健保組合加入者の5.47%は血糖、11.90%は肝機能に問題があり医療機関受診が必要―健保連
2017.12.5.(火)
40-74歳の健康保険組合加入者のうち、17.97%は「血圧」が高く、32.13%は「脂質」が高く、また5.47%は「血糖値」が高く、さらに11.90%は「肝機能」が悪化しており、それぞれ医療機関の受診が必要な状態である。また職種によってこれら割合にはバラつきがあり、治療を受けている人の割合にも相当の格差がある―。
健康保険組合連合会が11月30日に公表した、2015年度の「業態別にみた被保険者の健康状態に関する調査分析」からこういった状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら。企業が「従業員の心身の健康状態を保つ」ことが重視されてきており、こういったデータも活用しながら「従業員の健康づくり」に取り組むことが求められます。
17.97%は高血圧、32.13%は高脂質であり、医療機関受診が必要
主に大企業のサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)では、データヘルスに積極的に取り組んでいます(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。今般、2015年度の加入者1347万2130人のレセプトデータと、特定健康診査受診者339万5199人(40-74歳)の健診データなどをもとに健康状態を分析しています。
まず、特定健診データから、40-74歳の加入者において▼肥満▼血圧▼脂質▼血糖▼肝機能―の状態がどのようになっているのかを分析すると、次のような状況が明らかになりました。
▼40.00%の加入者が「肥満」に該当。▽建設業49.28%▽電気・ガス・熱供給・水道業44.84%▽木製品・家具等製造業44.66%—などの業種で高く、▽労働者派遣業23.53%▽繊維製品製造業26.18%▽医療・福祉28.71%—などの業種で低い。建設業と労働者派遣業の格差は2.09倍。
なお、肥満の定義は、(1)「内臓脂肪面積が100平方cm以上」または、「内臓脂肪面積が100平方cm未満でBMI25以上」(2)内臓脂肪面積の検査値がないときは、男性では「腹囲85cm以上」または「腹囲85cm未満でBMI25以上」、女性では「腹囲90cm以上」または「腹囲90cm未満でBMI25以上」である
▼「血圧」の状態を見ると、16.86%が保健指導判定値に該当(収縮期130mmHg以上、拡張期85mmHg以上)し、17.97%が受診勧奨判定値に該当(収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上)。受診勧奨判定値該当者の割合は、▽木製品・家具等製造業27.44%▽飲食料品小売業26.45%▽運輸業22.93%—などの業種で高く、▽労働者派遣業10.01%▽生活関連サービス業、娯楽業13.09%▽学術研究、専門、技術サービス業13.37%—などの業種で低い。木製品・家具等製造業と労働者派遣業の格差は2.74倍。
▼「脂質」の状態を見ると、30.72%が保健指導判定値に該当(中性脂肪:150-299mg/dL、HDLコレステロール:35-39mg/dL、LDLコレステロール:120-139mg/dL)し、32.13%が受診勧奨判定値に該当(中性脂肪:300mg/dL以上、HDLコレステロール:34mg/dL以下、LDLコレステロール:140mg/dL以上)。受診勧奨判定値該当者の割合は、▽飲食料品小売業36.54%▽建設業35.15%▽その他のサービス業33.56%—などの業種で高く、▽労働者派遣業25.87%▽教育・学習支援業25.94%▽医療、福祉29.10%—などの業種で低い。飲食料品小売業と労働者派遣業の格差は1.41倍。
▼「血糖」の状態を見ると、27.25%が保健指導判定値に該当(空腹時血糖:100-125mg/dL、HbA1c:5.6-6.4%)し、5.47%が受診勧奨判定値に該当(空腹時血糖:126mg/dL以上、HbA1c:6.5%以上)。受診勧奨判定値該当者の割合は、▽建設業7.58%▽金属工業6.66%▽木製品・家具等製造業6.40%—などの業種で高く、▽労働者派遣業2.26%▽繊維製品製造業3.16%▽教育・学習支援業4.18%—などの業種で低い。建設業と労働者派遣業の格差は3.35倍。
▼「肝機能」の状態を見ると、22.44%が保健指導判定値に該当(AST(GOT):31-50U/L、ALT(GPT):31-50U/L、γ-GT(γ-GTP):51-100U/L)し、11.90%が受診勧奨判定値に該当(AST(GOT):51U/L以上、ALT(GPT):51U/L以上、γ-GT(γ-GTP):101U/L以上)。受診勧奨判定値該当者の割合は、▽建設業16.00%▽電気・ガス・熱供給・水道業14.90%▽金属工業13.96%—などの業種で高く、▽労働者派遣業5.44%▽医療、福祉7.13%▽繊維製品製造業7.43%—などの業種で低い。建設業と労働者派遣業の格差は2.94倍。
▼「メタボリックシンドローム」については、14.34%が該当し、13.72%が予備群となった。該当者の割合は、▽建設業19.69%▽木製品・家具等製造業17.68%▽金属工業17.07%—などの業種で高く、▽労働者派遣業5.64%▽繊維製品製造業8.11%▽医療、福祉8.95%—などの業種で低い。建設業と労働者派遣業の格差は3.49倍。
高脂質者の、ごく一部しかコレステロール降下剤を服用していない
次に医療機関の受診状況を、上述の「受診勧奨判定者の状況」などと比べながら見てみましょう。
▼「血圧を下げる薬を服用している人」の割合は14.49%で、高血圧により受診勧奨判定された人の割合(17.97%)よりも低くなっています。「受診勧奨判定者割合」に比べて「降圧剤服用者割合」が小さいのは、▽飲食料品小売業(降圧剤服用者割合が11.54ポイント少ない)▽木製品・家具等製造業(同8.23ポイント少ない)▽飲食料品以外の小売業(同7.24ポイント少ない)―などです。
▼「コレステロールを下げる薬を服用している人」の割合は8.34%で、高脂質により受診勧奨判定された人の割合(32.13%)よりもかなり低くなっています。「受診勧奨判定者割合」に比べて「コレステロール降下剤服用者割合」が小さいのは、▽飲食料品小売業(コレステロール降下剤服用者割合が27.63ポイント少ない)▽建設業(同25.99ポイント少ない)▽生活関連サービス業、娯楽業(同25.99ポイント少ない)―などです。
▼「インスリン注射または血糖を下げる薬を服用している人」の割合は4.25%で、高血糖により受診勧奨判定された人の割合(5.47%)よりも若干低くなっています。「受診勧奨判定者割合」に比べて「インスリン等使用者割合」が小さいのは、▽木製品・家具等製造業(インスリン等使用者が2.28ポイント少ない)▽宿泊業、飲食サービス業(同1.94ポイント少ない)▽紙製品製造業(同1.85ポイント少ない)―などです。
業種によって、「どの健康項目でリスク保有者が多いのか」「リスク保有者の中でどれだけの人が治療を受けているのか(重症化予防に取り組んでいるのか)」といった点に、特徴のあることが分かります。企業におかれては、こうしたデータも活用しながら「健康づくり」に積極的に取り組むことが期待されます。
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