Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

健保組合加入者の31%は脂質に、11%は肝機能に問題があり医療機関受診が必要―健保連

2019.1.24.(木)

 40-74歳の健康保険組合加入者のうち、17.10%は「血圧」に、31.08%は「脂質」に、4.94%は「血糖値」に、さらに10.98%は「肝機能」に問題があり、医療機関の受診が必要な状態である。ただし、治療を受けていない人も一定程度おり、また業態によってバラつきも大きい―。

 健康保険組合連合会が1月16日に公表した、2016年度の「業態別にみた被保険者の健康状態に関する調査分析」からこういった状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)(前年度の記事はこちら)。企業に対して、これまで以上に「従業員の心身の健康状態を保つ」ことが重視されてきており、こうしたデータも活用した「従業員の健康づくり」に向けた取り組みが求められます。

健保組合加入者の16.08%は高血圧、4.94%は高脂質で、医療機関受診が必要

 主に大企業のサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)では、データを活用した保健事業「データヘルス」に積極的に取り組んでいます(関連記事はこちらこちらこちら)。今般、2016年度における加入者のレセプトデータ1516万4861人分と、特定健康診査(40-74歳が対象)データ335万704人分をもとに健康状態を分析しています。

まず、特定健診データから「40-74歳の加入者において、▼肥満▼血圧▼脂質▼血糖▼肝機能―の状態がどのようになっているのか」を分析したところ、次のような状況が明らかになりました。全般的に「健康リスク保有者の割合は前年度に比べて減少している」ことが伺えますが、印刷・同関連業では悪化も見られるなど、業態の特性等に応じた生活習慣改善等に向けた指導を実施する必要がありそうです。

【肥満】
37.15%の加入者が「肥満」に該当(前年度から2.85ポイント減少)。▼建設業:44.72(同4.56ポイント減少)▼その他のサービス業:41.66%(同1.97ポイント減少)▼印刷・同関連事業:40.34%(同2.41ポイント減少)—などの業種で高く、逆に、▼労働者派遣業:23.40%(同0.13ポイント増加)▼繊維製品製造業:25.78%(同0.40ポイント減少)▼医療・福祉:28.54%(同0.17ポイント減少)—などの業種で低い。建設業と労働者派遣業の格差は1.91倍(同0.18ポイント縮小)。

肥満の定義は、(1)「内臓脂肪面積が100平方cm以上」または、「内臓脂肪面積が100平方cm未満でBMI25以上」(2)内臓脂肪面積の検査値がないときは、男性では「腹囲85cm以上」または「腹囲85cm未満でBMI25以上」、女性では「腹囲90cm以上」または「腹囲90cm未満でBMI25以上」―である。

 
【血圧】
「血圧」の状態を見ると、16.08%が保健指導判定値(収縮期130mmHg以上、拡張期85mmHg以上)に該当し(前年度から0.78ポイント減少)、17.10%が受診勧奨判定値(収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上)に該当している(前年度から0.87ポイント減少)。

受診勧奨判定値該当者の割合は、印刷・同関連事業:29.97%(前年度から15.59ポイントの大幅増)で飛び抜けて高く、ほか▼運輸業:21.47%(同1.46ポイント減少)▼複合サービス業:20.57%(同0.90ポイント減少)―などの業種で高い。一方、▼労働者派遣業:9.99(同0.02ポイント減少)▼教育・学習支援業:11.57%(同1.82ポイント減少)▼情報通信業:14.32%(同0.07ポイント減少)―などで低く、印刷・同関連業と労働者派遣業との格差は3.0倍(同1.26ポイント縮小)。
2016年度業態別健康状態調査(健保連)1 190116 
 
 
【脂質】
「脂質」の状態を見ると、30.00%が保健指導判定値(中性脂肪:150-299mg/dL、HDLコレステロール:35-39mg/dL、LDLコレステロール:120-139mg/dL)に該当し(前年度に比べて0.72ポイント減少)、31.08%が受診勧奨判定値(中性脂肪:300mg/dL以上、HDLコレステロール:34mg/dL以下、LDLコレステロール:140mg/dL以上)に該当している(同1.05ポイント減少)。

