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新専門医制度、プログラム制の研修にも関わらず2・3年目の勤務地「未定」が散見される―医師専門研修部会

2018.12.11.(火)

 東京都への医師集中は進んでいる。ただし、東京都の専攻医が地域に一定程度、派遣されることも事実である。もっとも、研修プログラムの中には、「プログラム制であるにも関わらず、2年目・3年目の勤務地が未確定」という問題を抱えたものもあり、早急な改善が必要である―。

 12月11日に開催された医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」(以下、専門研修部会)で、こういった状況が報告されました。

12月11日に開催された、「平成30年度 第3回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会」

12月11日に開催された、「平成30年度 第3回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会」

 

新専門医研修の3年目、プログラム制にも拘わらず3割程度で「勤務先が未定」

 2018年度から、新たな専門医制度(新専門医制度)がスタートしました。従前の専門医制度については、「学会が乱立し、各々で専門医資格を授与しているため、専門医の質が懸念され、国民に分かりにくくなっている」という課題がありました。そこで、▼「18領域+総合診療専門医の基本領域」を1階部分とし、その上に基本領域と関係の深いサブスペシャリティ領域(2階部分)を設け、専門医の認定を、日本専門医機構と学会が共同で行うことで「国民への分かりやすさ」を担保する▼専門医の質を担保するために、専門研修プログラムは、日本専門医機構の策定した整備指針に則って、学会が責任をもって作成することで「専門医の質」を担保する―などといった点をポイントとする新専門医制度がスタートしたのです。

 新制度に対しては、「質の確保」を重視するあまり、研修を実施する施設(病院等)の要件が厳しくなり、地域医療が確保できなくなる(例えば指導医の基幹病院への移行など)との懸念もあります。そこで、「5大都市圏(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県)では、外科などを除き、専攻医の定員上限(シーリング)を設ける」などといった地域医療への配慮がなされていますが、2018年度の専攻医採用状況(新専門医資格取得を目指す研修医)を見ると、「東京への集中が生じている」ことが分かりました(▼人口比率11%弱に対し、専攻医比率22%弱が集中▼都内病院での初期臨床研修医に比べ、都内病院での専攻医は450名程度増加—など)。これに対して従前、日本専門医機構では「東京都に専攻医が集中しているように見えるが、2年目、3年目に地方の病院へ派遣される。決して、集中が助長されているわけではない」と説明していました(関連記事はこちらこちら)。

こうした状況について12月11日の専門研修部会では、より詳細なデータに基づいた検証が行われたのです(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

まず日本専門医機構は、2018年度から研修を開始した専攻医が、▼1年目の4月(2018年4月)▼・2年目の4月(2019年4月)▼3年目の4月(2020年4月)—の各時点で「どの都道府県で勤務しているか(するか)」に関する調査を実施(各研修プログラムの責任者へ調査、8410名の専攻医のうち7205名分について回答)。

それによると、例えば、東京都で勤務する専攻医のシェアは、「1年目に19.7%」→「2年目に12.5%」→「3年目に8.7%」と徐々に下がっていることが分かりました。また、「東京都に基幹病院があるプログラム」の専攻医について、実際に都内の病院に勤務している割合を見ると、「1年目に84.8%」→「2年目に52.9%」→「3年目に36.5%」とやはり下がっていくことも分かりました(非常に細かいため厚労省のサイトこちらでご参照ください)。従前の日本専門医機構の説明どおり「2年目・3年目に東京都内から多数が地方に派遣される」状況に見えます。

しかし、調査結果をよく見てみると、2年目では全体の38.5%(うち未定は19.0%)、3年目では同じく54.6%(同26.2%)の専攻医が「勤務地について未定または無回答」であることも分かりました。「東京都に基幹病院があるプログラム」の専攻医についても、2年目では25.6%、3年目では46.9%が「勤務地、無回答」という状況です(非常に細かいため厚労省のサイトこちらでご参照ください)。「無回答の理由」は明らかでありませんが、「未定」との回答に対し、立谷秀清委員(全国市長会会長、福島県相馬市長)をはじめ多数の委員から「プログラム制の研修でありながら、2年目・3年目の勤務地が未定なのは問題ではないか」との指摘がありました。

プログラム制は、新専門医制度の特徴の1つである「年次ごとに定められた研修プログラムに則って研修を行う仕組み」で、基幹施設と連携施設で研修施設群を作り循環型の研修を行うものです。「2年目に、Aさんは●●病院、Bさんは◆◆病院に派遣する」とまでは定まっていなくとも、「2年目に、○名は●●病院、◇名は◆◆病院に派遣する」というプログラムは決まっているべきと厚生労働省もコメントしており、「勤務地が未定」という回答が寄せられた研修プログラムでは、早急な改善が必要です。参考人として出席した日本専門医機構の寺本民生理事長(帝京大学・臨床研究センター長)も「然るべき時点で、勤務地を決定してもらう」考えを示しています。

三師調査と専攻医採用実績とを比較すると、「東京への専攻医集中加速」は事実

また、2018年度の専攻医採用実績と、過去の医師・歯科医師・薬剤師調査(三師調査)結果とを比較すると、▼2018年度採用専攻医のうち「5都府県の専攻医」の割合は46.0%であるの対し、三師調査における5都府県の「医籍登録3年目の医師」(専門医研修1年目の医師に該当)の割合は43.8-46.2%▼2018年度採用専攻医のうち「東京都の専攻医」の割合は21.7%であるのに対し、三師調査における東京都の「医籍登録3年目の医師」の割合は17.4-18.3%—などとなっています。ここからは、「専攻医採用状況と三師調査結果との間で数値に大きな違いはなく、東京を含めた5都府県への集中は特段、進んでいない」ようにも思えます(非常に細かいため厚労省のサイトこちらでご参照ください)。

