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特定処遇改善加算、2020年4月から算定するには「4月15日」までに計画書提出を―2019年度介護報酬改定QA(4)

2020.4.2.(木)

厚生労働省は3月30日に、2019年度介護報酬改定に関するQ&AのVol.3(疑義解釈その3)を公表しました。
▼Q&AのVol.1に関する記事はこちら
▼Q&AのVol.2に関する記事はこちら
▼Q&AのVol.3に関する記事はこちら

昨年(2019年)10月の消費税率引き上げ(8%→10%)に合わせて、介護報酬については▼基本単位数の引き上げ(消費税対応改定)▼介護職員等特定処遇改善加算(以下、特定処遇改善加算)の創設―という2つの大きな改定が行われました(関連記事はこちらこちらこちら)。今般のQ&Aでは、Vol.1・Vol.2・Vol.3に続き、後者の特定処遇改善加算について介護現場の疑問に答えています。

介護職員処遇改善加算と特定処遇改善加算、申請様式を一本化

特定処遇改善加算は、昨年(2019年)10月予定の消費税率引き上げに伴う増収分を財源として、従前からの【介護職員処遇改善加算】(I・II・III)を取得している介護サービス事業所・施設(以下、介護事業所等)に対し、主に「勤続10年以上の介護福祉士」をターゲットとして「処遇改善」(給与引き上げ等)を行うための原資を提供する加算です。介護事業所等の判断で「介護福祉士以外の職員」(一般介護職員、介護職員以外)の処遇改善にも柔軟に充てることが可能です。

特定処遇改善加算の概要1(2019年度介護報酬改定)

特定処遇改善加算の概要2(2019年度介護報酬改定)



このため、処遇改善に関して▼従前からの【介護職員処遇改善加算】▼新たな【特定処遇改善加算】―の2つの加算が動くこととなり、介護事業所等の多くは「2つの加算」取得を申請等することになります。ただし、「2つの申請は事務の手間が煩雑なこと」「両加算には重複部分もあること」から、厚労省は▼両加算様式の一本化▼各都道府県国民健康保険団体連合会による「処遇改善加算等の算定実績に関する文書」についての運用統一化―などを実施。例えば様式については、「国の示すものを改変しない」よう指定権者(自治体)に依頼しています(3月5日付の厚労省老健局長通知「介護職員処遇改善加算および介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順および様式例の提示について」、以下3月5日付通知)(関連記事はこちら)。

この申請様式に関連して、今般のQAでは次のような点を明らかにしています。

まず、2020年4月分の【介護職員処遇改善加算】または【特定処遇改善加算】を算定する場合、算定要件である「介護職員処遇改善計画書」「介護職員等特定処遇改善計画書」の提出期限は2020年4月15日までに提出すればよいことが明確にされました。

また、「所在市町村以外の市町村から地域密着型サービス(例えば小規模多機能型居宅介護など)の指定(みなし指定含む)を受けている事業所等」において【介護職員処遇改善加算】または【特定処遇改善加算】を算定する場合、あるいは「保険給付の訪問介護と総合事業の従前相当訪問介護を実施しており、同一事業所とみなした」介護事業所等が【介護職員処遇改善加算】または【特定処遇改善加算】を算定する場合には、「介護職員処遇改善計画書」「介護職員等特定処遇改善計画書」については指定権者毎に記載例(下表)を参考に作成することになります。ただし、この場合でも賃金改善計画は「1つものの」として作成することになります。

「介護職員処遇改善計画書」「介護職員等特定処遇改善計画書」の記載要領1(2019介護報酬改定QA(4)1 200330)



一方、「介護職員処遇改善計画書」「介護職員等特定処遇改善計画書」には「前年度の介護職員の賃金の総額」を記載する必要があります。「処遇改善前の賃金総額」と「処遇改善後の賃金総額」を比較し、必要な処遇改善がなされているのかをチェックする必要があるためです。この点、3月5日付通知では「処遇改善加算を取得する前年の1-12月までの12か月間の介護職員の賃金の総額(処遇改善加算等を取得し実施される賃金改善額および各介護サービス事業者等の独自の賃金改善額を除く)」を記載することを求めていますが、「これにより難い合理的な理由がある場合には、他の適切な方法で前年度の介護職員の賃金総額を推定する」ことを認めています。

今般のQAでは、「これにより難い合理的な理由」や「他の適切な方法」を次のように例示しています。

▽前年10月に事業所を新設したなど、サービス提供期間が12か月に満たない場合
→「サービスを12か月間、提供していた」と仮定した場合の賃金水準を推計する

▽前年(1-12月)途中から事業規模の拡大・縮小を行い、申請年度に変更後の事業規模で実施する予定である等、当該年度の賃金総額として適切な規模に推定する必要がある場合
→(事業規模拡大の場合)比較時点にいない職員について、当該職員と同職で勤務年数等が同等の職員の賃金水準で推計する

▽申請の前年度に職員の退職などで職員数が減少し、基準額となる賃金総額として適切でない場合

また、「複数事業所等について一括して申請を行う」事業所において、当該申請に関係する事業所等に増減があった場合は変更の届け出が必要となりますが、「事業所の増加で職員も増えた場合」における推計方法については、「当該職員と同職で勤務年数等が同等の職員の賃金水準で推計し、前年1-12月の賃金総額を推計する」との考えを示しています。



さらに、賃金総額との記載方法について、次のような考えも明らかにしています。

【賃金改善の見込額】
▽「前年度の賃金の総額等」と「加算の見込額」を比較し計算する
▽「前年度の賃金の総額等」については、原則、加算を取得する前年の1-12月の実績に基づき記載することを想定

