Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

内科・外科の連動研修の4月スタート見送り、ただし単位の遡及認定等で専攻医の不利益を回避―医師専門研修部会(1)

2019.3.25.(月)

 新専門医制度において、基本領域(例えば内科)とサブスペシャリティ領域(例えば循環器)との連動研修を認めた場合、「サブスペシャリティ領域の指導医がいないために、基本領域の連携施設となっていた医療機関での研修(勤務)を避ける」といった事態が生じはしないか。こうした点を検討するためのデータが現時点では存在しないため、「連動研修の是非」を検討する段階にない。この4月(2019年4月)からの連動研修は見送るべきである—。

 3月22日に開催された医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」(以下、専門研修部会)は、こういった判断を行いました(関連記事はこちらこちら)。

もっとも連動研修を前提とした研修プログムで研修を行っている専攻医(新専門医資格取得を目指す研修医)に不利益が生じないよう、2019年4月以降も当該プログラムに沿って研修を受け、後にサブスペシャリティ領域の単位として認定(追認)するなどの配慮が行われます。

3月22日に開催された、「平成30年度 第5回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会」

3月22日に開催された、「平成30年度 第5回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会」

 

データが示されておらず、連動研修の4月実施の是非を論じる段階にない

新専門医制度は、「専門医の質の担保」と「国民への分かりやすさ」を基本理念として今年度(2018年度)から全面スタート。19「基本領域」(1階部分)と「サブスペシャリティ領域」(2階部分)の2層構造となっており、「基本領域のみの専門医資格を取得する」ことも、「基本領域とサブスペシャリティ領域の専門医資格を取得する」ことも可能です。

【基本領域】(1)内科(2)外科(3)小児科(4)産婦人科(5)精神科(6)皮膚科(7)眼科(8)耳鼻咽喉科(9)泌尿器科(10)整形外科(11)脳神経外科(12)形成外科(13)救急科(14)麻酔科(15)放射線科(16)リハビリテーション科(17)病理(18)臨床検査(19)総合診療—の19領域
医師専門研修部会(1)1 190322
 
サブスペシャリティ領域については、「国民への分かりやすさ」という基本理念を踏まえ、日本専門医機構と基本領域学会とで「認定する基準」(整備基準)を設け、その基準に合致する学会・領域のみを認定することとなっています(例えば、地方の中核的病院で標榜されている診療科や、国民の「どこに専門医がいるのか知りたい」とのニーズの強い診療科など)(関連記事はこちらとこちら)。

ところで、内科・外科・放射線科の各基本領域学会では、社会的意義や国民への認知の程度などを踏まえ、以下の23学会・領域を「サブスペシャリティ領域とすべき」と推薦し、日本専門医機構でもこれを認定しています。とくに内科・外科領域については、一定の症例について「基本領域での経験症例」と「サブスペシャリティ領域での経験症例」との重複カウントを可能とし、より早期に「基本領域とサブスペシャリティ領域の資格を保有する専門医」を養成する「連動研修」が計画されています。

【内科領域】
▼消化器病▼循環器▼呼吸器▼血液▼内分泌代謝▼糖尿病▼腎臓▼肝臓▼アレルギー▼感染症▼老年病▼神経内科▼リウマチ▼消化器内視鏡▼がん薬物療法―

【外科領域】
▼消化器外科▼呼吸器外科▼心臓血管外科▼小児外科▼乳腺▼内分泌外科―

【放射線領域】
▼放射線治療▼放射線診断―議論
医師専門研修部会1 190222

 
 連動研修はこの4月(2019年4月)からスターとする予定でしたが、専門研修部会では「一部(消化器内視鏡など)、国民にとって分かりにくいものがある」「整備基準(サブスペシャリティ領域として認定するための基準)をまず策定し、その上で認定を行うべきである」との意見が出されていました(いわば「待った」がかかった)(関連記事はこちら)。

 さらに3月22日の専門研修部会では、厚生労働省から、連動研修の重要性を確認した上で、「現時点で『地域医療に与える影響』に関するデータが示されていない。連動研修の是非を検討する段階に至っていないのではないか」との指摘もなされました。

2018年の改正医療法・医師法により、新専門医制度が地域医療に悪影響を及ぼす恐れのある場合には、厚生労働大臣の意見を踏まえて、日本専門医機構は制度見直しを検討する努力義務を負っています。具体的には、▼「サブスペシャリティ領域の連動研修が地域医療へ悪影響を与えないか」を各都道府県の地域医療対策協議会などで検討する→▼厚生労働大臣が、地域医療対策協議会や専門研修部会の意見を踏まえて、必要な見直しを要請する→▼日本専門医機構で制度見直しを行う―ことが必要ですが、4月までの1週間でこうした一連の業務を完了することは事実上不可能ではないか、との指摘です。

