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病床機能報告 DPC特定病院群への昇格・維持のために今やるべきこと

病院収益は上がっているが支出増で赤字、人事院勧告受けた給与増で、自治体病院経営のさらなる「経営悪化」を懸念—全自病・望月会長

2024.9.19.(木)

病院収益は全般としては上昇基調にあるが、それを上回る人件費や物価等の高騰による支出増で赤字となっている(増収減益)—。

そうした中で人事院勧告を踏まえた給与増(モデル例の月収ベースで平均4.4%増)を自治体病院でも行う必要が出てくるが、2024年度診療報酬改定で創設されたベースアップ評価料(2024年度に2.5%増を想定)では、給与増を賄いきれない—。

こうした状況を踏まえれば、自治体病院の経営はさらなる悪化が強く懸念される—。

全国自治体病院協議会の定例記者会見が9月12日に開催され、望月泉会長(八幡平市病院事業管理者兼八幡平市立病院統括院長)ら幹部から、こうした考えが示されました。

9月12日の定例記者会見に臨んだ全自病幹部。左から田中一成参与(静岡県立病院機構理事長)、吉嶺文俊副会長(新潟県立十日町病院長)、松本昌美副会長(奈良県・南和広域医療企業団副企業長)、望月会長、野村幸博副会長(国保旭中央病院長)、小阪真二副会長(島根県立中央病院長)

ベースアップ評価料での想定を上回る人事院勧告、給与増財源の捻出が自治体病院の課題

コロナ感染症が落ち着く中で、病院収益は全般としては上昇基調にあるが、それを上回る人件費や物価等の高騰による支出増で赤字となっているところが多くなっています(増収減益、関連記事はこちらこちら)。

そうした中、人事院が8月8日に、例えば次のような国家公務員の給与増を行うことを勧告しています(人事院のサイトはこちらこちらこちら)。
▽モデル例では、月収で約4.4%の給与改善を行う
▽初任給の大幅引き上げを行う(総合職(大卒)では14.6%増の23万円、一般職(大卒)では12.1%増の22万円)
▽若年層(概ね30代前半)に特に重点を置きつつ、すべての職員を対象に全俸給表を引き上げる

2024年人事院勧告の概要1

2024年人事院勧告の概要2

2024年人事院勧告の概要3



ところで、2024年度診療報酬改定では各種の【ベースアップ評価料】が新設され、そこでは「看護職員、病院薬剤師、その他の医療関係職種の処遇改善(賃上げ)に向けて0.61%の診療報酬プラス改定を行う。2024年度にベースアップ分で2.5%の賃上げ、25年度に同じく2.0%の賃上げを行う」こととされました。また、若手医師給与についても同様の引き上げを行うべく、「入院料等の引き上げ」も行われました。



自治体病院でも、人事院勧告に沿い、4月(2024年4月)に遡って給与改定(給与引き上げ)を行うことになりますが、「人事院勧告(平均4.4%増)」に沿った給与増を行うためには、「ベースアップ評価料等(2024年度に2.5%増)」では不足してしまうことが分かります。

この点について望月会長はじめ、全自病幹部は▼ある県の自治体病院経営状況を見ると「医業収益は増加してきている(もちろん回復していない病院もある)が、光熱費や人件費委託費などのコスト増(支出増)がそれを上回っており、コロナ関連補助金も廃止され、経常赤字となっている▼そこに「人事院勧告を踏まえた給与増」(=コスト増)を行うこととなり、赤字がさらに深刻化する—ことを強く懸念しています。

例えば、▼開設母体である自治体や総務省への応援(補助金、交付金)要請▼医業収益のさらなる増加に向けた努力(紹介患者、救急患者の積極的な受け入れ、各種加算等の積極取得など)▼病院の合併・集約化—などにより、「人事院勧告を踏まえた給与増」の財源を捻出することになりますが、「合併は完了しており、収益増に向けた努力はこれ以上思いつかない」(松本昌美副会長:奈良県・南和広域医療企業団副企業長)との声も出ています。

今後も状況をしっかりと注視していく必要があります。なお、「人事院勧告による想定以上の給与増(=コスト増)」は、「専門人材配置を要件化している診療報酬の算定」にも影響を及ぼす可能性があります(人件費増>点数増となる可能性あり)。



また、望月会長は、2040年頃を念頭においた「新たな地域医療構想」策定論議の中で、「外来における精神医療の充実、総合病院における精神病床の確保」などを要望していく考えも明らかにしています(関連記事はこちら)。

なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、機能再編や経営強化プランを策定する公立病院を支援するサービスメニューも準備しています。

GHCが「先行して新公立病院改革プラン改訂を行った病院」(市立輪島病院:石川県輪島市)を支援したところ、「入院単価の向上」「戦略的な病床機能強化の推進」などが実現されています。「経営強化」「機能強化」を先取りして実現している格好です。

ガイドラインでは「外部アドバイザーの活用も有効である」と明示していますが、コンサルティング会社も玉石混交で「紋切り型の一律の改革プランしかつくれない」ところも少なくありません。この点、GHCでは「膨大なデータとノウハウ」「医療政策に関する正確かつ最新の知識」をベースに「真に地域で求められる公立病院となるための経営強化プラン」策定が可能です。

●GHCのサービス詳細はこちら

従前より「地域単位での医療提供体制見直し」に着目してコンサルティングを行っているGHCマネジャーの岩瀬英一郎は「従来通りの考えにとどまらず、より緻密な分析を行い、戦略をもった検討をベースとして『地域に必要とされる公立病院の姿』を個々の病院の実情に合わせて検討する必要がある」と強調しています。



診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

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