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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

風邪やアレルギー性鼻炎、乳幼児で受診率高く、家族の1人当たり医療費が高い―健保連

2018.4.23.(月)

 感冒(風邪)やアレルギー性鼻炎などでは、サラリーマン本人よりも家族において1人当たり医療費が高い。この背景には、幼児・小児における1人当たり医療費の高さ、ひいては「乳幼児の受診率の高さ」がある―。

 健康保険組合連合会(健保連)が4月17日に公表した2106年度の「かぜ(感冒)・インフルエンザ等、季節性疾患(入院外)の動向に関するレポート」から、こういった状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。財務省は、財政制度等審議会・財政制度分科会に「軽微疾病での少額受診者には、一定の定額負担を求めてはどうか」(軽微受診の抑制を狙う)と提案しており、今後の議論において重要なデータとなります(関連記事はこちら)。

感冒、家族の1人当たり医療費は本人の3.6倍だが、0-4歳児で受診率が高いことが原因

 主に大企業で働くサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)では、従前からデータヘルスに積極的に取り組んでいます(関連記事はこちらこちらこちら)。

今般の調査では、2016年度のレセプトから、(1)急性鼻咽頭炎(かぜ<感冒>)(2)インフルエンザ(3)血管運動性鼻炎・アレルギー性鼻炎<鼻アレルギー>(4)花粉によるアレルギー性鼻炎<鼻アレルギー>―4疾患について、有病者数や医療費3要素などを分析しました。

 まず(1)の感冒について、「加入者数に占める有病者数の割合」の推移を見ると、2016年度は「10月から増加しはじめ、12月をピークとして、徐々に減少していく」状況にありました。本人(大企業のサラリーマン自身)と家族に分けて有病者数の割合を見ると、本人では2017年1月(0.85%)、家族では2016年12月(1.92%)がピークとなりました。

 本人・家族のそれぞれについて年齢階級別の有病者数の構成割合を見ると、本人では幅広い年齢に分布していますが、家族では0-4歳が半数超(50.2%)を占めています。

感冒における本人・家族別、年齢階級別の有病者数(2016年度)

感冒における本人・家族別、年齢階級別の有病者数(2016年度)

 
 また1人当たり医療費を見ると、本人は95円ですが、家族はその3.6倍となる340円となりました。年齢階級別に見ると、家族では、0-4歳における「1人当たり1650円」が飛び抜けて高いほか、全般的に本人よりもやや高いことが分かります。

 1人当たり医療費は、▼受診率(どのくらいの頻度で医療機関にかかるのか)▼1件当たり日数(医療機関に何日ほどかかるのか)▼1日当たり医療費(1日の医療費はいくから)—に分解することができます(逆に、これらを掛け合わせると、年間の1人当たり医療費となる)。

 本人と家族で、1人当たり医療費の3要素を比較すると、家族では受診率が本人の2.8倍(本人67.3、家族189.3)と高く、1件当たり日数・1日当たり医療費も家族で若干高くなっています。

感冒における1人当たり医療費と、その3要素分析

感冒における1人当たり医療費と、その3要素分析

 
 これらを総合すると、「感冒の医療費は家族で高く、0-4歳で受診率が極めて高いことが主な要因ではないか」と伺えます(1件当たり日数や1日当たり医療費は、本人と家族で、受診率ほどの差はないため、ほかの疾患でも同様に考えられる)。2018年度の診療報酬改定では、小児科外来診療料・小児かかりつけ診療料の加算となる【小児抗菌薬適正使用支援加算】(80点)が新設されました。急性上気道感染症・急性下痢症の小児患者の初診時に、「抗菌薬投与の必要性が認められず抗菌薬を使用しない」場合、抗菌薬の使用が必要でない説明などを適切に行うことを評価するもので、「受診率」とは関係が薄いですが、「1日当たり医療費」の適正化に寄与する可能性がありそうです(関連記事はこちらこちら)。

インフルエンザの1人当たり医療費、14歳未満の受診率高く、家族で本人の1.9倍

 (2)のインフルエンザについて、有病者数割合の推移を見ると、2016年度は「12月から増加しはじめ、1月にピークを迎えた」格好です。本人・家族のそれぞれについて年齢階級別の有病者数の構成割合を見ると、(1)の感冒と若干異なり「14歳未満の家族で有病者が極めて多く、20歳以上では本人のほうが家族よりも有病者が多い」ことが分かりました。

インフルエンザにおける本人・家族別、年齢階級別の有病者数(2016年度)