基本領域である内科において「A病院・B病院・C病院を循環する」という研修プログラムが組まれていたとします。「地域医療の確保」という各方面からの強い要請を受け、例えば「基幹病院のみで完結させない」などの配慮・工夫が凝らされています。

しかし、サブスペシャリティ領域との連動研修となった場合、「B病院には当該サブスペシャリティ領域の指導医がいないので、A病院とC病院のみで研修を完結させ、B病院での研修(勤務)を行わない」という事態が生じてしまう可能性が指摘されているのです。この場合、B病院の所在する地域において、医師確保に困難が生じるなど「地域医療への悪影響」が生じる可能性を否定できないのです。
医師専門研修部会(1)2 190322
 
この点、日本専門医機構の理事長である寺本民生参考人は、「連動研修を念頭において研修プログラムを組んでおり、プログラム全体を通じて、地域医療に悪影響が出ないような研修(勤務)が行われる」旨を説明しましたが、厚労省は「データが示されておらず、地域医療への影響があるのかないのかを判断・検討できない」と指摘。

医学会や日本専門医機構副理事長ら他の参考人も「専攻医に不安を与えることはできない」とし、この4月からの連動研修実施を認めてほしいと強く要請しましたが、専門研修部会の構成員や遠藤久夫座長(国立社会保障・人口問題研究所所長)らはデータが示されていない点を重くみて、「この4月からの連動研修実施は見送るべき」との結論に達しました。

専攻医に不利益が生じないよう、経験症例は遡及して単位認定するなどの配慮

もっとも、内科や外科で「連動研修」を念頭において研修を受けている専攻医が不利益を被ってはいけません。このため、山内英子構成員(聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長)らは「経験した症例は、将来、過去に遡ってカウントするなどの配慮が必要である」と強調しています。この点、寺本参考人も「専攻医に不利益が生じないように配慮する」ことを約束するとともに、個々の専攻医や指導医等に宛てて日本専門医機構から事情とともに「不利益が生じないような配慮を行う」旨を連絡する考えを示しています。

 
今後、専門研修部会において▼サブスペシャリティ領域の在り方▼連動研修の在り方―も検討していくことになります。

なお、上記23領域・学会については、既に日本専門医機構が認定を行っていますが、消化器内視鏡や老年病など一部について「待った」がかかっていました。この点、3月22日の専門研修部会で具体的な議論は行われませんでしたが、片岡仁美構成員(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科地域医療人材育成講座教授)や山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)らは、「高齢者を診るスキルはすべての医師に求められるが、老年病の専門医がそのリーダー役に就くことなどが期待される」との考えを占めました。寺本参考人は、このように23領域・学会のサブスペシャリティ領域認定に向けて構成員の理解が進んでいる点について「大きな収穫であった」とコメントしています。

 
 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

消化器内視鏡など23学会・領域のサブスペ認定に理解を求める、専攻医は安心して連動研修実施を―日本専門医機構
消化器内視鏡や老年病、新専門医制度のサブスペシャリティ領域認証に「待った」―医師専門研修部会
新専門医制度、プログラム制の研修にも関わらず2・3年目の勤務地「未定」が散見される―医師専門研修部会
新専門医制度、「シーリングの遵守」「迅速な情報提供」「カリキュラム制の整備」など徹底せよ―医師専門研修部会
新専門医制度、2019年度の専攻医登録を控えて「医師専門研修部会」議論開始

90学会・領域がサブスペシャリティ領域を希望、2019年9月には全体像固まる見込み―日本専門医機構
カリキュラム制での新専門医研修、必要な単位数と経験症例を基本領域学会で設定―日本専門医機構
新専門医制度、サブスペシャリティ領域は事前審査・本審査を経て2019年9月に認証―日本専門医機構
2019年度からの新専門医目指す専攻医の登録は順調、1次登録は11月21日まで―日本専門医機構
新専門医制度、2019年4月から研修始める「専攻医」募集を正式スタート―日本専門医機構
東京都における2019年度の専攻医定員、外科など除き5%削減を決定―日本専門医機構
2019年度新専門医研修、「東京のみ」「東京・神奈川のみ」で完結する研修プログラムの定員を削減―日本専門医機構
2019年度、東京都の専攻医定員数は2018年度から5%削減―日本専門医機構
日本専門医機構、新理事長に帝京大の寺本民生・臨床研究センター長が就任
がん薬物療法専門医、サブスペシャリティ領域として認める―日本専門医機構
2019年度の専攻医登録に向け、大阪や神奈川県の状況、診療科別の状況などを詳細分析―日本専門医機構
東京の専攻医、1年目に207名、2年目に394名、4年目に483名が地方勤務―日本専門医機構
新専門医制度、東京で専攻医多いが、近隣県を広くカバーする見込み―日本専門医機構