【「2019年10月から特定処遇改善加算を算定している場合」の2020年度の当該加算の取り扱い】
(a)特定処遇改善加算の総額について
→2019年10-12月の実績(10月から算定した場合は、10月サービス提供分について12月に国保連から支払われた収入)から12か月分を推計(10月サービス提供分の介護報酬総単位数を用いて計算)する

(b)前年度の介護職員(職員)の賃金の総額
→(a)の「特定処遇改善加算の総額(12か月分を推計した額)と同額」を前年度の介護職員(職員)の賃金の総額に含めて計算する(独自の賃金改善を行っている場合は、当該額を含める)ことなどが想定されるが、個別の状況に応じ判断する

なお、「独自の賃金改善を行っていない」場合には、(a)の「特定処遇改善加算の総額(12か月分を推計した額)と同額」が前年度の介護職員(職員)の賃金の総額に含まれることから、相殺されることになります。



このほかQAでは次のような点を明らかにしています。

▽「介護職員処遇改善計画書」「介護職員等特定処遇改善計画書」の「前年度における介護サービス事業者等の独自の賃金改善額」には、「前年度に介護サービス事業者等が、加算額を上回る賃金改善を行うために実施した賃金改善額」(初めて処遇改善加算または処遇改善交付金を取得した年度以降、新たに行ったもので、改善手法(手当や定期昇給など)は問わない)を記載する

▽「介護職員処遇改善計画書」「介護職員等特定処遇改善計画書」の「(3)賃金改善を行う賃金項目及び方法」のうち、「イ 介護職員処遇改善加算」には初めて介護職員処遇改善加算を取得した年月を、「ロ 介護職員等特定処遇改善加算」には特定処遇改善加算を取得した年月を記載する

「介護職員処遇改善計画書」「介護職員等特定処遇改善計画書」の記載要領1(2019介護報酬改定QA(4)2 200330)



▽「介護職員処遇改善計画書」「介護職員等特定処遇改善計画書」の「平均賃金改善額」の「iii 前年度の1月当たりの常勤換算職員数」について、原則として計画書提出の前月の常勤換算方法で算出することになるが、前月の実績を用いることが適当でない(職員数の変動があったなど)ばあいには、「過去3か月の平均値」「前々月の実績」など他の期間の実績を用いることが可能である

2020年度から処遇改善の取り組み「見える化」が特定処遇改善加算の要件に

また、【特定処遇改善加算】の要件そのものなどについて、次のようなQAも示されました。

▽2020年度から、【特定処遇改善加算】に関わる改善への取り組みの「見える化」が算定要件に盛り込まれる(介護サービス情報公表システムの活用や、自ホームページへの記載など)。介護サービス情報公表システムを活用して「見える化」要件を満たす場合には、「介護職員処遇改善計画書」「介護職員等特定処遇改善計画書」の「掲載予定」欄にチェックを行う

「介護職員処遇改善計画書」「介護職員等特定処遇改善計画書」の記載要領1(2019介護報酬改定QA(4)3 200330)



QA(Vol.2)で「入居継続支援加算等を算定できない状況が常態化し、3か月以上継続した場合に変更の届け出(加算I→加算II)を行う」とされているとおり、例えば、特定施設入居者生活介護等において3月まで入居継続支援加算等を算定していたが、喀痰吸引を必要とする利用者の割合についての要件(利用者全体の15%以上)などを満たせなくなり4・5・6月と算定することができず、7月も入居継続支援加算等を算定できないとわかった場合には、7月から特定処遇改善加算の算定区分の変更を行う

QA(Vol.2)で「介護老人保健施設と短期入所療養介護等を一体的に行い、同一就業規則等が適用されるなど労務管理が同一と考えられる場合は、月額8万円の改善・年収440万円となる者の設定にあたり、同一事業所と見做せる」とされているが、「介護老人保健施設」と「通所リハビリテーション」とを併設している場合には、同様に扱うことはできず、それぞれで月額8万円の改善・年収440万円となる者を設定する必要がある。

▽「月額8万円以上・年額440万円以上の対象として予定し、賃金改善を行っていた経験・技能のある介護職員」が年度の途中で退職した場合、指定権者(自治体)に合理的な理由を説明(「介護職員処遇改善実績報告書」「介護職員等特定処遇改善実績報告書」に記載)することにより「ルールを満たした」と扱うことが可能である

▽3月5日付通知では、「9処遇改善加算等の取得要件の周知・確認等について」で取得事業所に労働基準法等の遵守を求めている。訪問介護員の移動時間は「労働時間に該当」する

ケアマネの退院・退所加算、ICT活用した病院職員との面談でも算定可能

また3月30日には「居宅介護支援の退院・退所加算に関するQA」も示されており、そこでは、2020年度診療報酬改定において「情報通信機器を用いたカンファレンス実施」が推進された点に関連し、「利用者・家族の同意を得た上で、ICTを活用して病院等の職員と面談した場合、【退院・退所加算】(医療機関や介護保険施設等を退院・退所し、居宅介護保険サービス等を利用する場合に、退院・退所にあたってケアマネジャーが医療機関等の職員と面談を行い、利用者に関する必要な情報を得た上でケアプランを作成し、居宅サービス等の利用に関する調整を行うことを評価)を算定してよい」ことが明確にされています。

居宅介護支援(ケアマネジメント)における退院・退所加算の概要(2018年度介護報酬改定)



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