診療報酬は「人材配置の評価」から、「機能に応じたアウトカム評価」へと転換すべき―日病協
2024.9.30.(月)
現在の診療報酬は「人材配置を評価」する仕組みだが、過疎地などでは医療人材の確保ができない。今後は「急性期・回復期・慢性期など、病院の機能に応じたアウカムを評価する」仕組みへと見直していくべき—。
9月27日に開かれた日本病院団体協議会の代表者会議でこうした議論が行われたことが、会議終了後の記者会見で、仲井培雄議長(地域包括ケア推進病棟協会会長)から明らかにされました。
人材配置を評価する診療報酬では、過疎地など人材確保が困難な地域では報酬算定が厳しい
Gem Medで報じているとおり、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会の3病院団体が行った2024年度の「病院経営定期調査」では、次のように「病院経営が極めて厳しい状況(減収・減益)に陥っている」状況が明らかにされました(関連記事はこちら)。
【2022年度→23年度比較】
→医業赤字はわずかに縮小したが、コロナ補助金を含めても経常赤字となり、経常赤字病院が大幅に増加(コロナ補助金を加味しても、赤字病院割合は22年度の22.7%から23年度には51.0%に増加)
▼医業利益:22年度の「マイナス2億978万円」から、23年度には「マイナス2億29万円」となり、赤字幅がわずかに縮小した(949万円・4.5%縮小)
▼経常利益(コロナ補助金などを含む):22年度の「1億3435万円の黒字」から、23年度には「3412万円の赤字」に転落した
→コロナ補助金を除外すると、22年度の「8718万円の赤字」から、23年度には「8391万円の赤字」となり、赤字幅がわずかに縮小した(327万円・3.8%縮小)
▼経常「赤字」病院の割合:22年度の「22.7%」から23年度には「51.0%」で、赤字病院割合が28.3ポイント増加
→コロナ補助金を除外すると、22年度の「63.1%」から23年度には「64.9%」で、赤字病院割合が1.8ポイント増加
【2018年度・19年度・20年度・21年度・22年度・23年度比較】
→医業・経常赤字病院ともに増加を続けている
▼医業「赤字」病院の割合:18年度:63.6%→19年度:65.9%→20年度:86.4%→21年度:68.2%→22年度:88.6%→23年度:86.4%となった
→コロナ感染症の影響がない18年度と23年度を比較すると、赤字病院割合は22.8ポイント増加
▼コロナ補助を含めて経常「赤字」病院の割合:18年度:52.3%→19年度:54.5%→20年度:27.3%→21年度:9.1%→22年度:13.6%→23年度:56.8%となった
→コロナ感染症の影響がない18年度と23年度を比較すると、赤字病院割合は4.5ポイント増加
▼コロナ補助を除いた経常「赤字」病院の割合:18年度:52.3%→19年度:54.5%→20年度:72.7%→21年度:50.0%→22年度:77.3%→23年度:65.9%となった
→コロナ感染症の影響がない18年度と23年度を比較すると、赤字病院割合は13.6ポイント増加
【昨年(2023年)6月→本年(2024年)6月比較】
→医業赤字・経常赤字ともに拡大し、本年(2024年)6月には65.0%の病院が赤字となった
▼医業利益:23年の「1939万円の赤字」から、本年(24年)には「2180万円の赤字」となり、赤字幅が拡大した(241万円・12.4%悪化)
▼経常利益(コロナ補助金等含む):22年の「1379万円の赤字」から、本年(24年)には「1732万円の赤字」となり、赤字幅が拡大した(353万円・25.6%悪化)
→コロナ補助金を除外すると、23年の「1491万円の赤字」から、本年(24年)には「1735万円の赤字」に赤字幅が拡大した(244万円・16.4%悪化)
▼経常「赤字」病院の割合:23年の「61.5%」から、本年(24年)には「65.0%」となり、赤字病院割合が3.5ポイント増加
→コロナ補助金を除外すると、23年の「64.0%」から、本年(24年)には「65.0%」となり、赤字病院割合が1.0ポイント増加
【2019年・20年・21年・22年・23年・24年の「6月」比較】
→コロナ補助金等で診療単価は上昇しているものの、延べ患者数はコロナ禍前の水準に戻らず、医業・経常赤字病院は増加を続けている
▼▽医業「赤字」病院の割合:19年:75.0%→20年:88.6%→21年:79.5%→22年:84.1%→23年:84.1%→24年:81.8%となった
→コロナ禍前の19年と24年を比較すると、赤字病院割合は6.8ポイント増加
▼コロナ補助を含めて経常「赤字」病院の割合:19年:75.0%→20年:88.6%→21年:72.7%→22年:75.0%→23年:79.5%→24年:79.5%となった
→コロナ禍前の19年と24年を比較すると、赤字病院割合は4.5ポイント増加
▼コロナ補助を除いた経常「赤字」病院の割合:19年:75.0%→20年:88.6%→21年:72.7%→22年:75.0%→23年:79.5%→24年:79.5%となった
→コロナ禍前の19年と24年を比較すると、赤字病院割合は4.5ポイント増加
このように「病院経営が悪化」している背景について、3病院団体は、▼2024年度診療報酬改定による医業収益減少▼各種補助金(コロナ関連緊急包括支援事業補助金、水道光熱費補助金)の廃止・減額—による「収益減」と、▼給与費増▼物価高騰—などによる「費用増」があると分析(収益減、支出増により当然「利益」は激減(赤字が激増))。
また、病院団体とは別に福祉医療機構(WAM)が示した「2024年6月調査病院の経営状況(速報値)」でも、2023年度の一般病院(急性期)医業利益率は「2.0%の赤字」、同じく経常利益率は「0.1%の赤字」に悪化していることも紹介しています。
こうした厳しい経営状況について日病協・代表者会議では、「現在の診療報酬は『人材の配置を評価する』ものとなっているが、とりわけ人口減が進んでいる過疎地では医療人材の確保ができず、結果、算定が難しい(=経営が厳しくなる)。今後の診療報酬では『急性期・回復期・慢性期など、病院の機能に応じたアウカムを評価する』ものへと見直していくべき」との声が多数出されたことが仲井議長から報告されました。
医療において「アウトカム」をどう考えるかは非常に難しい問題です。「軽症で副傷病もない、アウトカムの出やすい患者」を選別して入院させる、いわゆるクリームスキミングなどが生じないように留意しながら、病院評価にとってどういったアウトカムが好ましいかを国・医療現場・学識者等が共同して研究を進めることに期待が集まります。
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