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介護サービスの変更届の簡素化、様式の標準化・統一化などを2020年度以降も推進―介護文書負担軽減専門委員会

2020.4.1.(水)

介護保険事務(指定申請・報酬請求・指導監査)における文書について簡素化・標準化を2019年度に一定程度進めたが、2020年度以降もさらに進めていく。例えば、「変更届をどこまで必要とするのか」「1事業所で複数サービスを提供する場合の重複をどの程度軽減できるのか」「指導の頻度をどの程度にすることで介護事業所・施設の負担が軽減されるのか」などを研究し、必要な対応を2020年度以降、順次進めていく―。

3月30日に開催された、社会保障審議会・介護保険部会の「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」(以下、専門委員会)でこういった議論が行われました。

3月30日に開催された、「第6回 社会保障審議会 介護保険部会 介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」

すでに介護職員処遇改善加算と特定処遇改善加算の申請様式一体化などを進めている

2022年度から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上に到達することから、今後、急速に医療・介護ニーズが増加していくことが確実です。その後、2040年度にかけては高齢者の増加ペースそのものは鈍化するものの、支え手となる現役世代人口が急速に減少していきます。

「少なくなる支え手」で「多くの高齢者」を支えなければならず、公的医療保険・介護保険制度の財政基盤はもちろん、提供体制そのものが非常に脆くなっていくのです。

とりわけ少子高齢化の進行は介護提供基盤に大きな影響を与えることから、「介護人材の確保・定着」が極めて重大な政策課題となっており、例えば、2019年10月の消費税率引き上げに合わせて、新たな【特定処遇改善加算】を制定するなどしています。

さらに2021年度からの第8期介護保険事業(支援)計画策定に向けた議論を進めてきた介護保険部会では、「介護事業所・施設からは提出文書作成の負担が大きく、これを軽減してほしい」との強い意見を受けて専門委員会を設置。そこでは、下図のように段階的に文書の簡素化・標準化・ICT化を図っていく方針を明確にしました(専門委員会中間報告)(関連記事はこちら)。

介護文書負担軽減に向けたスケジュール(介護文書負担軽減専門委員会1 200330)



例えば、2019年度中に実現した簡素化・標準化について見てみると、例えば次のような項目があげられます(厚労省のサイトはこちら(専門委員会資料))。委員からは迅速な簡素化・標準化を実施した厚生労働省を称賛する声が相次いでいます。

【指定申請】の場面(報酬請求と重複すル項目多数)
▽提出時のルールによる手間の簡素化(押印、原本証明、提出方法(持参・郵送等)を見直す)
▽様式、添付書類そのものの簡素化(勤務表の様式、人員配置に関する添付書類・その他、指定申請と報酬請求で重複する文書を見直す)(厚労省のサイトはこちら(専門委員会資料)
▽介護医療院への移行にかかる文書の簡素化(前倒しで実施を実現)

【報酬請求】の場面
▽従前からの介護職員処遇改善加算と新設した特定処遇改善加算との申請様式を一本化(厚労省のサイトはこちら(専門委員会資料)

【指導監査】の場面
▽実地指導に際し提出する文書の簡素化(重複して求める文書、既提出文書の再提出の見直し)



このうち、処遇改善加算に関する申請様式については、「原則として変更を加えない」こととなっています。従前より各種様式に関しては、自治体(保険者)が「この項目も届け出てもらったほうがよいであろう」と考え、独自に改変等を行うことが多々あります。この結果、自治体ごとに様式が異なり、事業所・施設側の負担が極めて大きくなっていたのです。今後も、こうした「様式の標準化」が各項目で進むことで、事業所・施設側の負担が軽減されることに期待が集まります。

2020年度からの介護職員処遇改善加算と特定処遇改善加算の申請様式を一本化した(介護文書負担軽減専門委員会2 200330)

ケア記録削減など、介護スタッフの負担軽減策についても検討を求める声

さらに、2020-21年度における介護文書負担軽減方策の策定に向けて、3つの研究事業(▼簡素化・標準化に関する更なる取り組み(変更、更新、併設事業所等)▼実地指導等の事務の効率化方策▼「介護サービス情報公表システム」を活用した文書負担軽減―)が走っています。専門委員会では、この研究成果を踏まえた議論を展開していく方針を固めています。議論が本格化する時期は未定ですが、研究事業の動向を見て今秋(2020年秋)頃になるのではないかと予想されます。

