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介護医療院の整備に向け「小規模介護保険者の集約化」や「移行定着支援加算の期限延長」などが必要―日慢協・武久会長

2019.2.15.(金)

 増加する高齢者の医療・介護ニーズ、とくに「看取り」ニーズに十分に対応するためには、医療・看護職が常勤している【介護医療院】の整備が重要となるが、2018年末時点で、【介護医療院】は113施設・7414床にとどまっている。さらなる整備に向けて、「小規模な介護保険者の集約化」や「移行定着支援加算の延長」などを行ってはどうか―。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、2月14日に開催した定例記者会見でこのような考えを述べました。

2月14日に定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長

2月14日に定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長

 

介護費の上昇を吸収できるよう、介護保険者は「人口規模20万人程度」とせよ

 【介護医療院】は、▼医療▼介護▼住まい―の3機能を併せ持つ新たな介護保険施設として創設されました。設置根拠が消失する「介護療養病床」(介護療養型医療施設)や「病院全体で4対1看護配置などを満たさない医療療養病床」の有力な転換先になると見られているほか、「医療職・看護職が常駐しており、看取りニーズに十分応えられる」施設としても注目されています。

 しかし、厚生労働省の発表によれば、【介護医療院】は2018年末時点で113施設・7414床にとどまっており、「転換が順調に進んでいる」とは言い難い状況です(厚労省のサイトはこちら)。
介護医療院の開設状況(2018年12月末)1 190201
介護医療院の開設状況(2018年12月末)2 190201
介護医療院の開設状況(2018年12月末)3 190201
 
思うように転換が進まない背景には、▼介護療養等の設置が2024年3月まで認められており(【介護医療院】等への転換・準備期間とされている)、様子見をしている▼準備(設備整備やスタッフの意見集約など)中である―など、さまざまな理由があると考えられます。そうした中で武久会長は、かねてより「介護保険料の高騰をおそれ、自治体がストップをかけているケースがある」と指摘しています。

例えば、医療療養が介護医療院へ転換した場合、医療療養へは医療保険から費用が支払われていたものが、介護医療院になった場合、介護保険から費用が支払われることになります。つまり介護費用が増加するわけで、それは「介護保険料の上昇」を意味します。特に、小規模な町村では、数十床の医療療養が介護療養へ転換するだけでも、介護保険料が大幅に跳ね上がる可能性があります。この場合、住民(被保険者)からの反発も予想され、武久会長は「自治体側の気持ちも理解できなくはない」とコメントしています。

ただし、介護医療院の整備は、高齢化が進行する中では極めて重要と言え、武久会長は新たに「介護保険財政を安定させるために、小規模な市町村(特に町村)は『人口20万人程度の規模に集約』して介護保険の保険者としてはどうか」と提案しました。大規模化によって費用変動を吸収させる狙いです。武久会長は、「介護保険制度のスタート(2000年)から20年近くが経ち、大きな制度改革が必要な時期に来ている」とも見通します。近く始まる社会保障審議会・介護保険部会の「制度改革」論議へも影響する可能性がありそうです(関連記事はこちら)。

  
また武久会長は、「空床の目立つ一般病床」について、介護医療院への転換を早期に認めてはどうかとも提案。空床を埋めるために、不要な在院日数延長がなされているとすれば、介護医療院への転換を認めたほうが、患者のQOLも向上し、医療・介護全体の費用も適正化すると考えられるためです。

移行定着支援加算、2023年3月末まで算定期限を延長してはどうか

 さらに、【移行定着支援加算】の算定期限を2年程度延長することも提案しました。2018年度介護報酬改定では、介護療養から介護医療院への転換を促すため、「介護療養や医療療養などから転換した介護医療院では、最初に転換した日から起算して1年間に限り、【移行定着支援加算】(1日につき93単位)を算定できる」こととしました。ただし、早期の転換を促すために、この加算の算定は「2021年3月末まで」とされています。

この算定期限について武久会長は「転換が十分に進んでいない状況に鑑みて、2年程度(つまり2023年3月末まで)延長してはどうか」との考えを示したものです。ただし、算定期限延長となれば「介護療養等の設置期限ギリギリまで動かないでおこう」と考える管理者も出てくることも考えられ、十分な検討が必要でしょう。

 
 
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