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かかりつけ医と専門医の連携による認知症「予防」、医療・介護スタッフの認知症対応力向上など目指せ―介護保険部会(1)

2019.6.21.(金)

 新たな「認知症施策推進大綱」が関係閣僚会議で取りまとめられ、そこでは「認知症患者との共生」と「認知症の予防(発症を遅らせる)」とを車の両輪で進めていく方針が打ち出された。予防は長期的視点に立って、例えば「かかりつけ医と認知症サポート医との連携推進」「通いの場の参加率向上」などに取り組む必要がある。また、医療・介護スタッフの認知症対応力向上を目指し、研修などに参加しやすい環境を整えていく必要がある―。

 6月20日に開催された社会保障審議会・介護保険部会で、こういった議論が行われました。

6月20日に開催された、「第78回 社会保障審議会 介護保険部会」

6月20日に開催された、「第78回 社会保障審議会 介護保険部会」

 

認知症施策推進大綱、「共生」と「予防」を目指す

 「認知症施策推進関係閣僚会議」が6月18日に、新オレンジプランを大改革した、新たな「認知症施策推進大綱」(以下、大綱)を取りまとめました。

 大綱の詳細は別途お伝えしますが、▼認知症の人との共生▼認知症の予防(発症を遅らせる)―を目指し、(1)普及啓発・本人発信支援(2)予防(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援(4)認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援(5)研究開発・産業促進・国際展開―という5つの柱を打ち立てました。
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 このうち(1)の普及啓発等では、認知症への国民の理解を深めるために「認知症サポーター」養成や子供への教育を推進することや、患者・家族の「相談先」の周知、認知症患者自身がまとめた「認知症とともに生きる希望宣言」を展開していく考えです。

 また(2)の「予防」は、前述のとおり「認知症の発症を遅らせる」ことを目指すもので、▼認知症予防に資する可能性のある活動の推進▼予防に関するエビデンスの収集▼民間商品・サービスの評価・ 認証の仕組みの検討―などを行います。

 この点、議論の過程では「2024年には、70-74歳の認知症有病率を現在の3.6%から3.4%に、また75-79歳では同じく10.4%から9.8%にまで低下させる」などの数値目標(KPI)を導入してはどうかとの提案が行われましたが(関連記事はこちら)、認知症当事者サイドから「頑張って予防に取り組んでいながら認知症になった人が、あたかも落第者と扱われ自信をなくしてしまわないか」との声が相次いだことを受け、KPIとしては盛り込まず、参考として「70歳代での認知症発症を今後10年間で1歳遅らせることを目指す」旨の記述にとどめています。

また(3)の医療・介護等サービスに関しては、▼早期発見・早期対応、医療体制の整備▼医療従事者等の認知症対応力向上の促進▼医療・介護の手法の普及・開発▼介護サービス基盤整備・介護人材確保▼介護従事者の認知症対応力向上の促進▼認知症の人の介護者の負担軽減―などを推し進めます。

さらに(4)の社会参加支援等では▼地域支援体制の強化▼認知症に関する取組を実施している企業等の認証制度や表彰▼商品・サービス開発の推進▼成年後見制度の利用促進の推進―などを、(5)の研究開発に関しては「認知症の予防法やケアに関する技術・サービス・機器等の検証、評価指標の確立」などに取り組みます。

認知症予防の可能性ある「通いの場」、専門家関与などでマンネリ化防ぎ、参加率向上を

6月20日の介護保険部会では、大綱を受けて幅広い意見交換が行われました。

前述のとおり、大綱では、KPI設定こそ避けたものの、「予防」(発症を遅らせる)を最重要施策の1つに据えています。ただし、認知症の発症機構が必ずしも明らかとなっていない中では、予防の可能性のある取り組みなどを「手探り」で進めていく必要があり、あわせて(5)の「研究」等も極めて重要となってきます。