受診勧奨判定値該当者の割合は、▼建設業:33.71%(前年度から1.44ポイント減少)▼印刷・同関連業:33.42%(同3.67ポイント増加)▼飲食料品小売業:32.62%(同0.44ポイント減少)—などの業種で高く、▼労働者派遣業:25.45%(同0.42ポイント減少)▼医療、福祉:28.08%(同1.02ポイント減少)▼宿泊業・飲食サービス業:28.88%(同1.76ポイント減少)—などの業種で低い。建設業と労働者派遣業との格差は1.32倍(同0.09ポイント縮小)。
2016年度業態別健康状態調査(健保連)2 190116
 
  
【血糖】
「血糖」の状態を見ると、25.70%が保健指導判定値(空腹時血糖:100-125mg/dL、HbA1c:5.6-6.4%)に該当し(前年度に比べて1.55ポイント減少)、4.94%が受診勧奨判定値(空腹時血糖:126mg/dL以上、HbA1c:6.5%以上)に該当している(前年度に比べて0.53ポイント減少)。

受診勧奨判定値該当者の割合は、▼建設業:6.78%(前年度から0.80ポイント減少)▼複合サービス業:6.32%(同0.23ポイント増加)▼印刷・同関連業:6.13%(同0.38ポイント増加)—などの業種で高く、▼労働者派遣業:2.23%(同0.03ポイント減少)▼繊維製品製造業:3.31%(同0.15ポイント増加)▼医療・福祉:4.10%(同0.12ポイント減少)—などの業種で低い。建設業と労働者派遣業の格差は3.04倍(同0.31ポイント縮小)。
2016年度業態別健康状態調査(健保連)3 190116

  
【肝機能】
「肝機能」の状態を見ると、20.65%が保健指導判定値(AST(GOT):31-50U/L、ALT(GPT):31-50U/L、γ-GT(γ-GTP):51-100U/L)に該当し(前年度に比べて1.79ポイント減少)、10.98%が受診勧奨判定値(AST(GOT):51U/L以上、ALT(GPT):51U/L以上、γ-GT(γ-GTP):101U/L以上)に該当した(前年度に比べて0.92ポイント減少)。

受診勧奨判定値該当者の割合は、▼建設業:14.32%(前年度から1.68ポイント減少)▼その他のサービス業:12.43%(同0.84ポイント減少)▼金属工業:12.36%(同1.60ポイント減少)—などの業種で高く、▼労働者派遣業:5.39%(同0.05ポイント減少)▼繊維製品製造業:6.90%(同0.53ポイント減少)▼医療、福祉:7.31%(同0.18ポイント減少)—などの業種で低い。建設業と労働者派遣業の格差は2.66倍(同0.28ポイント縮小)。
2016年度業態別健康状態調査(健保連)4 190116
 
  
【メタボリックシンドローム】
「メタボリックシンドローム」については、13.00%が該当し(前年度に比べて1.34ポイント減少)、12.40%が予備群となった(同1.32ポイント減少)。

メタボ該当者の割合は、▼建設業:17.48%(同2.21ポイント減少)▼印刷・同関連業:15.62%(同0.89ポイント増加)▼金属工業:15.25%(同1.82ポイント減少)—などの業種で高く、▼労働者派遣業:5.57%(同0.07ポイント減少)▼繊維製品製造業:7.85ポイント(同0.26ポイント減少)▼医療、福祉:8.81%(同0.14ポイント減少)—などの業種で低い。建設業と労働者派遣業の格差は3.13倍(同0.36ポイント縮小)。

高脂質者、依然、コレステロール降下剤で治療している割合は低い

 また医療機関の受診状況を、上述の「受診勧奨判定者の状況」などと比べながら見てみると、次のような状況が伺えます。

▽「血圧を下げる薬を服用している人」の割合は全体で13.74%(前年度に比べて0.75ポイント減少)で、高血圧のため受診勧奨判定された人の割合(17.10%)よりも低くなっています。母数が異なる(受診者はレセプトデータから、受診勧奨判定者は特定健診データから)ため、厳密な比較はできませんが、受診を勧奨されながらも医療機関を受診していない人が相当程度いる状況が伺えます。
2016年度業態別健康状態調査(健保連)5 190116
 
「受診勧奨判定者割合」に比べて「降圧剤服用者割合」が小さい業態は、▼飲食料品以外の小売業(降圧剤服用者割合が6.87ポイント少ない)▼飲食料品小売業(同6.04ポイント少なく)▼運輸業(同5.27ポイント少ない)―などです。

