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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

2018年度改定の看護必要度見直しは妥当、看護必要度IIへ移行し看護職の負担軽減を—四病協

2018.6.20.(水)

 2018年度診療報酬改定で見直された「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」(IおよびII)に、2017年10-12月のデータを流し込むと、新設された【急性期一般入院料1】(従前の7対1相当)の基準値(30%以上、25%以上)を多くの病院がクリアできており、2018年度改定内容は妥当であったと言えるのではないか―。

6月20日に開催された四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会で構成)の総合部会に、こういった調査結果が提示されました。

今般の調査では「多くの病院は【急性期一般入院料1】の取得を希望している」ことも分かりました。ただし、日本病院会の島弘志・日病副会長(社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院病院長)は「2019年度以降、新たな人事計画を考える中で、【急性期一般入院料1】の基準をクリアしながらも、10対1看護配置でよい【急性期一般入院料2】を選択する病院も出てくるかもしれない」とコメントしています。

6月20日の四病院団体協議会・総合部会後に記者会見に臨んだ、日本精神科病院協会の山崎學会長(向かって左)と、日本病院会の島弘志副会長(向かって右)

6月20日の四病院団体協議会・総合部会後に記者会見に臨んだ、日本精神科病院協会の山崎學会長(向かって左)と、日本病院会の島弘志副会長(向かって右)

 

従前の7対1病院のほとんどが、重症患者割合「30%以上」をクリア

2018年度診療報酬改定では「入院基本料の再編・統合」という大きな見直しが行われ、例えば、従前の7対1・10対1一般病棟入院基本料は、7種類の【急性期一般入院料】に再編されました(関連記事はこちら)。

また「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)についても、次のような大きな見直しが行われています(関連記事はこちらこちらこちら)。
(1)看護必要度の定義を一部見直し、▼「A項目1点以上かつB項目3点以上」(現在は重症患者に非該当)のうち、「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」のいずれかに該当すれば、「重症患者に該当」と扱う▼C項目の開腹手術(現在は5日間)について、所定日数4日に短縮する―こととする
(2)従前からの看護必要度評価票に基づく重症患者割合の計算方法を「看護必要度I」、新たにDPCのEF統合ファイルに基づく計算方法を「看護必要度II」とし、それぞれで重症患者割合の基準値を設定する
(3)看護必要度I・看護必要度IIのいずれを用いた場合でも、重症患者割合は「3か月の平均」とし、これまでに「1割以内・3か月以内変動の救済ルール」は廃止する
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改定説明会1の3 180305
 
 また、各【急性期一般入院料】の「重症患者割合の基準値」は次のように設定されています。
【急性期一般入院料1】看護必要度Iで30%以上、看護必要度IIで25%以上
【急性期一般入院料2】看護必要度Iで27%以上(200床未満のみ)、看護必要度IIで24%以上(200床未満では22%以上)
【急性期一般入院料3】看護必要度Iで26%以上(200床未満のみ)、看護必要度IIで23%以上(200床未満では21%以上)
【急性期一般入院料4】看護必要度Iで27%以上、看護必要度IIで22%以上
【急性期一般入院料5】看護必要度Iで21%以上、看護必要度IIで17%以上
【急性期一般入院料6】看護必要度Iで15%以上、看護必要度IIで12%以上
【急性期一般入院料7】—(看護必要度の評価を全患者に行うことが必要)

改定説明会1の1 180305
 
 四病協では、会員病院のうち【急性期一般入院料】の取得予定病院・【地域包括ケア病棟入院料】(管理料含む)の取得病院を対象に、2017年10-12月の診療データ(EF統合ファイルおよびHファイル、2018年度改定前データ)を基に、「2018年度改定内容に基づく重症患者割合」などを集計・分析しました。集計対象は582病院で、2018年3月までの届出入院料は、422病院が「7対1のみ」、6病院が「7対1と10対1」(病棟群単位の届出)などとなっています。

まず、従前どおり看護必要度評価票を用いる「看護必要度I」によって重症患者割合がどうなるかを見ると、次のように、200床以上では大半、200床未満でも半数近くの病院で、従前の7対1に相当する【急性期一般入院料1】の基準値「30%以上」をクリアできています。
○200床以上(合計374病院)
▼30%以上:84.0%(314病院)▼27%以上:7.8%(29病院)▼21%以上:6.4%(24病院)▼15%以上:1.3%(5病院)▼15%未満:0.5%(2病院)
○200床未満(合計208病院)
▼30%以上:47.1%(98病院)▼27%以上:13.5%(28病院)▼26%以上:2.4%(5病院)▼21%以上:19.2%(40病院)▼15%以上:10.6%(22病院)▼15%未満:7.2%(15病院)

また、今回は「従前の7対1届出病院のみに着目した集計」結果は明らかにされていませんが、島・日病副会長は「ほとんどの7対1病院で【急性期一般入院料1】の重症患者割合(看護必要度Iでは30%以上、看護必要度IIでは25%以上)をクリアできている。クリアできていない一部病院でも、9月までの経過措置期間中になんとか対応できるのではないか」と見通しています。