新専門医制度によって医師の都市部集中が「増悪」しているのか―医師養成と地域医療検討会
新専門医制度、偏在対策の効果検証せよ―医師養成と地域医療検討会
医学生が指導医の下で行える医行為、医学の進歩など踏まえて2017年度に再整理―医師養成と地域医療検討会

新専門医制度、専門研修中の医師の勤務地を把握できる仕組みに―日本専門医機構
地域医療構想調整会議での議論「加速化」させよ―厚労省・武田医政局長
新専門医制度で医師偏在が助長されている可能性、3県では外科専攻医が1名のみ—全自病
新専門医制度の専攻医採用、大都市部の上限値などの情報公開を―四病協

新専門医制度、東京で専攻医多いが、近隣県を広くカバーする見込み―日本専門医機構
新専門医制度、現時点で医師偏在は助長されていない―日本専門医機構

新専門医制度のサブスペシャリティ領域、国民目線に立ち「抑制的」に認証すべき―四病協

新専門医制度、専攻医の1次登録は10月10から11月15日まで—日本専門医機構
新専門医制度、都道府県協議会・厚労省・検討会で地域医療への影響を監視—医師養成と地域医療検討会
新専門医制度、地域医療への影響を厚労省が確認し、問題あれば対応—塩崎厚労相
2018年度からの新専門医制度に備え、10月から専攻医の仮登録—日本専門医機構
新専門医研修プログラム、都道府県協議会で地域医療を確保する内容となっているか確認―厚労省
専門医機構、地域医療への配慮について「必ず」都道府県協議会の求めに応じよ—厚労省検討会
新整備指針の見直し、総合診療専門医の研修プログラム整備基準を決定—日本専門医機構
専門医整備指針、女性医師に配慮した柔軟な対応などを6月2日の理事会で明記—厚労省検討会
地域医療へ配慮し、国民に分かりやすい専門医制度を目指す—日本専門医機構がQ&A
専門医取得が義務でないことやカリキュラム制の設置、新整備指針の中で対応—日本専門医機構
新専門医制度、整備指針を再度見直し「専門医取得は義務でない」ことなど明記へ―厚労省検討会

新専門医制度、見直しで何が変わったのか、地域医療にどう配慮するのかを分かりやすく示す―日本専門医機構
必要な標準治療を集中的に学ぶため、初の基本領域での研修は「プログラム制」が原則―日本専門医機構
新専門医制度、東京・神奈川・愛知・大阪・福岡では、専攻医上限を過去3年平均に制限―日本専門医機構
専門医制度新整備指針、基本理念に「地域医療への十分な配慮」盛り込む―日本専門医機構
地域医療に配慮した、専門医制度の「新整備指針」案を大筋で了承―日本専門医機構
消化器内科や呼吸器外科など、基本領域とサブスペ領域が連動した研修プログラムに―日本専門医機構
総合診療専門医、2017年度は「日本専門医機構のプログラム」での募集は行わず
新専門医制度、18基本領域について地域医療への配慮状況を9月上旬までにチェック―日本専門医機構
【速報】専門医、来年はできるだけ既存プログラムで運用、新プログラムは2018年目途に一斉スタート―日本専門医機構
新専門医制度、学会が責任もって養成プログラムを作成、機構が各学会をサポート―日本専門医機構
【速報】新専門医制度、7月20日に「検討の場」、25日の総会で一定の方向示す見込み―日本専門医機構
新専門医制度、各学会がそろって同じ土俵に立ってスタートすることが望ましい―日本専門医機構・吉村新理事長
【速報】新専門医制度、日本専門医機構の吉村新理事長「7月中に方向性示す」考え

新専門医制度で地域の医師偏在が進まないよう、専門医機構・都道府県・国の3層構造で調整・是正―専門医の在り方専門委員会
新専門医制度、懸念払しょくに向けて十分な議論が必要―社保審・医療部会

2016年末、人口10万人当たり医師数は240.1人、総合内科専門医が大幅増―医師・歯科医師・薬剤師調査―2014年医師・歯科医師・薬剤師調査

専門研修修了医(certified doctor)と臨床経験を十分に積んだ専門医(specialist)は区別すべき―四病協

2036年の医療ニーズ充足には、毎年、内科2946名、外科1217名等の医師養成が必要―医師需給分科会(3)