  
▽「コレステロールを下げる薬を服用している人」の割合は8.41%(前年度に比べて0.07ポイント増加)で、高脂質により受診勧奨判定された人の割合(31.08%)よりも、かなり低くなっています。受診者側の危機感の薄さが分かります。
2016年度業態別健康状態調査(健保連)6 190116
 
「受診勧奨判定者割合」に比べて「コレステロール降下剤服用者割合」が小さい業態は、▼印刷・同関連業(コレステロール降下剤服用者割合が26.09ポイント少ない)▼木製品・家具等製造業(同25.82ポイント少ない)▼紙製品製造業(同24.49ポイント少ない)―などです。

 
▽「インスリン注射または血糖を下げる薬を服用している人」の割合は3.93%(前年度に比べて0.32ポイント減少)で、高血糖により受診勧奨判定された人の割合(4.94%)よりも若干低くなっています。
2016年度業態別健康状態調査(健保連)7 190116
 
「受診勧奨判定者割合」に比べて「インスリン等使用者割合」が小さい業態は、▼印刷・同関連業(インスリン等使用者が2.31ポイント少ない)▼紙製品製造業(同1.79ポイント少ない)▼複合サービス業(同1.53ポイント少ない)―などです。

 
 前述のとおり、厳密な比較はできませんが、業態によって「どの健康項目でリスク保有者が多いのか」「リスク保有者の中でどれだけの人が治療を受けているのか(重症化予防に取り組んでいるのか)、逆に受けていないのか」といった点に、特徴のあることが伺えます。企業におかれても、こうしたデータも活用しながら「健康づくり」に積極的に取り組むことが期待されます。

 
 
 
 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

健保組合の「がん医療費」は全体の11.2%と増加傾向、うち乳がん医療費が最多で14%占める―健保連
2017年度、1か月当たりの医療費最高額は血友病A患者の7915万円―健保連
肥満者は複合的な健康リスクを抱えており、血圧・血糖のリスクは高齢になるほど高まる—健保連
2018年1月、健保組合全体で後発品割合は74.1%に—健保連
2016年度は透析医療費が入院・入院外とも大きく増加、単価増が要因の1つ—健保連
統合失調症等・気分障害など、同じ疾患でも入院と入院外とで医療費の構造が全く異なる—健保連
健保組合財政は改善しているが6割が赤字、2割強が協会けんぽ以上の保険料率―2018年度健保連予算
風邪やアレルギー性鼻炎、乳幼児で受診率高く、家族の1人当たり医療費が高い―健保連
医科入院「家族で在院日数が長い」、医科入院外「家族の呼吸系疾患の医療費が高い」—健保連
健保組合加入者の5.47%は血糖、11.90%は肝機能に問題があり医療機関受診が必要―健保連
高齢になるほど血圧リスクが高まり、50歳代以降の被扶養者では脂質リスクが高い—健保連
狭心症では1日当たり医療費の高さが、脳梗塞では入院日数の長さが医療費に影響—健保連
統合失調症や気分障害は男性で、神経症性障害は女性で1人当たり医療費が高い—健保連
医科入院・入院外とも、本人より家族の1人当たり医療費が高い—健保連
健保組合の2017年度予算、全体で7割が赤字予算、赤字総額は3060億円に膨張―健保連
感冒やアレルギー性鼻炎の医療費分析、サラリーマン本人は家族に比べ「受診せず」―健保連
肥満や血圧などの健康リスク保有者、罹患疾病トップは高血圧症―健保連
がん医療費は医療費全体の1割強、うち乳がんの医療費が最多で14.5%占める―健保連調査
肥満者のほうが健康リスクが高く、その内容も複雑―健保連調査
健保組合の生活習慣病対策、特定健診実施率は72.4%、特定保健指導では15.2%にとどまる―2014年度健保連調査
気分障害患者は全体の1.76%、神経症性障害等患者は全体の1.43%―健保連の2014年度調査
特定保健指導に生活習慣病リスク軽減や肝機能改善などの効果があることを実証―健保連
特定保健指導の未受診者は医療費1.5倍、医療費適正化に効果―健保連
医療保険制度の維持に向け、給付と負担の在り方を見直し、医療費適正化を進めよ―健保連