2020年度の介護文書負担軽減に向けて3つの研究事業が走っている(介護文書負担軽減専門委員会3 200330)



簡素化・標準化に関しては、例えば「変更届」について、「どこまでの項目について変更届が必要であるのか」「どの程度の変更があった場合に変更届を必要とすべきか(例えば人員配置基準内の変更であれば届出は不要とすることが考えられないか)」などを研究します。

変更届の負担軽減に取り組む(介護文書負担軽減専門委員会4 200330)



また、自治体によって更新申請時に求める文書の量に大きなバラつきがあります。これを「少ない自治体に合わせていくことはできないか」を研究していきます。

更新申請時の提出書類軽減に取り組む(介護文書負担軽減専門委員会5 200330)



さらに、例えば「訪問介護と介護予防訪問介護」や「特別養護老人ホームと●●市の総合事業」などの二枚看板を掲げる事業所・施設では、それぞれについて書類等提出等が求められますが、「重複部分を一本化できないか」「更新申請のずれを調整できないか」などの研究が進められます。

複数サービスを提供する介護事業所・施設の負担軽減等に取り組む(介護文書負担軽減専門委員会6 200330)



こうした、さらなる簡素化・標準化の方向に専門委員会委員も大きな期待を寄せるとともに、「簡素化・標準化が負担軽減にどう結びついているのか」の効果検証を求める声も数多く出ています。清原慶子委員(ルーテル学院大学客員教授)らは「簡素化・標準化で介護現場の負担が軽減し、本来の介護業務に充てる時間が増え、介護サービスの質が向上すること」が最終目的であるとの考えを述べています。もっとも、現在は「まず事務負担の軽減を進めよう」という趣旨での検討が進んでおり、「負担軽減そのものが大きな成果である」と考えることも可能でしょう。

関連して、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)や山際淳委員(民間介護事業推進委員会代表委員)、久保祐子委員(日本看護協会医療政策部在宅看護課長)からは、「専門委員会の射程には入っておらず、別に検討の場になるのかもしれないが、事務負担軽減にとどめず、介護スタッフの負担軽減策(例えばケア記録の削減など)も検討すべきである」との声が出ています。この点について厚労省老健局介護保険計画課の山口高志課長は「要望を踏まえて検討していかなければならないと考えている。その際には介護報酬を議論する社会保障審議会・介護給付費分科会との関係も整理する必要があろう」との考えを示しています。

指導監査、「加算等が求める良いサービスが提供できているか」との視点が重要

一方、指導監査について「開催頻度をどうすべきか」という研究が進んでいます。この点、「開催頻度を少なくする(指導等の間隔を広げる)ことで、介護事業所・施設の負担を軽減できるのではないか」という意見がありますが、他方で「指導等の間隔を広げれば一見負担軽減になるように思えるが、指導監査の濃度を上げることが求められ、結果として準備すべき書類等が増え、かえって負担増になる可能性もある」との意見も出ています。

この点については、濵田和則委員(日本介護支援専門員協会副会長)から、「指導監査には適正なサービス確保の意味がある。実際の個別指導については頻度を少なくし、中間的に書面での指導監査を行ってはどうか」との技術的提案も出ています。

なお、江澤委員や石川貴美子委員(秦野市福祉部高齢介護課参事(兼高齢者支援担当課長))らは、「ともすれば『加算等取得にかかる人員配置等の基準を満たしているか』という点のみを指導等しがちであるが、人員配置等の基準は『良いサービスを提供するためには、これだけの人員等を配置しなければならない』との視点で設定されたものであり、それだけではいけない。『加算等が求める良いサービスが提供できているか』という視点での指導監査が重要である」旨の見解を述べました。非常に重要な指摘であり、今後、負担軽減とは別に「指導監査の在り方」などを検討する必要性も出てくることでしょう。



また文書負担軽減のために「ICTの活用」(web入力や電子申請、データの共有化・文書保管の電子化)などの研究も行われ、厚労省は「2020年度の中に方針を定める」考えを示しています。


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