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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

2024年の認知症有病率、70歳代前半で3.4%へ、後半で9.8%への低下目指す―認知症有識者会議

2019.5.22.(水)

 「70歳代での認知症発症を今後10年間で1歳遅らせる」こととし、2024年には、70-74歳の認知症有病率を現在の3.6%から3.4%に、また75-79歳では同じく10.4%から9.8%にまで低下させる政府目標を立ててはどうか―。

5月16日に開催された「認知症施策推進のための有識者会議」で、こういった目標案が提示されました。

近く取りまとめられる「認知症施策大綱」、「予防」と「共生」が重要な柱に

 高齢化の進展に伴い、認知症患者が増加していきます。長期の縦断的な認知症有病率調査を行っている久山町(福岡県)のデータ(各年齢層の認知症有病率が2012年以降一定と仮定した場合には認知症有病率19%、2012年以降も糖尿病有病率の増加で上昇すると仮定した場合には20.6%)をもとに、2012年における認知症の有病者数462万人(筑波大学の研究)から推計すると、2025年の認知症有病者数は「約700万人」となります。これは「65歳以上高齢者の約5人に1人が認知症」ということを意味します。
認知症施策推進有識者会議2 190516
 
 認知症高齢者の増加は、本人のQOLを低下させるとともに、公的介護保険サービスのニーズ増加(介護費増につながる)、家族の負担増加(公的介護保険だけではカバーしきれない)、介護離職の増加など、さまざまな弊害を生みます。

 このため政府は「認知症施策推進関係閣僚会議」を立ち上げ、本年(2019年)5・6月を目途に、オレンジプランを大改革した、新たな「認知症施策大綱」を取りまとめることとしています。大綱では「予防」と「共生」を大きな柱に据え、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる「2025年」に向けて、▼啓発・教育▼予防▼ケア・医療▼若年性認知症、就労・社会参加支援▼認知症共生型の生活環境づくり▼研究開発、産業促進、国際協力▼認知症の人やその家族の視点の重視、意思決定支援・権利擁護、介護者への支援―といった施策を盛り込むことになります。
認知症施策推進有識者会議4 190516
部局長会議(老健局)3 190118
 
 認知症がなぜ生じるのか、その発症機構はすべて解明されているとは言えませんが、これまでの研究で、▼教育歴▼肥満▼高血圧▼難聴▼喫煙▼うつ▼運動不足▼社会的孤立▼糖尿病―などの要素が関連していることが分かってきています。つまり、認知症の「予防」には、これらの要素への対策(例えば糖尿病や高血圧の予防、重度化防止や、運動不足の解消、地域における「孤立」防止など)が重要であることが分かります。
認知症施策推進有識者会議1 190516
 
 さらに政府は5月16日の「認知症施策推進のための有識者会議」(閣僚会議の下部組織)に、「認知症予防」に関する目標値案を提示しました。

そこでは、「70歳代での認知症発症を10年間で1歳遅らせる」こととしており、これにより有病率が低下し、「10年間で相対的に有病率が約1割低下し、6年間で相対的に6%低下する」ことになります。具体的には、「70-74歳の有病率を2018年の3.6%から、2024年には3.4%に低下させ、75-79歳の有病率を同じく10.4%から9.8%に低下させる」という目標です。
認知症施策推進有識者会議3 190516
 
この目標を達成するための施策としては、▼認知症予防に資する可能性のある活動の推進(例えば、「通いの場」「運動の場」「学びの場」などを自治体が積極的に設置し、高齢者の参加を促す)▼認知症予防に関するエビデンスの収集推進▼認知症予防に資する民間の商品やサービスの評価・認証等の仕組みの検討―などを実施。そこでは、「通いの場」への参加率を2020年度末までに6%とすることや、「認知症予防に関する事例集」「認知症予防に関する取組の実践に向けたガイドライン」の作成などの目標も定められます。併せて、上述したような糖尿病や高血圧の予防・重症化予防などの取り組みを積極的に進めていくことになります。

 
さらに、「予防」以外の施策については、次のような方針が固まりつつあります。

▽普及啓発・本人発信支援に関して、例えば▼企業・職域型の認知症サポーターを2020年度までに1200万人養成する▼医療・介護従事者に対する「認知症に関する各種養成研修への意思決定支援に関する研修プログラム」導入率を100%とする▼自治体における「事前の本人の意思表明確認」の実施率を50%とする▼厚労省ホームページに「全市町村の認知症に関する相談窓口」へのリンクを掲載する▼市町村におけるケアパス作成率を100%とする―

▽医療・ケア・介護サービス・介護者への支援として、例えば▼認知症地域支援推進員を全市町村に配置(地域包括支援センター単位で1人以上)する▼認知症初期集中支援チームの先進的な活動事例集を作成する▼認知症初期集中支援チームにおける訪問実人数を年間4万件、医療介護サービスにつながった人の割合を65%とする▼認知症疾患医療センター を全国で500か所(2次医療圏に1か所以上)整備する▼認知症対応力向上のための研修修了者を、かかりつけ医9万人・認知症サポート医1万6000人・歯科医師4万人・薬剤師6万人・病院看護師等4万人とする▼認知症対応のリハビリテーションプログラムを開発する▼BPSD(粗暴行動などの周辺症状)予防に関するガイドラインや指針を作成し、周知する▼認知症カフェを全市町村に普及する▼家族・介護者を対象としたオンライン教育プログラムを開発する―

▽研究開発・産業促進・国際展開に関して、例えば▼認知症のバイオマーカーを開発・確立する▼認知機能低下抑制のための技術・サービス・機器等の評価指標を確立する▼日本発の認知症の進行を抑制する「疾患修飾薬」候補の治験を開始する▼認知症の予防・治療法開発に資するデータベースを構築し、実用化する―

 
 
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