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GemMed塾 看護モニタリング

医科の入院・入院外とも家族で1人当たり医療費が高く、背景に「受診率」の高さ—健保連

2019.4.19.(金)

 医科入院外・医科入院ともに、サラリーマン本人よりも家族の1人当たり医療費が高い。全般的に「受診率の高さ」がその背景にあり、「本当に医療機関受診が必要なのか」を一定程度判断できるような健康教育が医療費適正化に向けて重要と考えられる—。

 このような状況が、4月18日に健康保険組合連合会が公表した2017年度の「健保組合医療費に関する調査(基礎数値)」から浮かんできました(健保連のサイトはこちら)(前年度の関連記事はこちら)。

 2020年度の次期診療報酬改定に向けて、中央社会保険医療協議会では「世代別・年代別の医療の課題」を洗い出しており、こうしたデータの活用も期待されます(関連記事はこちらこちら こちら)。

医科入院外の1人当たり医療費は、受診率が高いため、本人よりも家族のほうが高い

 主に大企業で働くサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合の連合組織である健保連では、データヘルスに積極的に取り組んでいます(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。今般、1280組合のサラリーマン本人(1568万891人)、家族(1214万6667人)の電算処理レセプト(3億1777万1463件)をもとに医療費の詳細な分析を行っています。

 健保組合の2017年度医療費は約4兆897億円で、診療種類別の内訳は、▼医科入院:23.6%(前年度に比べ0.2ポイント減)▼医科入院外:42.8%(同0.1ポイント増)▼歯科入院外:12.0%(同増減なし)▼歯科入院:0.2%(同増減なし)▼調剤:21.5%(同0.3ポイント増)—となっています。前年度から大きな変化なし、と言えるでしょう。

 1人当たりの医療費は本人14万4914円(同4580円・3.3%増)・家族15万556円(同3065円・2.1%増)となりました。

 診療種類別にみると、▼医科入院:本人3万2833円(同2.1%増)・家族3万6922円(同1.6%増)▼医科入院外:本人6万1161円(同3.3%増)・家族6万4998円(同1.6%増▼調剤:本人3万1533円(同4.8%増)・家族3万1646円(同3.5%増)―などという状況です。

 
 まず最もシェアの大きな医科入院外の1人当たり医療費は、本人よりも家族のほうが3837円高くなっています。この原因・背景について、医療費の3要素(受診率・1件当たり日数・1日当たり医療費)に分解して探ってみると、次のようになっています。

▽受診率(1000人当たりの受診件数、つまり医療機関にかかる頻度)
本人5417.7(前年度から2.4%増)、家族6742.9(同1.0%増)で、家族が本人の1.24倍

▽1件当たり日数(いわば一連の治療でかかる日数)
 本人1.4日(前年度から増減なし)、家族1.5日(同で)で、家族が本人の1.07倍

▽1日当たり医療費(いわば単価)
本人8310円(前年度から1.3%増)、家族6612円(同1.4%増)で、家族が本人の0.8倍

診療種類別の1人当たり医療費と3要素

診療種類別の1人当たり医療費と3要素

 
ここから、「受診率」(つまり医療機関にかかる頻度)が高いために、家族の入院外1人当たり医療費が高くなっていることが分かります。

 
 
 さらに年齢階層別に、医科入院外医療費の3要素を、本人と家族で比較してみると、次のような状況が分かります。

▽受診率:全般的に家族の方が高く、本人では存在しない0-4歳(1万772.4、前年度から1.0%増)・5-9歳(7795.6、同0.5%減)などで非常に高い

▽1件当たり日数:全般的に本人と家族とでの目立った違いはない

▽1日当たり医療費:全般的に本人のほうがやや高い

 ここから、家族では「全般的に受診率が高く、かつ乳幼児の受診が多い」ために、入院外医療費が高くなっていると考えられます。乳幼児も含めて「本当に医療機関受診が必要であるのか」を一定程度判断できるような、健康教育を保険者自らが実施することが重要でしょう。

入院外・年齢別の1人当たり医療費3要素(本人)

入院外・年齢別の1人当たり医療費3要素(本人)

入院外・年齢別の1人当たり医療費3要素(家族)

入院外・年齢別の1人当たり医療費3要素(家族)

 

家族、呼吸器疾患での外来受診率が高く、1人当たり医療費も飛び抜けて高い

 さらに、医科入院外医療費の構成を疾患別に見てみると、▼呼吸器系疾患:18.8%(前年度から0.1ポイント減)▼内分泌、栄養及び代謝疾患:11.4%(同0.1ポイント増)▼新生物:8.5%(同0.2ポイント増)▼循環器系疾患:8.2%(同0.3ポイント減)▼皮膚及び皮下組織疾患:6.7%(同0.2ポイント増)▼筋骨格系及び結合組織疾患:6.6%(同0.1ポイント増)▼消化器系疾患:6.6%(同0.1ポイント増)―などが大きなシェアを占めています。新生物が循環器系疾患を抜き、医療費シェア第3位に浮上しました。

