2019年度の専攻医登録に向け、大阪や神奈川県の状況、診療科別の状況などを詳細分析―日本専門医機構
2018.5.21.(月)
来年度(2019年度)の新専門医制度を目指す専攻医の募集に向けて、2018年度の専攻医登録データをより詳細に分析し、早急に5都府県のシーリング(募集定員の上限)などを見直す必要がある。また「地域枠」出身の医師が近く専攻医となるため、適切な専門医研修を受けられるよう、機構でも知恵を出し、都道府県などにも協力を要請する―。
日本専門医機構の山下英俊副理事長(山形大学医学部長)と松原謙二副理事長(日本医師会副会長)は5月18日の定例記者会見で、このような考えを示しました。
今年(2018年)9月から、2019年度の専攻医募集開始、シーリングの見直しも検討
2018年度から、新たな専門医制度がスタートしました。従前、各学会が独自に行っていた専門医の養成・認定を、学会と日本専門医機構が共同して行うことにより、「質を担保」しつつ、「国民に分かりやすくする」ことを目指しています。
ただし、「質の担保を追求するあまり、専門医を養成する基幹施設などのハードルが高くなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されるのではないか」といった指摘があり、日本専門医機構や都道府県、厚生労働省などが重層的に、「医師偏在の助長を防ぐ仕組み」を設けています。
その1つとして、「5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)において、▼外科▼産婦人科▼病理▼臨床検査—の4領域を除き、専攻医の募集定員を過去5年の後期研修医の採用実績数などの平均値以下に抑える」といったルールが設定されました。
2018年度の状況を踏まえて、機構は「少なくとも医師の地域偏在は助長されていない」と強調していますが(関連記事はこちらとこちら)、厚労省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」では「医師の東京集中が促進されているのではないか」との指摘もあります(関連記事はこちら)。
機構は、こうした指摘も踏まえ「2019年度の専攻医定員」などを、どのように設定すべきかを検討する考えを提示しています。2019年度の専攻医については、この9月1日(2018年9月1日)から募集開始となる予定です。募集は各基本領域学会が行い、その前に「研修プログラムの設定」などを行う必要があり、「2019年度の専攻医定員をどう考えるか、5都府県のシーリングをどう設定するか」などを早急に決定する必要があります。
5月17日の機構理事会では、「2018年度の専攻医登録状況について、東京都では『1年目、2年目、3年目に、地方にどれだけの医師が派遣されるか』などを分析し、『3年目には半数近くが地方派遣となる』ことを確認した。シーリングをかけている、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県でも同様の分析を行う必要がある」「診療科別に偏在が助長されていないか、まず登録状況を詳しく分析する必要がある」といった意見が出たことが紹介されました。
診療科別の状況について、松原副理事長は「内科、外科では、専攻医全体と同じように『地方から東京都の基幹病院に専攻医として登録している医師は、関東地方やその近隣県からが多く、全国から東京都に医師が集中しているわけではない』ことが明らかになった」(例えば、東京都に5名以上の外科専攻医が移動したのは北海道、埼玉県、千葉県、神奈川県、静岡県のみ)とコメント。診療科別に、ローテ―ト状況(例えば、東京都の基幹施設に登録している医師が、1年目、2年目と地方で勤務する状況)を分析する考えを示しています。
また山下副理事長は、「2019年度の定員について、2018年度の状況を踏まえて修正してくことになるのではないか」とも見通しており、上述した5都府県のシーリングについても見直しが行われる可能性があります。
ところで、2010年度から地域の医師不足解消のために医学部の定員増(追加増員、下図の赤色部分)が行われました。その中では「地域枠」が設けられており、この地域枠で大学医学部に入学した医師が、新専門医制度の専攻医となります。その際、「地域での勤務」と「研修施設」との関係をどう考えるのか、が一つの論点として浮上しています。
地域枠出身医師には「一定期間、地域の医療機関に従事する」ことが求められており、これがために、適切な専門医研修を受ける機会が奪われてしまっては困ります。一方、「どこで研修を受けても構わない」となれば、地域枠の趣旨が失われてしまいます。これを両立するために機構はもちろん、都道府県や基本領域学会がアイデアを出し合い、協力していくことが求められるのです。
この点について山下副理事長は、専門医制度新整備指針において「地域枠入学や奨学金供与(給与・貸与)を受けている専攻医に関しては、機構は、地域枠や奨学金供与の義務の発生する各都道府県等及び各基本領域学会に対して、専門医制度を適切に行えるように要請する」と定められていることを引き合いに、都道府県等に協力を仰ぐ考えを強調しています。
なお、5月17日の理事会では、「消化器内視鏡」専門医がサブスペシャリティ領域として正式に了承されました。近く、「日本臨床腫瘍学会」もサブスペシャリティ領域として認められる見込みです。
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