インフルエンザにおける本人・家族別、年齢階級別の有病者数(2016年度)

 
 1人当たり医療費を見ると、本人は1251円、家族が2338円で、家族が本人の1.9倍となりました。年齢階級別に見ると、「家族の0-14歳で極めて高い」状況が分かります。

 1人当たり医療費を3要素に分解してみると、家族においては受診率が高い(本人174.0、家族301.8で1.7倍の差)ことが分かり(1件当たり日数はやや家族で長く、1日あたり医療費は本人の方がやや高い)、「インフルエンザの医療費は家族で高く、0-14歳で受診率が高いことが主な要因」と言えるでしょう。

インフルエンザにおける1人当たり医療費と、その3要素分析

インフルエンザにおける1人当たり医療費と、その3要素分析

アレルギー性鼻炎の1人当たり医療費、14歳未満の受診率高く、家族で本人の2.0倍

 (3)の血管運動性鼻炎・アレルギー性鼻炎について有病者数割合の推移を見ると、2016年度は「本人・家族ともに2017年3月がピーク」となっています。本人・家族のそれぞれについて年齢階級別の有病者数の構成割合を見ると、(2)のインフルエンザと同様に、「14歳未満の家族で有病者が極めて多く、20歳以上では本人のほうが家族よりも有病者が多い」ことが分かります。ただしインフルエンザに比べて成人の有病者数割合が若干高くなっています。

血管運動性鼻炎・アレルギー性鼻炎における本人・家族別、年齢階級別の有病者数(2016年度)

血管運動性鼻炎・アレルギー性鼻炎における本人・家族別、年齢階級別の有病者数(2016年度)

 
 1人当たり医療費に目を移すと、本人2741円、家族4965円で、家族が本人の1.8倍となりました。年齢階級別に見ると、「家族の0-14歳で高い」状況はインフルエンザと同様ですが、成人における本人と家族の差は比較的小さいようです。

 1人当たり医療費を3要素に分けると、家族で受診率がやはり高く(本人541.7、家族1069.9で、2.0倍の差)なっており(1件当たり日数はやや家族で長く、1日あたり医療費は本人の方が高い)、「インフルエンザの医療費は家族で高く、0-14歳で受診率が高いことが主な要因」と言えるでしょう。

血管運動性鼻炎・アレルギー性鼻炎における1人当たり医療費と、その3要素分析

血管運動性鼻炎・アレルギー性鼻炎における1人当たり医療費と、その3要素分析

花粉症については、本人と家族で1人当たり医療費などに大きな差はない

 最後に(4)の花粉によるアレルギー性鼻炎の有病者数割合を見ると、2016年度は「2017年2月、3月で急増する」状況が分かります。本人・家族のそれぞれについて年齢階級別の有病者数の構成割合を見ると、「家族で0-14歳の有病者数が多い」「成人では本人の方が圧倒的に有病者数が多い」ことが明らかになっています。

花粉によるアレルギー性鼻炎における本人・家族別、年齢階級別の有病者数(2016年度)

花粉によるアレルギー性鼻炎における本人・家族別、年齢階級別の有病者数(2016年度)

 
 1人当たり医療費を見ると、本人102円、家族97円でその差は小さいと言えるでしょう。年齢階級別に見ると、家族の10-14歳、本人・家族の50歳代という2つの山があります。

 1人当たり医療費を3要素に分けて見ると、(1)から(3)の疾病と異なり、本人と家族で大きな差はありません。

花粉によるアレルギー性鼻炎における1人当たり医療費と、その3要素分析

花粉によるアレルギー性鼻炎における1人当たり医療費と、その3要素分析

 
 冒頭で述べたように、財務省は、財政制度等審議会・財政制度分科会に「軽微疾病での少額受診者には、一定の定額負担を求めてはどうか」(軽微受診の抑制を狙う)と提案しています(関連記事はこちら)。一方、今般の健保連調査を見ると、▼感冒▼インフルエンザ▼血管運動性鼻炎・アレルギー性鼻炎—では、「幼児や小児の受診率が高い」ことが分かります。多くの自治体では、少子化対策の一環として「幼児や小児に医療費の助成」を行っており、これが受診率の高さにも影響していると考えられますが、「軽微受診の場合の定額負担」を導入した場合、助成制度との関係をどのように整理するのか(定額負担は「助成の外」といった仕組みが可能なのか)、今後の検討に注目する必要があるでしょう。
 
 
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