入院外医療費の疾患別構成

入院外医療費の疾患別構成

 
1人当たり医療費で見てみると、本人では▼内分泌、栄養及び代謝疾患:1万2430円(前年度から4.7%増)▼呼吸器系疾患:1万1653円(同6.5%増)▼循環器系疾患:9981円(同0.6%減)▼新生物:9005円(同9.1%増)―などが高く、家族では▼呼吸器系疾患:2万4838円(同1.0%増)▼内分泌、栄養及び代謝疾患:8261円(同3.3%増)▼皮膚及び皮下組織疾患:8167円(同6.8%増)▼新生物:6344円(同2.9%増)―などが高くなっています。家族では、「呼吸器系疾患」で飛び抜けて高い(乳幼児が含まれるためと推測される)こと、新生物の伸びが小さいこと、などが本人と大きく異なっています。
入院外・疾患別の1人当たり医療費(本人)

入院外・疾患別の1人当たり医療費(本人)

入院外・疾患別の1人当たり医療費(家族)

入院外・疾患別の1人当たり医療費(家族)

 
 さらに、本人と家族について疾患別に受診率を比較してみると、本人では▼呼吸器系疾患:1412.5(前年度から4.9%増)▼内分泌、栄養及び代謝疾患:1223.9(同2.0%増)▼消化器系の疾患:1168.1(同0.3%増)▼循環器系疾患:1085.0(同1.4%増)―などが高く、家族では▼呼吸系疾患:2734.2(同1.0%増)▼皮膚及び皮下組織疾患:1267.7(同4.5%増)▼眼及び付属器疾患:889.7(同5.4%増)▼消化器系疾患:804.8(同1.7%減)―などで高くなっています。呼吸器系疾患の1人当たり医療費が家族で飛び抜けて高いのは、「受診率が飛び抜けて高い」ことに起因しているようです。
入院外・疾患別の1人当たり医療費3要素(本人)

入院外・疾患別の1人当たり医療費3要素(本人)

入院外・疾患別の1人当たり医療費3要素(家族)

入院外・疾患別の1人当たり医療費3要素(家族)

 
家族に含まれる「乳幼児」で呼吸系疾患での受診が多いことが考えられますが、前述のように「軽い風邪などで、安易に医療機関を受診する」ことが適切なのか、保険者・医療機関・行政・教育機関などさまざまな関係者が連携して「患者への健康教育」を充実していくことが重要でしょう。

医科入院でも、受診率の高さが、家族の「1人当たり医療費」が高い要因

 次に「医科入院」について、少し詳しく見ていきましょう。

 医科入院の1人当たり医療費は、本人3万2833円(同2.1%増)・家族3万6922円(同1.6%増)で、医科入院外と同様に「家族のほうが高い」(本人よりも家族のほうが4089円高い)状況です。3要素に分解して探ってみると、次のようになっています。

▽受診率(1000人当たりの受診件数、つまり医療機関に入院する頻度)
本人69.1(前年度から0.9%増)、家族86.0(同0.3減)で、家族が本人の1.24倍

▽1件当たり日数(いわば一連の治療における在院日数)
 本人8.1日(前年度から1.2%減)、家族8.9日(同増減なし)で、家族が本人の1.10倍

▽1日当たり医療費(いわば単価)
本人5万8424円(前年度から2.2%増)、家族4万8499円(同2.6%増)で、家族が本人の0.83倍

診療種類別の1人当たり医療費と3要素

診療種類別の1人当たり医療費と3要素

 
ここから、やはり「受診率」(つまり入院の頻度)が高いために、家族の入院1人当たり医療費が高くなっていることが分かります。

 
 さらに年齢階層別に、医科入院外医療費の3要素を、本人と家族で比較してみると、次のような状況が分かります。

▽受診率:家族では、本人に存在しない0-4歳(179.4、前年度から2.9%増)と、25-34歳の階層で著しく高い

▽1件当たり日数:全般的に家族で長い

▽1日当たり医療費:本人存在しない14歳以下を除き、全般的に本人のほうが高い

入院・年齢別の1人当たり医療費3要素(本人)

入院・年齢別の1人当たり医療費3要素(本人)

入院・年齢別の1人当たり医療費3要素(家族)

入院・年齢別の1人当たり医療費3要素(家族)

 
 ここから、家族では▼乳幼児の入院▼出産・妊娠に伴う疾患での入院―に起因して、1人当たり医療費が高くなると考えられそうです。また、家族では「在院日数が長い」点も気になり、早期退院の可能性も探る必要があるでしょう。

