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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

2016年度改定に向け、7対1の平均在院日数や看護必要度などで現場から意見を聴取―中医協・公聴会

2016.1.22.(金)

 2016年度の次期診療報酬改定で、7対1入院基本料の平均在院日数を短縮すべきか否か―。22日に開かれた中央社会保険医療協議会の公聴会で、この点が改めて議論になりました。

 中医協支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「13日に中医協総会でとりまとめられた『現時点の骨子』には平均在院日数について盛り込まれていないが、今後、改めて議論をしていく」ことを明言。これに対し、意見発表を行った原澤茂氏(済生会川口総合病院院長)は「平均在院日数の短縮は限界に来ている」ことを強調しています。

 また7対1で注目される重症度、医療・看護必要度について、原澤氏は内科系の病院が不利になるとし、具体的な注文をつけています。

1月22日に開催された、「中央社会保険医療協議会 公聴会(第324回 総会)。写真奥に着席しているのが中医協委員と厚生労働省幹部、椅子席最前列に着席しているのが意見発表者。

1月22日に開催された、「中央社会保険医療協議会 公聴会(第324回 総会)。写真奥に着席しているのが中医協委員と厚生労働省幹部、椅子席最前列に着席しているのが意見発表者。

平均在院日数、病院からは「短縮は限界」との意見

 公聴会は、中医協委員と厚生労働省保険局医療課の担当者が地方に赴き、直接、一般市民の意見を聞くもの。中医協は2016年度の次期診療報酬改定に向けて、これまでの意見を整理した『現時点の骨子』を13日に取りまとめました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。厚労省はこれを基に、国民から意見を募っており(パブリックコメント)、この日の公聴会意見と合わせて、今後の中医協審議の参考にする考えです。

 2016年度改定に向けた公聴会は、22日に埼玉県さいたま市で開催され、報道関係者を含め約470名が参加しました。

 まず、冒頭でも触れた平均在院日数について見てみましょう。中医協の幸野委員は、「急性期の機能分化を進めるためには、(1)重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)(2)在宅復帰率(3)平均在院日数―の3点をセットで考えなければいけない。平均在院日数の短縮についても、今後、中医協で議論することになっている」と説明。2016年度の改定での平均在院日数の短縮を求める考えを強調しました(関連記事はこちら)。

 これに対し、意見発表を行った済生会川口総合病院の原澤院長は、「地域特性によって入院期間が長引くことがやむを得ないケースもある。平均在院日数の短縮は限界に来ており、今(次期改定で)短縮するような状況にはない」との意見を述べました。

 今後、中医協では、いわゆる「短冊」に基づいた詰めの議論が集中的に行われますが、7対1の平均在院日数がどのような扱いになるのか注目されます。

看護必要度、A項目・M項目に具体的な注文も

 注目されている看護必要度について、済生会川口総合病院の原澤院長は「日本病院団体協議会の緊急分析では、調査対象11病院のうち4割で重症患者割合が25%を下回った。また、看護必要度の項目見直しは外科には有利だが、内科では厳しく、内科を中心にした7対1病院の経営が困難になることが予想される」と指摘。その上で、▽A項目に追加される救急搬送を3-4日程度にする(厚労省提案では1-2日)▽新設されるM項目に腰椎麻酔下手術・硬膜外麻酔下手術・アブレーション治療・ESD手術(内視鏡的粘膜下層剥離術)後の患者なども加える―ことを検討してほしいと要望しています(関連記事はこちら)。

 このほか原澤院長は、▽在宅復帰率の計算式は現状を維持すべき▽救急医療に関する評価を充実すべき―との考えも述べています(関連記事はこちら)。

健保組合などは「機能分化推進の必要性」を強調

 一方、金久保浩一氏(埼玉機械工業健康保険組合常務理事)は健保組合財政が非常に厳しいことを訴えた上で、「7対1入院基本料の看護必要度項目・重症患者割合などを見直し、患者の状態にあった評価を行うことで、入院医療の機能分化を進める必要がある」と訴えました(関連記事はこちら)。

 また、佐藤道明氏(日本労働組合総連合会埼玉県連合会事務局長)は、「シームレスな医療・介護提供体制を整備するためにも、急性期の機能を明確にするとともに、急性期後の患者を受け入れる回復期・慢性期病床の確保を進める必要がある」との見解を述べました。

 両氏は、医療保険の中で診療報酬を支払う側の立場であり、中医協の支払側と同趣旨の見解を述べた格好です。

 なお佐藤氏は、入院基本料の施設基準となっている「看護師の月平均夜勤72時間要件」について、長時間の夜勤が助長されないよう計算式は現行を維持すべきと強調。さらに「地域包括ケア病棟入院料などにも月平均夜勤72時間要件を拡大してはどうか」などとも提案しています(関連記事はこちら)。

機能強化型の訪問看護、看取り件数の年次変動などを考慮すべき

 このほか22日の公聴会では、次のような意見が示されました。

▽地域包括ケアシステムで重要な役割を果たす「かかりつけ医」の機能を推進するため、診療所の経営基盤である初診料・再診料・在宅患者訪問診療料を引き上げるべき(湯澤俊氏:湯澤医院院長・埼玉県医師会副会長)

▽小児慢性特定疾患(小児がんや慢性腎疾患、慢性呼吸器疾患など)などについて、小児入院医療管理料の対象年齢の上限を引き上げ、20歳以降も安定した治療を受けられるようにすべき(大野更紗氏:患者代表、明治学院大学)(関連記事はこちら

▽機能強化型訪問看護ステーションの要件である「看取り件数」は、年によって変動があるため、この点を考慮した基準としてほしい。在宅での看取りについて訪問看護師が患者・家族に説明を行うことを評価してほしい。小児の在宅患者について、各種サービスの調整(いわばケアマネジメント)を訪問看護師が行っており、その点の評価を充実してほしい。認知症高齢者の早期退院を進めるためにも、認知症の在宅患者への訪問看護を評価してほしい(三塩操氏:埼玉県看護協会川口訪問看護ステーション所長)(関連記事はこちら

▽糖尿病の重症化予防や、過剰・重複投薬の是正を進めるとともに、地域包括ケアシステムの構築に向けたかかりつけの医師・歯科医師・薬剤師の評価を行うべきである(森岡有子氏:川口市健康増進部国民健康保険課課長補佐)(関連記事はこちら

▽かかりつけ薬剤師・薬局について適切に評価すべきである。大規模の門前薬局の中にも「かかりつけ薬剤師・薬局」の機能を持つところがあり、その点は考慮してほしい。ICUなどにおける薬剤師の業務を評価すべきである。調剤時に疑義が生じた場合に、医師と薬剤師で迅速に対応する必要があるが、両者ともに忙しいので、薬剤師の裁量権を一定程度認めてほしい。後発品使用を促進するために、患者・医師の不安が払しょくできるような情報提供などを国が進めるべき(斉藤祐次氏:灰屋薬局・埼玉県薬剤師会副会長)(関連記事はこちら

▽後発医薬品のさらなる使用を促進し、地域間の格差を是正する必要がある(渡部貞一氏:埼玉県中小企業団体中央会専務理事)

▽歯科医師の技術を評価し、歯科医療機関の経営基盤となる再診料を引き上げてほしい。1981年時点を100とすると、物価や賃金は3割程度上昇し、医科医療機関の損益差額は18%向上したが、歯科医療機関の損益差額は67%に減少している(中村勝文氏:川口歯科医師会会長)

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