がん薬物療法専門医、サブスペシャリティ領域として認める―日本専門医機構
2018.6.18.(月)
新専門医制度のサブスペシャリティ領域として「がん化学療法専門医」(日本臨床腫瘍学会)を認める―。
日本専門医機構が6月15日に開催した理事会で、こういった方針が固まりました。なお、サブスペシャリティ領域の認定基準について「より具体的に明確にしていく」方針も確認されています。
サブスペシャリティ領域、「国民への分かりやすさ」基軸に、より具体的な基準も探る
新専門医制度は、以下の19「基本領域」(1階部分)と「サブスペシャリティ領域」(2階部分)の2層構造となっています(領域によっては基本領域とサブスペシャリティ領域との一部重複あり)。
【基本領域】(1)内科(2)外科(3)小児科(4)産婦人科(5)精神科(6)皮膚科(7)眼科(8)耳鼻咽喉科(9)泌尿器科(10)整形外科(11)脳神経外科(12)形成外科(13)救急科(14)麻酔科(15)放射線科(16)リハビリテーション科(17)病理(18)臨床検査(19)総合診療—の19領域
2階部分のサブスペシャリティ領域は、基本領域学会の上に設置される(内科領域などでは基本領域とサブスペシャリティ領域が一部融合する形もある)ことになり、現在、関係学会からの申請をもとに、日本専門医機構での認証が進められています。
具体的には、新専門医制度の基本方針である「国民への分かりやすさ」を担保するために、「全国の平均的な都市での中核病院に掲げてある診療科、診療部門とする」こととされ、日本専門医機構で(1)いずれかの基本領域学会が認めている(2)関連する基本領域学会またはサブスペシャルティ領域学会がある場合は、その学会の合意を得る(3)機構理事会(出席委員)の過半数の承認がある―ことを確認して、認証します(機構のサイトはこちら)。これまでに▼内科13領域▼外科6領域▼放射線科2領域▼消化器内視鏡—がサブスペシャリティ領域として認証され、今般、「がん化学療法専門医」(日本臨床腫瘍学会)についても、「地方の中核病院において定着してきている」「外科、内科などの基本領域学会との連携が認められる」ことなどを踏まえ、サブスペシャリティ領域として認証されました。日本専門医機構の執行部は「がん化学療法に携わる専門医の励みになる」と期待を寄せています(関連記事はこちらとこちら)。
ところで、このサブスペシャリティ領域の認証基準について、四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)から「平均的な都市とはどこを指すのか?中核病院とは何を指すのか?サブスペシャリティ領域の認証基準が曖昧ではないか」「曖昧な基準のまま、五月雨式にサブスペシャリティ領域が認証されることは好ましくない。抑制的に、国民の目線で認証すべきである」との指摘が出されています(関連記事はこちら)。
この点、日本専門医機構の山下英俊副理事長(山形大学医学部長)は、「より具体的な基準を模索していく」考えを示しました。例えば、まだ定着はしてないが、国民にとって非常に重要で有益な診療科・診療部門が今後現れることも考えられますが、現在の「全国の平均的な都市での中核病院に掲げてある診療科、診療部門」といった基準ではこうしたニーズに対応できません。また、ある基本領域に関連の深い学会が複数あった場合、「そのうちの一部学会はサブスペシャリティ領域として認めるが、他は認めない」との判断を下さなければならないケースも出てくるかもしれず、そうした場合にどう対応するのか、との問題もあります。こうしたテーマについて、さまざまな角度から検討していくことになります。
なお、6月15日の理事会は、現執行部体制として最後の理事会(任期満了)となりました。終了後には、体調が優れない中、吉村博邦理事長(地域医療振興協会顧問、北里大学名誉教授)が記者会見に臨み、「新専門医制度は、従前の『学会による専門医の個別認定』から『日本専門医機構と学会が協働して統一的に認定する』仕組みへと改め、多くの若い医師が専門医研修を受けることで医師としてレベルアップを目指すものだ。議論の過程で『医師偏在』が問題となり、5都府県へのシーリング導入などの配慮を行うことで、少なくとも『医師偏在』の助長はなされていない。もちろん、医師の東京集中は好ましくなく、今後、対策を考えて行ってほしい」と新専門医制度の意義等について改めて強調しています(関連記事はこちらとこちら)。
日本専門医機構では6月25日に社員総会を開く、新役員(理事・監事)を選任。その後、互選によって新理事長・副理事長を決定し、新体制がスタートします。
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