0-4歳の乳幼児、1日当たりの入院医療費(単価)が最も高く、受診率も高め

 また、医科入院医療費の構成を疾患別に見てみると、▼新生物:19.3%(前年から増減なし)▼循環器系疾患:16.0%(同0.5ポイント増)▼消化器系疾患:8.4%(同0.2ポイント減)▼損傷、中毒及びその他の外因の影響:7.7%(同0.3ポイント増)▼呼吸器系疾患:7.0%(同0.2ポイント減)▼筋骨格系及び結合組織疾患:5.9%(同0.4ポイント増)▼妊娠、分娩及び産褥:5.3%(同0.1ポイント減)―などが大きなシェアを占めています。

入院医療費の疾患別シェア

入院医療費の疾患別シェア

 
1人当たり医療費で見てみると、本人では▼新生物:7294円(前値度から1.2%増)▼循環器系疾患:6811円(同4.0%増)▼消化器系疾患:3143円(同0.7%減)―などが高く、家族では▼新生物:4870円(同0.3%増)▼呼吸器系疾患:3297円(同0.5%減)▼循環器系疾患:3063円(同5.0%増)―などが高くなっています。
入院・疾患別の1人当たり医療費(本人)

入院・疾患別の1人当たり医療費(本人)

入院・疾患別の1人当たり医療費(家族)

入院・疾患別の1人当たり医療費(家族)

 
 さらに、本人と家族について疾患別に受診率を比較してみると、本人では▼消化器系疾患:28.3(前年度から0.4%増)▼循環器系疾患:19.3(同1.0%増)▼新生物:18.7(同増減なし)▼内分泌、栄養及び代謝疾患:15.5(同0.6%増)―などが高く、家族では▼消化器系疾患:24.6(同1.2%減)▼呼吸器系疾患:20.5(同1.0%増)▼内分泌、栄養及び代謝疾患:15.1(同増減なし)▼循環器系疾患:13.6(同増減なし)—が高くなっています。
入院・疾患別の1人当たり医療費3要素(本人)

入院・疾患別の1人当たり医療費3要素(本人)

入院・疾患別の1人当たり医療費3要素(家族)

入院・疾患別の1人当たり医療費3要素(家族)

 
 なお、0-4歳では、1日当たり医療費が全年齢階層の中で最も高く(6万4356円、前年度から1.4%増)、受診率も比較的高い(179.4、前年度から2.9%増)ことから、「乳幼児の入院」が家族の1人当たり医療費に相当程度の影響を与えていると推測できます。

サラリーマン本人、外来では生活習慣病、入院ではがんの医療費が高い

 さらに「1人当たり医療費」が高い疾患を見てみると、医科入院と医科入院外では、それぞれ次のようになっています。

【医科入院】

▼本人:「その他の悪性新生物」2440円(前年度から1.4%増)、「その他の心疾患」2249円(同7.9%増)、「その他の消化器系の疾患」2120円(同0.2%減)

疾患別1人当たり医療費(入院、本人)

疾患別1人当たり医療費(入院、本人)

 
▼家族:「その他の妊娠、分娩及び産褥」1896円(同4.0%減)、「その他の消化器系の疾患」1594円(同0.4%増)、「その他の損傷及びその他の外因の影響」1351円(同5.7%増)
疾患別1人当たり医療費(入院、家族)

疾患別1人当たり医療費(入院、家族)

 
【医科入院外】

▼本人:「糖尿病」6322円(同5.9%増)、「高血圧性疾患」6035円(同3.2%減)、「その他の内分泌、栄養及び代謝疾患」5257円(同3.0%増)
疾患別1人当たり医療費(入院外、本人)

疾患別1人当たり医療費(入院外、本人)

 
▼家族:「喘息」5874円(同9.5%減)、「アレルギー性鼻炎」5458円(同7.8%増)、「その他の内分泌、栄養及び代謝疾患」4923円(同3.3%増)
疾患別1人当たり医療費(入院外、家族)

疾患別1人当たり医療費(入院外、家族)

 
 
 これまで見てきたように、年代・世代によって医療費に特性のあることがうかがえます。今回は0-74歳が対象ですが、ここに「後期高齢者医療」(75歳以上)や「国民健康保険」(70-74歳の前期高齢者の加入割合が高い)を組み合わせると、さらに「年代・世代別の特徴」が顕著になると考えられます。

 2020年度の次期診療報酬改定に向けて、中央社会保険医療協議会では「年代別・世代別の医療の課題」を洗い出しており、健保連の分析も含めた議論が展開されることが今後、期待されます(関連記事はこちらこちら こちら)。

 
 
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