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2019年度新専門医研修、「東京のみ」「東京・神奈川のみ」で完結する研修プログラムの定員を削減―日本専門医機構

2018.8.27.(月)

 東京都への専攻医(新専門医資格取得を目指す後期研修医)の過度な集中を抑制するために、▼東京都のみで完結する研修プログラム▼東京都と神奈川県のみで完結する研修プログラム―について優先的に定員の削減・調整を行い、東京都の専攻医定員について「今年度(2018年度)の採用実績からの5%削減」を目指す―。

 8月24日に開催された日本専門医機構の理事会で、こういった方向が固まったことが、8月27日に記者会見を行った寺本民生理事長(帝京大学・臨床研究センター長)から報告されました(関連記事はこちら)。

8月27日に記者会見を開き、8月24日の日本専門医機構理事会の模様を説明する寺本民生理事長(帝京大学・臨床研究センター長)

8月27日に記者会見を開き、8月24日の日本専門医機構理事会の模様を説明する寺本民生理事長(帝京大学・臨床研究センター長)

 

東京都への過度な「専攻医集中」は避ける必要がある

 2019年度の専攻医募集に向けた議論が、日本専門医機構の新執行部において積極的に続けられています。

新専門医制度は、従前、各学会が独自に行っていた専門医の養成・認定を、学会と日本専門医機構が共同して行うことにより、「質を担保」しつつ、「国民に分かりやすくする」ことを目指すもので、2018年度から全面スタートしました。ただし、「質の担保を追求するあまり、専門医を養成する基幹施設などのハードルが高くなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されるのではないか」といった指摘を受け、「医師偏在の助長を防ぐ仕組み」の一環として、「5都府県(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県)において、▼外科▼産婦人科▼病理▼臨床検査—の4領域を除き、専攻医の募集定員を過去5年の後期研修医の採用実績数などの平均値以下に抑える」といったルールが設定されました(シーリング)(関連記事はこちら)。

2018年度の採用実績を見ると、東京都では「初期研修医1350名」に対し、「専攻医1825名」となり、その差475名が「地方から東京」へ流れていることが分かりました。日本専門医機構では、「東京都の基幹病院に採用された専攻医の相当数(1年目には207名、2年目に394名、3年目には483名)が近隣県に出向する」ことなどを踏まえ、「少なくとも医師の東京への集中が助長されてはいない」との見解を示しましたが、厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」では、「明らかに東京への医師集中が『増悪』している」(渋谷健司構成員:東京大学大学院国際保健政策学教授)などの強い批判も出ています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

こうした指摘を重く見て、新執行部では「東京都への過度の専攻医集中を避ける必要がある。東京都については『今年度(2018年度)の専攻医採用実績から、さらに5%削減した定員上限(シーリング)』を設ける」考えを示していました(関連記事はこちら)。

この考えに対し、基本領域学会や東京都から▼5%削減の根拠はどこにあるのか▼東京都の定員を減らせば、東京都から関東近県への医師派遣が滞り、関東近県の医師不足が加速する▼東京都の中でも採用数の少ない学会もある▼今後、さらなる東京都の定員が削減されるのではないか―といった疑問・懸念・指摘が出ています。

これを受け、8月24日の理事会では次のような方針を固めました。

(1)5都府県のシーリングは2019年度も継続する

(2)東京都への偏在を助長しないよう、他県等へのローテート状況調査(東京都→他県)も踏まえながら調整する

(3)各種調査結果を総合的に勘案し、2019年度については、▼東京都において今年度(2018年度)の専攻医採用数から5%を目途に調整を行う▼東京都以外の4府県(神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県)については今年度(2018年度)のシーリング数を用いる―こととする

(4)東京都における5%の調整については、▼東京都のみ▼東京都と神奈川県のみ―で完結するプログラムを優先的に削減する

(5)▼外科▼産婦人科▼病理▼臨床検査―の各領域については、引き続きシーリングの対象としない

 寺本理事長は、東京都において医師偏在が「増悪」しているという指摘には応えなければならないとの考えを示し、「東京都の定員を削減・調整しなければならない」と判断。ただし、数値目標がなければ削減は難しく、また10%減・20%減という数字は非現実的なため、「5%を目指す」ことにしたと説明。5%という数字に明確な根拠はないものの、「2016年の医師・歯科医師・薬剤師調査では、医師の15-16%程度が東京都にいる、との結果が出ていた。一方、2018年度の専攻医登録状況を見ると、20-21%程度が東京都にいる。この差を埋めるために5%削減と考えることができるのではないか」との考えも付言しています。

また、5%削減は「外科などを除く全領域について、一律5%削減する」ものではありません。上述(4)のように▼東京都のみ▼東京都と神奈川県のみ―で完結するプログラムを優先的に削減することで、5%削減目標が相当程度可能になるのではないか、とも寺本理事長は見ているようです。

東京都以外の4府県のシーリング、2019年度は継続するが、その後に見直しの可能性も

ところで、「東京都以外の4府県(神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県)については今年度(2018年度)のシーリング数を用いる」ことになりましたが、病院団体からは「東京都以外では肌感覚として医師不足が生じている。シーリングをかけるべきではない」との指摘もあります(関連記事はこちら)。

この点について寺本理事長は、「そういった指摘があることは十分に認識している。日本専門医機構内部に設ける『シーリング(定員問題)検討委員会』において検討していくことになる」との考えを述べています。来年度(2019年度)においては従前どおりのシーリングがかかりますが、2020年度以降には見直される可能性も否定できません。

 
なお、来年度(2019年度)の専攻医募集開始は「10月中旬」とされています。新専門医制度に対する地域医療対策協議会(いわば「地域医療の課題を吸い上げる場」、各都道府県に設置)からの意見・要望を踏まえた制度設計見直しの可能性があるためです。

 
 
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