況です。
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