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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

2016年度の前回診療報酬改定後、7対1病院は厳しい経営環境に立たされている―福祉医療機構

2017.12.27.(水)

 2016年度の前回診療報酬改定後、7対1一般病院では経営状況が厳しくなっている。赤字病院には、黒字病院と比べて病床利用率が低い傾向が見られる―。

 福祉医療機構(WAM)は、12月26日に公表したリサーチレポート「平成28年度病院の経営状況について」の中でこのような分析結果を明らかにしています(関連記事はこちら)(WAMのサイトはこちら)。

2016年度診療報酬改定後に一般病院の医業利益率が低下、加算取得による人件費増が要因か

 このリサーチレポートはWAMが貸し付けを行っている1376病院を対象とした分析結果で、内訳は▼一般病院(一般病床が全病床の50%超)656施設▼療養型病院(療養病床が全病床の50%超)470施設▼精神科病院(精神病床が全病床の80%超)250施設―となっています。病床規模別に見ると、「300床未満」が全体の82.5%を占め、病院類型別の割合は、▽一般病院81.7%▽療養型病院93.4%▽精神科病院64.0%―となります。

 WAMが病院類型別に収支の状況を調べたところ、病院の収益性を表す医業収益対医業利益率は2016年度、▼一般病院0.3%(前年度比0.8ポイント減)▼療養型病院4.7%(同0.9ポイント減)▼精神科病院2.5%(同0.1ポイント増)―で、精神科病院を除き、前年度から悪化しています。

病院類型別の医業収益対医業利益率は、精神科病院を除いて前年度から悪化している

病院類型別の医業収益対医業利益率は、精神科病院を除いて前年度から悪化している

病院の機能性を示す指標を見ると、患者規模当たりの従事者数が、どの病院類型でも増加していることが分かる

病院の機能性を示す指標を見ると、患者規模当たりの従事者数が、どの病院類型でも増加していることが分かる

 このうち、一般病院の収支状況(100床当たり)を見ると、前年度と比べて医業収益が0.7%増えた(20億500万2000円→20億1911万円)一方で、医業費用が1.5%増え(19億8376万円→20億1262万1000円)、医業利益が69.5%と大幅に低下しています(2124万2000円→648万9000円)。

 一般病院の医業収益が増えた要因について、WAMでは、「『医師事務作業補助体制加算』『急性期看護補助体制加算』『データ提出加算』『退院支援加算』などの、2016年度診療報酬改定で充実・新設された加算の取得が図られた結果ではないか」と考察。一般病院では、患者規模100人当たりの従事者数が2.7人増えており(130.7人→133.4人)、「従事者の増員により加算の取得を進めた」とみています。

 従事者数が増えた結果、医業収益に対する人件費率は0.9ポイント上昇(52.4%→53.3%)しており、人件費の増加が「医業利益率の低下に大きな影響を与えている」とWAMは指摘しています。

 こうした分析結果からは、専門職の専従配置などを要件とする入院基本料等加算などの創設に伴って、各病院の人員体制が充実してきているものの、経営面では厳しくなっていることが分かります。この点、来年度(2018年度)の次期診療報酬改定では、専従配置の弾力的な運用が認められる見通しで、「医療の質を高めつつ、職員を効率的に配置する」病院経営者の手腕が問われることになりそうです(関連記事はこちら)。

赤字の7対1病院では病床利用率が低く、赤字の10対1病院では人件費率が高い

 WAMではまた、主な入院基本料が7対1の一般病院と10対1の一般病院に分けて、それぞれの経営状況を分析。ただし、病床規模や他病床が収支などに及ぼす影響を除外するため、「300床未満」かつ「療養病床を持たない」一般病院のみを対象にしています。

7対1病院と10対1病院の、黒字・赤字別の分析結果を見ると、100床当たり医業費用は、7対1では黒字病院の方が高く、10対1では赤字病院の方が高い

7対1病院と10対1病院の、黒字・赤字別の分析結果を見ると、100床当たり医業費用は、7対1では黒字病院の方が高く、10対1では赤字病院の方が高い

 7対1病院は116施設あり、医業収益対医業利益率はマイナス0.7%と、厳しい経営状況が伺えます。さらに、黒字病院63施設と赤字病院53施設に分けると、▼病床利用率は、黒字病院(85.0%)が赤字病院(80.5%)よりも4.5ポイント高い▼100床当たり医業収益は、黒字病院(26億2851万円)が赤字病院(23億7479万8000円)よりも2億5371万2000円・10.7%高い―といった差が見られました。つまり赤字病院では、▽新規入院患者数が伸びず、病床利用率が低い▽7対1入院基本料の厚い看護配置基準に見合った収益を確保できていない―と考えられ、WAMは、「患者確保と病棟運営のバランスが取れていない可能性が示唆される」と課題を指摘しています。

 この点、2016年度診療報酬改定では、7対1病棟の施設基準のうち「重症度、医療・看護必要度の基準を満たす重症患者割合」が、従前の15%以上から25%以上(200床未満では23%の経過措置あり)に引き上げられました。赤字病院の病床利用率が低い状況からは、この基準引き上げに伴い、「7対1病床数に見合うだけの重症患者数を確保できていない病院」の収支が悪化していると考えられます。こうした病院では、重症患者数を増やすための施策(例えば、救急搬送後に入院する患者数を増やす)を講じるか、患者の状態に見合った入院基本料への届け出変更を検討することが、経営改善の近道になるかもしれません。

 一方、10対1病院127施設では、医業収益対医業利益率は0.8%で、7対1病院よりも高い状況です。こちらも、黒字病院79施設と赤字病院48施設に分けると、▼100床当たり医業費用は、黒字病院(18億4718万4000円)が赤字病院(19億4338万1000円)よりも9619万7000円・4.9%低い▼医業収益に対する人件費率は、黒字病院(51.5%)が赤字病院(57.6%)よりも6.1ポイント低い―といった特徴があり、WAMは、収益よりも支出(特に人件費)に問題を抱えているとの見方を示しています。

 これらの分析結果からは、7対1病院と10対1病院とで、経営改善に向けて取り組むべき課題に異なる傾向があることが示唆されます(7対1病院は病床利用率の低下、10対1病院は人件費の増加が主な赤字要因だと考えられる)。また、当然のことながら、経営上の課題は病院ごとに異なります。病床規模などが近い他病院と自病院のデータを比較することによって、課題を明らかにする取り組みが求められます。

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