しかし、2018年度採用専攻医をよく見ると、三師調査結果に比べて「医師の全数が1000名程度多い」のです。この1000名程度の医師の多くは、「地域枠」として、地域(ほとんどは東京都以外)の医療機関に勤務することが義務付けられた医師なのです。すると、「両者の数値に大きな違いがない」とは、つまり「5都府県、とくに東京都への医師集中が進んでいる」ことを意味するのです(東京都への集中が進まなければ、地域枠の効果で「地域の比率が高まり、東京の比率は下がる」はずである)。

東京の研修プログラムで研修する専攻医、地方勤務が他地域より長いことも事実

もっとも、5都府県の専攻医(ただし研修プログラムの中で「1年目・2年目・3年目の勤務地が明確となっている」者に限定)について、「全研修期間の中で、5都府県以外の地域で勤務する期間の割合」(今回は「地域貢献率」と称された)を見てみると、▼東京都の専攻医:12.17%▼大阪府の専攻医:6.20%▼愛知県の専攻医:4.38%▼福岡県の専攻医:6.43%▼神奈川県の専攻医:3.09%―となっています。ここからは、日本専門医機構の主張どおり「東京都の研修プログラムで採用された専攻医は、地方に派遣される期間が長い(同じ5都府県でも、他地域の2-4倍)」ことが分かります(非常に細かいため厚労省のサイトこちらでご参照ください)。

 
これらをまとめると、「東京都への医師集中は進んでいるが、東京都の専攻医が地域に一定程度、派遣される(地方の地域医療を一定程度守っている)」ことに疑いはなさそうです。日本専門医機構の主張は、一定程度裏付けられたと言えそうです。もっとも、研修プログラムの中には、「勤務地が未確定」という大きな問題を抱えたものもあり、早急な改善が求められている点にも疑いはありません。

今後も、同様の調査などを行い、「医師の偏在が助長されていないか」を定期的に検証する必要があります。なお、この点について立谷委員は「東京都の基幹病院から地方へ医師が派遣されていることは事実だが、それは、いわば『仲の良い病院グループ』(例えば院長同士が同窓など)間でのことに過ぎないのではないか。本来、都道府県の地域医療対策協議会に、『東京都の○○病院から●名、◇◇病院から◆名の医師が派遣される』という情報が提示され、それを踏まえて地域内の医師配置調整などを行うべきだが、そもそもの情報提供がなされていない」と指摘。厚生労働省医政局医事課の佐々木健課長は「改正医療法・医師法でも、地域の医師確保は、各都道府県の地域医療対策協議会を中心に進める仕組みが構築された。医師派遣情報を把握・提供する仕組みについても検討していきたい」と答弁しています。

2019年度の専攻医応募状況、小児科や産婦人科、総合で前年度より少なめ

 また12月11日の専門研修部会では、「2019年度から新専門医資格取得に向けた研修を開始する専攻医」の応募状況(1次募集)も報告されました(非常に細かいため厚労省のサイトこちらでご参照ください)(関連記事はこちらこちらこちら)。

 1次募集の時点で見ると、2018年度の採用実績に比べて、▼小児科、整形外科、産婦人科、総合診療の領域で大きく減少している▼皮膚科、形成外科の領域で大きく増加している▼宮城県、秋田県、福島県、愛媛県、高知県などで大きく減少している▼静岡県、兵庫県で大きく増加している―などの特徴があります。

また専攻医採用の上限(シーリング)が設定されている5都府県のうち、東京都と愛知県ではすでに上限を超過した応募がなされています。

日本専門医機構の寺本理事長は、「2019年度については、全基本領域学会が『シーリングを遵守する』と明言している」ことを紹介。仮にシーリングを超過する基本領域学会が生じた場合には、専門研修部会で「理由説明」などを求められることになるでしょう。

日本専門医機構の認定する専門医、「広告可能事項」に含めるべきか検討開始

 ところで、2018年度から新専門医研修が始まっており、最短で2021年度から「新たな専門医」が誕生することになります。

従前の学会認定の専門医資格は「広告可能な事項」となっていますが、現時点では「日本専門医機構と学会が認定する新専門医資格」は「広告可能な事項」には含まれていません。このままでは、2021年度から誕生する「新たな専門医」は、「●●(外科、内科など)専門医」を広告することができず、また国民にとって「極めて分かりにくい」事態が生じてしまいます(関連記事はこちらこちらこちら)。

そこで、厚労省は「日本専門医機構と学会が認定する新専門医資格」(日本専門医機構認定●●専門医)を、広告可能とすべく、医療広告のあり方などを検討する「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(以下、検討会)において議論を始めてはどうか、と提案しました。

これに対し、立谷委員は「新専門医制度については、改善すべき点などがまだ多い」と指摘。検討会と専門研修部会とで、同時並行的に議論していくことで落ち着きました。当面、専門研修部会で、さまざまな課題について改善・解決に向けた議論が進められる見通しです。

 
 
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