この「予防」について、委員からはさまざまな意見が出ています。東憲太郎委員(全国老人保健施設協会)は「予防で有効と考えられるのは『かかりつけ医と認知症サポート医との連携』であろう。高齢者の多くは何らかの傷病をかかえ、日常的に医療機関を受診する。そこで、内科医師だけでなく、整形外科医やリハビリテーション科医、眼科医、さらには歯科医が、認知症に関する研修を積極的に受講するよう、日本医師会や日本歯科医師会に期待したい」とコメント。
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また、齋藤訓子委員(日本看護協会副会長)は、「認知症のリスク因子の1つに『難聴』があるという。しかし独居高齢者では聴力の衰えに気づきにくい。例えば『通いの場』で高齢者とコミュニケーションをとる中で、『この方は聴力が衰えてきているのでは』と感じた際には、検査などに結びつける仕組みなどを検討してはどうか」と提案しています。
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 また予防に資する可能性のある取り組みとして、「通いの場」が重視されています。認知症患者を含む高齢者が身近な場に通い、多くの人と交流することが、認知症発症を遅らせることに効果的なのではないかと期待されるのです。大綱では「通いの場への参加率を8%程度に高める」ことが施策目標の1つに据えられており、市町村の創意工夫が待たれます。
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この点、先進的な取り組みを行い、現時点で「通いの場」への参加率5%を実現している高松市の首長(市長)でもある大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長)からは、▼スポーツ▼農業体験―など、施策の垣根を越えた取り組みを行うことを提案。また江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「通いの場に、折に触れて認知症サポート医などの専門家が出向き、アドバイスを行う」ことも重要であろうと提案しています。また先般成立した改正健康保険法・介護保険法(医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律)では、介護予防事業と保健事業とを一体的に実施することを可能としており、これも「通いの場」の参加率向上にドライブをかける重要な仕掛けの1つとなるでしょう(関連記事はこちらこちらこちら)。マンネリ化を防ぐことで、高齢者の継続参加が期待され、その口コミなどにより新たな参加者が増え、さらに専門家のアドバイスを受けて改善をしていくことでさらなる参加の継続を促す、といった好循環が生まれることが望まれます。

 
なお、認知症の人と家族の会常任理事の花俣ふみ代委員は、「大綱では共生と予防を車の両輪に位置付けているが、まず『共生』を最優先事項として進める必要がある」と強調。前述のように「予防に取り組んでも認知症になってしまった人」「既に認知症症状のある人」へが、まず地域社会で従前どおり暮らせる社会の構築、つまり「共生」施策をより力強く進める必要があるとの考えです。厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室の田中規倫室長も、「予防(発症を遅らせる)施策は、認知症患者との『共生』基盤として進めることが必要となる」とコメントしています。

「予防」については、長期的な視点で取り組んでいくことが必要でしょう。

医療・介護スタッフの認知症対応力向上が不可欠

 また、医療・介護サービスに関しては、医療スタッフ・介護スタッフの認知症対応力の向上、つまりスキルアップが極めて重要となるという指摘も数多くでました。

 この点、大綱では「研修受講の促進」などを打ち出していますが、介護保険サービス事業所(在宅サービス、地域密着型サービス、施設サービスのいずれも)の多くは小規模であり、スタッフが研修受講をすることは現実問題として「困難」です。このため齋藤委員は「受講しやすい」環境の整備が重要と指摘。あわせて「最新の知識・技術を持つ病院の看護師が、介護事業所などに出向き、知識・技術をスタッフに伝授する」モデル事業を実施し、介護事業所などから高評価を得ていることも紹介しました。「研修に来てもらう」だけでなく、「研修者が事業所に出向く」形も検討していくことが重要でしょう。

この点、将来的には、介護事業所の集約等による「大規模化」なども重要な視点になってきます。

 
なお江澤委員は、認知症初期集中支援チームについて、「そもそもは『臨床診断をまだ受けておらず、適切な医療・介護サービスが受けられていない』人がサポート対象であったはずだが、実態は『臨床診断を受けている、いわゆる困難事例』が主なサポート対象となっているようだ。サポート対象を改めて検討しなおす必要があるのではないか」との考えを述べています。
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認知症初期集中支援チームは、今年(2019年)3月末時点で、1739、つまりほぼすべての市町村に設置されるており、今後は「活動内容」に焦点を合わせた改善・質の向上が課題になってきていると言えるでしょう。

 
介護保険部会では、2021年度からの「第8期介護保険事業(支援)計画」策定(必要であれば介護保険法改正も実施)に向けた検討を進めており、計画の中に「大綱を進めるための認知症対策」をどのように盛り込むのか、今後の議論に要注目です。

 

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