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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

専門研修修了医(certified doctor)と臨床経験を十分に積んだ専門医(specialist)は区別すべき―四病協

2018.8.22.(水)

 初期臨床研修終了後3年程度の研修(後期研修)を修了した医師は「(認定)専門研修修了医師:certified doctor」と位置づけ、十分な臨床経験を積み、science・art・coordinate能力を持つ「専門医:specialist」とは区別すべきである。現在、「19の基本領域(内科、外科、総合診療)に関する専門医」以外にも、さまざまな「専門医」が存在しており、国民に分かりにくくなっており、専門医制度を今一度見直す必要があるのではないか―。

 日本医療法人協会、日本病院会、全日本病院協会、日本精神科病院協会で構成する四病院団体協議会(四病協)は8月22日に総合部会を開き、こうした提言を取りまとめました。

臨床経験を十分に積んだ重層的で多様な専門医(specialist)を認証すべき

 新専門医制度は、数多ある専門医資格を国民に分かりやすいものとし、かつ質を担保するために、「専門医の研修プログラム認証や、専門医の認定を各学会と日本専門医機構が共同して行う」ことなどを柱とし、2018年度から全面スタートしました。

「地域の医師偏在等を助長する可能性がある」などの懸念があることから、これまでに▼東京都・大阪府・愛知県・神奈川県・福岡県の5大都市圏では定員上限を設ける(ただし外科などの医師不足が懸念される診療科では除外)▼地域医療対策協議会(いわば「地域医療の課題を吸い上げる場」、各都道府県に設置)から寄せられる意見などを踏まえた、制度見直しを行う―などの対応が図られてきていますが、地域医療の現場や自治体関係者などから、今なおさまざまな課題が指摘されています。

四病協内部でも、新専門医制度を巡ってはさまざまな意見が出ており、「専門医制度の在り方検討委員会」(神野正博委員長:全日病副会長)を設置し、改善に向けた提言を検討してきました。8月22日の総合部会では、次のような提言内容が了承されています。神野検討委員会委員長は、「病院団体ではこういう意見を持っている」ことを明らかにすることで、より良い専門医制度へ改善されることを期待しています。

(1)国民視点から専門医制度の見直しを求める

(2)初期臨床研修終了後3年程度の研修は「専門研修制度」とし、その研修を修了した医師を「(認定)専門研修修了医師:certified doctor」、その後、臨床経験を10年程度積み、必要な研修等を修了してscience・art・coordinate能力を兼ね備えるに至った医師を「専門医:specialist」と位置づけ、両者を明確に区別する

(3)後者の「専門医:specialist」研修は、「いつからでも」「どこでも」適切な指導者のいる機関で、カリキュラム制(年限や研修施設を定めず、一定の症例数などを経験することで専門医試験の受験資格を得られる仕組み)に基づく技術研修と学習、さらに厳格な資格審査で認証する

(4)医師のキャリアパスに則った重層的で、多様性のある専門研修(例えば、▼研究者専門医(specialist、以下同)▼急性期専門医▼予防・健診専門医▼在宅医療専門医▼高齢者医療・介護専門医—など)を確保する。研修の提供、専門医の認証は限られた機関である必要はなく、例えば「四病協の認証」もありうる

(5)専門研修を受けない医師に対しては、所属病院、病院団体、医師会が「質の担保のための研修」を提供する(四病協でも研修必修化に協力する)

8月22日、四病協総合部会終了後の記者会見に臨み、専門医制度の改善に向けた四病協提言について説明した全日本病院協会の神野正博副会長

8月22日、四病協総合部会終了後の記者会見に臨み、専門医制度の改善に向けた四病協提言について説明した全日本病院協会の神野正博副会長

 
日本専門医機構では、専門医を「ある基本診療領域の疾病などについて、すべて理解し、きちんと患者に説明できる医師」と定義していますが、国民は「いわゆるスーパードクター」をイメージしがちです。また、「専門医」の名称は日本専門医機構・関係学会が独占しているわけではないため、「19の基本領域、今後、認められるサブスペシャリティ領域」以外にも「いわゆる専門医」が乱立する可能性があります。

このため四病協では、「国民に分かりやすい」制度とする必要があるとし、上記(1)(2)のように▼(認定)専門研修修了医師:certified doctor(現在の新専門医資格取得者に相当するイメージ)▼専門医:specialist—に区別することを提言しているのです。