 従前の「7対1病院」のほとんどが【急性期入院料1】を取得できる状況を踏まえ、島・日病副会長は「「2018年度診療報酬改定における重症患者割合の見直し(7対1では定義見直しも含めて5%の基準厳格化)は概ね妥当であったのではないか」とコメントしています。

看護必要度IIでも「25%」を多くの病院がクリア、看護必要度IIのロジックは妥当

 一方、新設されたEF統合ファイルを用いる「看護必要度II」によって重症患者割合がどうなるかを見ると、やはり多くの病院で、【急性期一般入院料1】の基準値「25%以上」をクリアできています。
○200床以上(合計374病院)
▼25%以上:77.8%(291病院)▼24%以上:5.8%(22病院)▼23%以上:3.5%(13病院)▼22%以上:2.4%(9病院)▼17%以上:7.8%(29病院)▼12%以上:1.9%(7病院)▼12%未満:0.8%(3病院)
○200床未満(合計208病院)
▼25%以上:49.5%(103病院)▼22%以上:11.5%(24病院)▼21%以上:6.7%(14病院)▼17%以上:14.9%(31病院)▼12%以上:11.5%(24病院)▼12%未満:5.8%(12病院)

 また、「看護必要度II」を用いる場合には、「看護必要度IIの重症患者割合-看護必要度Iの重症患者割合≦0.04」という基準をクリアしなければなりません。「看護必要度IIのほうが4%も重症患者割合が多くなる病院では、データ精度に問題がある可能性がある」と考えられるためです。今般の四病協調査では、「看護必要度IIを用いるための基準」をクリアできなかった病院は▼200床以上ではゼロ▼200床未満では4病院―となり、島・日病副会長は「ほぼすべての病院で看護必要度IIを用いるための基準値をクリアできている」と判断しています。

さらに、「看護必要度Iの重症患者割合」と「看護必要度IIの重症患者割合」との関係を見ると、200床以上では一定の相関があり(相関係数0.6)、200床未満では強い相関がある(相関係数0.8)ことも分かりました。

看護必要度IIの制度設計論議を行った「入院医療等の調査・評価分科会」(中央社会保険医療協議会の下部組織)では、「看護必要度評価票(看護必要度I)とEF統合ファイル(看護必要度II)との間に明確な相関はない」として、看護必要度IIの導入に反対する意見も出されましたが、今回の調査結果を踏まえ、島・日病副会長は「看護必要度IIのロジックも概ね妥当であった」との見方を示しています。

2019年度以降、10対1看護配置の【急性期一般入院料2・3】取得が増える可能性も

ところで、582病院のうち392病院は「2018年10月以降、【急性期一般入院料1】を取得する予定である」としており、【急性期一般入院料2】希望は16病院にとどまり、【急性期一般入院料3】を希望する病院はありません。このため、2018年10月以降、「多くの7対1病院は【急性期一般入院料1】にスライドする」ようにも思われます。

しかし、今回の調査には、▼2018年度の診療データ(EF統合ファイル・Hファイル)を用いたものではない▼2018年5月25日付の疑義解釈(「EF統合ファイルにおけるデータ区分コードが20番台(投薬)・30番台(注射)・50番(手術)・54番(麻酔)の薬剤に限り、A項目の評価対象とする」との精緻化)が反映されていない―という限界があります(関連記事はこちら)。

また、各病院において2018年度の人事計画は既に2017年中に立てており、「計画を崩して、2018年度中に、10対1看護配置の【急性期一般入院料2・3】などに移行することは現実的には難しい」という状況もあります(募集開始後に採用を控えることなどは困難)。

こうした点を踏まえて島・日病副会長は、「2019年度に改めて同様の調査を行い、今回の調査結果と比較すると興味深い結果が出るかもしれない」とコメントしており、2019年度以降「7対1が、そのまま【急性期一般入院料1】へスライドする」との構図が崩れる可能性を示唆しています。

看護職員の確保が困難な地域の病院からは、「重症患者割合に問題はないが、7対1看護配置が難しい」との声も聞かれます。そうした病院では、重症患者割合が高く(看護必要度Iで30%以上、看護必要度IIで25%以上)とも、あえて10対1看護配置の【急性期一般入院料2】を選択する可能性があります。例えば、7対1看護配置で【急性期一般入院料1】を取得した場合と、8対1看護配置(10対1はクリア)として【急性期一般入院料2】を取得した場合を比較すると、後者のほうが収益性は高くなります(9対1看護配置として【急性期一般入院料3】を取得するとさらに向上)。今後、【急性期一般入院料2・3】が、極めて重要な選択肢となるでしょう。

また島・日病副会長は、「看護必要度IIを選択すれば、看護職員がA項目・C項目測定に費やしていた時間を、本来の看護業務に充てることができる。今後は積極的に看護必要度IIへの移行を検討すべき」ともコメントしています。

 
 なお6月20日の四病協総合部会終了後の記者会見で、日本精神科病院協会の山崎學会長は、消費税問題について「2019年10月の増税時には、これまでと同様に診療報酬で対応することになるのではないか。しかし、10%を超える引き上げが行われる場合に備えて、『いわゆる損税(控除対象外消費税)解消に向けて、どのような方策が妥当であるか』について病院団体内部で検討・研究を始めている」ことを明らかにしています。
 
 
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