有床診、2020年4月に6500施設を割り込み、翌年4月に8万5000床を切ってしまう可能性―医療施設動態調査(2020年1月)
2020.3.31.(火)
有床診療所の減少スピードは依然としてペースを落としておらず、既に昨年末にベッド数は9万床を切っているが、今年(2020年)4月末には施設数が6500を割り、来年(2021年)4月にはベッド数が8万5000床を切ってしまう見込みである—。
こうした状況が、厚生労働省が3月30日に公表した医療施設動態調査(2020年1月末概数)から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
有床診の施設数、現行ペースでは2020年4月末に6500を切ってしまう計算
厚労省は、毎月末の病院・診療所の施設数・病床数を「医療施設動態調査」として公表しています(前月末の状況はこちら、前々月末の状況はこちら、さらにその前の月末の状況はこちら)。今年(2020年)1月末の状況を見ると、全国の医療施設は17万9207施設で、前月末から131施設の減少となりました。施設数の大幅減少が続いています。
このうち病院の施設数は、前月末から4施設減少し8281施設となりました。病院種類別に見ると、▼一般病院:7228施設(前月から3施設減少)▼精神科病院:1053施設(同1施設減少)—などという状況です。一般病院のうち、「療養病床を有する病院」は3649施設で前月末から3施設減少、「地域医療支援病院」は619施設で前月末から増減はありません。
地域医療支援病院に関しては、昨夏(2019年8月)に厚労省の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」で承認要件の見直し内容が固められました。現在の(1)紹介患者への医療提供(かかりつけ医への逆紹介も含む)(2)医療機器の共同利用(3)救急医療の提供(4)地域の医療従事者への研修の実施―という4つの役割・機能に加え、新たに「地域(都道府県)の判断で、医師の少ない地域への医師派遣実施などのプラスアルファ要件を追加(厳格化)できる」とするもので、近く医療法改正案が国会に上程される見通しです。
また、2020年度診療報酬改定に向けた中央社会保険医療協議会の論議では、「紹介なし外来患者からの特別負担徴収」を一般病床200床以上の地域医療支援病院に拡大することが決まりました。これらが地域医療支援病院の整備数にどのような影響を及ぼすのか、今後の動きが注目されます(関連記事はこちら)。
診療所に目を移してみると、医科診療所は10万2599施設で、前月末から50施設減少しました。このうち有床診療所は前月末から29設減少し、6552施設となりました。なお、歯科診療所の対前月比77施設減が目立っています(前月も前々月に比べて75施設減となり、施設減が続いている)。
有床診療所の施設数は、2年前(2018年1月末)には7194施設(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2019年1月末)には6836施設(厚労省のサイトはこちら)であったので、2018年1月末から2019年1月末までの1年間で358施設減少、そこから今年(2020年)1月末までの1年間で284施設減少しています。有床診療所の施設数は、2019年1月末以降、次のように推移しています。
▼2019年1月末:6836施設
↓(30施設減)
▼2019年2月末:6806施設
↓(32施設減)
▼2019年3月末:6774施設
↓(44施設減)
▼2019年4月末:6730施設
↓(24施設減)
▼2019年5月末:6706施設
↓(9施設減)
▼2019年6月末:6697施設
↓(16施設減)
▼2019年7月末:6681施設
↓(19施設減)
▼2019年8月末:6662施設
↓(18施設減)
▼2019年9月末:6644施設
↓(25施設減)
▼2019年10月末:6619施設
↓(19施設減)
▼2019年11月末:6600施設
↓(19施設減)
▼2019年12月末:6581施設
↓(29施設減)
▼2020年1月末:6552施設
この1年間は、1か月当たり「24施設弱」のペースで減少が続いています。現在のペースが続くと仮定すれば、今年(2020年)4月末に6500施設を割ってしまう計算です(先月までと同じペース)。
有床診のベッド数、2021年4月末に8万5000床を割ってしまう可能性
医療施設の病床数(ベッド数)を見てみると、全体では、今年(2020年)1月末には161万6320床で、前月末から1014床の大幅減少となりました(前々月→前月も969床の大幅増)。
このうち病院の病床数は152万6638床で、前月末から683床減少。医療法上の病床種類別に見ると、▼一般病床:88万8423床(前月末から36床減少)▼療養病床:30万5865床(同545床減少)▼精神病床:32万6170床(同97床減少)—などとなっています。
また、有床診療所の病床数は前月末から331床減少し、8万9626床となりました。前月(2019年末)から有床診のベッド数が9万床を切っており、さらに減少ペースが加速しています。
2年前(2018年1月末)には9万8111床(厚労省のサイトはこちら)、1年前(2019年1月末)には9万3517床(厚労省のサイトはこちら)であったので、2018年1月末から2019年1月末までの1年間で4594床減少、そこから今年(2020年)1月末までの1年間で3891床減少しています。2019年1月末以降、有床診のベッド数は次のように推移しています。
▼2019年1月末:9万3517床
↓(448床減)
▼2019年2月末:9万3069床
↓(470床減)
▼2019年3月末:9万2599床
↓(669床減)
▼2019年4月末:9万1930床
↓(320床減)
▼2019年5月末:9万1610床
↓(112床減)
▼2019年6月末:9万1498床
↓(212床減)
▼2019年7月末:9万1286床
↓(218床減)
▼2019年8月末:9万1068床
↓(243床減)
▼2019年9月末:9万825床
↓(353床減)
▼2019年10月末:9万472床
↓(224床減)
▼2019年11月末:9万248床
↓(291床減)
▼2019年12月末:8万9957床
↓(331床減)
▼2020年1月末:8万9626床
この1年間では、1か月当たり「324床強」のペースで減少が続いています。現在のペースが継続すると仮定すれば、来年(2021年)4月末には8万5000床を切る計算です(前月末と同じペース)。
厚労省は、2018年度の前回診療報酬(介護報酬との同時改定)で、有床診療所を(1)専門特化型(2)地域包括ケア型―の2類型に分け、後者の『地域包括ケア型』について「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」といった課題に直面していることを重視。有床診経営をサポートするために、要介護者の受け入れを【介護連携加算】で評価するなどの報酬見直しを行いました(関連記事はこちらとこちら)。
しかし、医療施設動態調査を見ると、これらの効果が十分とは言えない状況です。2020年度の次期診療報酬改定に向けては、中央社会保険医療協議会において次のような見直し方針が決定されました(関連記事はこちら)。
▼【有床診療所一般病床初期加算】(急性期病棟からの転棟患者受け入れを評価する)について、点数を150点に引き上げ(50点増)、算定上限日数を「転棟等日から14日」に延長する(7日間延長)
▼【医師配置加算】について、加算1を120点(32点増)、加算2を90点(30点増)に引き上げる
▼【看護配置加算】について、加算1を60点(20点増)、加算2を35点(15点増)に引き上げる
▼【夜間看護配置加算】について、加算1を100点(15点増)、加算2を50点(15点増)に引き上げる
▼【看護補助配置加算】について、加算1を25点(15点増)、加算2を15点(10点増)に引き上げる
▼【有床診療所緩和ケア診療加算】について、250点に引き上げる(100点増)
有床診は、山間地域や島しょ部などでは、地域包括ケアシステムの構成要素としてはもちろん、重要な「入院医療機関」としての機能も非常に重要です(入院病床の25%を有床診のベッドが占める2次医療圏もある)。その経営を下支えするために、2020年度の次期診療報酬改定の効果がどう出るのか、今後の状況を詳しく見ていく必要があります。
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