また(3)(4)は、後者の「専門医:specialist」を養成・認証する際の基本的な考え方を示したものと言えます。現在は、国民の多くが、心臓疾患や脳血管疾患といった急性期医療において卓越した技術を持つ医師を「スーパードクター」と認識しがちですが、(3)(4)の専門医が誕生することで「基礎研究分野のスーパードクター」「在宅医療分野のスーパードクター」(こうした分野で卓越した知見・技術を持つ医師はすでに数多く存在する)なども広く浸透していくことが期待できそうです。

東京以外の大都市(大阪、愛知、福岡、神奈川)では医師不足、シーリングは必要なのか

 ところで、現在の新専門医制度については、日本専門医機構において「来年度(2019年度)の専攻医(新専門医資格の取得を目指す研修医)募集」に向けて、制度改善論議が急ピッチで進められています。

 例えば「専攻医の東京一極集中は否定できない」との指摘を踏まえ、▼2019年度における東京都の専攻医定員数は2018年度採用数から5%削減して設定する▼大阪府・愛知県・福岡県・神奈川県―の定員は2018年度を踏襲する(過去5年間の後期研修医の採用実績数などの平均値以下に抑える)—方針が8月3日の理事会で概ね固められました。今後も、「地域偏在を助長しない」ような対策が検討されます(関連記事はこちら)。

 この点について日本医療法人協会の加納繁照会長は、「医療現場の肌感覚では、東京以外の地域では『医師が不足し、減少傾向にある』と感じる。今後も高齢者増に伴って医療需要が増加する中で、東京都以外の大阪府・愛知県・福岡県・神奈川県の『専攻医定員の上限』(いわゆるシーリング)が本当に必要なのか、エビデンスベースで改めて議論する必要がある。地域の医師偏在の是正はもちろん非常に重要なテーマだが、同じように大都市における医師確保も重要なテーマだ」と強調しました。今後、日本専門医機構等に対し「提言」を行っていくことになりそうです。

8月22日、四病協総合部会終了後の記者会見に臨み、新専門制度のシーリングの在り方などに関する考えを説明した日本医療法人協会の加納繁照会長

8月22日、四病協総合部会終了後の記者会見に臨み、新専門制度のシーリングの在り方などに関する考えを説明した日本医療法人協会の加納繁照会長

 

2014年度改定における「消費増税改定の補填不足」、日病協として対応を検討

このほか8月22日の四病協総合部会では、次の点についても議論が行われました。

▽「訪日外国人への適切な医療の確保」に向けた検討が始まるが、医療現場の声を十分に吸い上げる必要がある

▽来年度(2019年度)の税制改正に向けて、例年と同様の要望(消費税問題の解消、事業税非課税措置の延長など)を行う

▽2014年度の消費増税対応診療報酬改定における「補填不足」の原因を究明し、医療現場への適切な対応を行う

 
訪日外国人対応については、例えば、▼「支払いにおいてクレジットカード等の活用」が議論される模様だが、カード決済の手数料を医療機関が負担する点についてどう考えるのか(病院の利益率を考慮すればカード活用をするほど赤字になる)▼社会医療法人の認定要件との整合性などをどう考えるか(例えば、保険診療収入等が80%超との要件があるが、外国人への自由診療を拡大すると、要件クリアが難しくなるケースもある)—といった点について、十分な検討が必要であるとの見解で一致しています(関連記事はこちら)。

また2014年度の消費増税対応改定については、先般「補填不足」(特定機能病院では補填率が60%強にとどまった)が明らかになりましたが、四病協では「徹底した原因究明」と「補填不足への対応」を厚労省に要望していく考えです(他の病院団体も含めた「日本病院団体協議会」としての要望を、近々に行う考え)。その際、「過去の補填不足分を踏まえて、今後の診療報酬プラス改定などで相応の上乗せを要望する」のか、などについては、今後、検討することになります(関連記事はこちら)。

8月22日、四病協総合部会終了後の記者会見に臨み、「訪日外国人への医療確保」や「消費税対応」などについて説明した日本医療法人協会の伊藤伸一会長代行

8月22日、四病協総合部会終了後の記者会見に臨み、「訪日外国人への医療確保」や「消費税対応」などについて説明した日本医療法人協会の伊藤伸一会長代行

 
 
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