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イノベーション評価に逆行する薬価中間年改定は廃止し、イノベーションと患者アクセスを重視した薬価制度とせよ—製薬協・PhRMA・EFPIA

2024.11.18.(月)

イノベーション評価に逆行する薬価中間年改定は廃止し、イノベーションと患者アクセスを重視した薬価制度とすべきである—。

省庁横断的な常設の組織で、革新的医薬品の研究・開発を推進する国家戦略とKPIを策定し、国内外の革新医薬品企業との定期的かつ実りある議論を行う場を設置せよ―。

日本製薬工業協会(JPMA)・米国研究製薬工業協会(PhRMA)・欧州製薬団体連合会(EFPIA)の3団体が11月15日に、こうした「2025年度(令和7年度)薬価中間年改定及び国家戦略に関する意見」を発表しました(製薬協サイトはこちら)。

薬価中間年改定は、2024年度薬価制度改革のポジティブな機運に逆行する

薬価制度の抜本改革が2018年度に行われました(関連記事はこちら(2018年度改革))。

「国民皆保険の持続性確保」と「イノベーションの推進」を両立しながら、「国民負担の軽減」「医療の質の向上」の実現を目指すもので、▼新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象品目の限定(真に医療上必要な医薬品について価格の下支えを行う)▼長期収載品から後発医薬品への置き換えを促進するための新ルール(G1・G2ルール)の創設)▼費用対効果評価に基づく価格調整ルールの導入など―のほか、「毎年度の薬価改定の実施」が主な内容となっています。

多くの医薬品について、医療機関や薬局は「薬価よりも低い価格」で購入(市場実勢価格、取引価格)し、保険者や患者へは公定価格である「薬価」で請求を行います(両者の差が、いわゆる「薬価差」である)。

このため、医療保険財政の健全化などを目的に「市場実勢価格を踏まえて、薬価を引き下げていく」ことが薬価改定の大きな柱の一つとなります。従前は診療報酬改定に合わせて「2年に1度」の薬価改定が行われていましたが、薬価制度抜本改革の中で「より迅速に、薬価を市場実勢価格にマッチさせることで、国民皆保険の維持、国民負担の軽減を図る必要がある」との考えの下、診療報酬改定の中間年度においても必要な薬価の見直しを行う(結果、毎年度に薬価改定を行う)ことになったのです。

現在、中央社会保険医療協議会において2025年度の薬価中間年改定論議を続けられており、例えば▼医薬品安定供給と中間年改定との関係をどう考えるか医薬品のイノベーション評価と中間年改定との関係をどう考えるか—などの論点が示されています(関連記事はこちらこちら)。中間年改定でも「市場実勢価格を踏まえて、薬価を引き下げる」ことが主眼となり、これは2024年度薬価制度改革で重視された「イノベーション評価」(優れた医薬品について高い薬価を設定し、特許期間中は薬価を維持する)や「医薬品安定供給」と相反する可能性が高いためです。

医薬品業界でもこうした点を問題視しており、今般、来年度(2025年度)の薬価中間年改定に向けて、さらに今後の国による医薬品産業政策に向けて、次のような意見を公表しました。

(1)中間年改定の廃止、制度改革の後退をやめる
▽2024薬価制度改革により新薬創出適応外薬解消等促進加算の適用基準が改善され、今後上市される医薬品は「特許期間中に薬価を維持できる」可能性が高まったが、いまだ「革新的医薬品の約半数が毎年の薬価引き下げの対象となり得る」状況が続いている
▽こうした状況にも関わらず、中間年改定で適用されるルールの拡大(新薬創出等加算の累積額控除や市場拡大再算定など)や費用対効果評価の拡大が検討されている
▽こうしたイノベーションを阻害する政策は、2024年度薬価制度改革のポジティブな機運に逆行するものであり、決して行うべきではない
▽むりそ、イノベーションと患者へのアクセスを促す薬価制度の必要性を改めて再確認すべきである

(2)省庁横断的な組織のもと、新たな革新的医薬品産業に関する国家戦略の策定
▽適切な政策とプランがあれば、日本は、ドラッグ・ロスを防ぎ、創薬分野における世界のリーダーシップを取り戻し、経済成長を促進させる国内外の革新的医薬品産業の研究開発投資を呼び込む可能性がある。そのためには「創薬イノベーション・エコシステム」を構成するすべての要素が確実に機能するように、大胆な国家戦略とイノベーションを促進する改革が必要である
▽これを実現するためには、日本政府の強いリーダーシップと産業界との協力が必要であり、来年(2025年)の官民協議会においては省庁横断的な常設の組織のもと、国家戦略とKPIを策定し、また、国内外の革新医薬品企業との定期的かつ実りある議論を行う場を設置することを提言する
▽我々は、共通の目標を達成するため日本政府のパートナーとして貢献していく



製薬3団体では、▼度重なる薬価算定ルールの変更▼特許期間中の新薬の毎年薬価改定—によって、本邦の創薬イノベーション・エコシステム環境が競争上「不利」な立場に置かれていることについて改めて懸念を表明。

一方、2024年度の薬価制度改革を「これまで行われてきた政策のネガティブな流れを変える重要な一歩」として歓迎し、この動きが後退しないようにすべきと強調しています。



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