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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

2021-23年度の介護保険事業(支援)計画、地域により増減動向が異なる介護ニーズ踏まえよ―社保審・介護保険部会

2020.2.21.(金)

2021-23年度を対象期間とする次期介護保険事業(支援)計画(第8期計画)では、(1)2025・2040年を見据えたサービス基盤、人的基盤の整備(2)地域共生社会の実現(3)介護予防・健康づくり施策の充実・推進(4)有料老人ホームとサービス付き高齢者住宅に係る自治体間の情報連携の強化(5)認知症施策の推進(6)介護人材確保および業務効率化―の6点がポイントとなる―。

2月21日に開催された社会保障審議会・介護保険部会で、こういった議論が行われました。厚労省は、介護保険部会の意見を踏まえて「基本指針」案を作成し、再度、介護保険部会に示したうえで、6月開催予定の全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議において、自治体関係者にその内容を周知したい考えです。

2月21日に開催された、「第90回 社会保障審議会 介護保険部会」

介護保険部会の意見を踏まえ、2021-23年度の第8期介護保険事業(支援)計画を作成

介護保険制度は、3年を1期とした介護保険事業(支援)計画に基づいて運営されます(市町村が介護保険事業計画を、都道府県が介護保険事業支援計画を作成)。地域におけるサービス整備量を計画に定め、それを賄うための保険料設定し、3年ごとに見直すイメージです。

2021年度から新たに「第8期計画」(2021-23年度計画)がスタートするために、介護保険部会で制度改革内容等の議論を続け、昨年末(2019年12月27日)に意見取りまとめが行われました。

ところで介護保険事業(支援)計画作成の流れは、▼厚生労働大臣がその拠り所となる「基本指針」を策定し、告示する → ▼基本指針に沿って、市町村が介護保険事業計画を、都道府県が介護保険事業支援計画を作成する―というものです。2月21日の介護保険部会では、昨年末(2019年末)の部会意見を踏まえ、厚生労働省から「基本指針策定に向けた考え方」が示され、これに対する質疑を行いました。なお、第6期計画まで、基本指針策定は厚労省内部でのみ行われていましたが、第7期計画から「介護保険部会の意見を基本指針に反映させる」運用が図られています。



2021年度から23年度を対象とする第8期計画のポイントは、次の6点について介護保険事業(支援)計画における記載充実を求める点です。上述のとおり、「昨年末(2019年末)の部会意見」で制度改革の柱とされたものです。

(1)2025・2040年を見据えたサービス基盤、人的基盤の整備
(2)地域共生社会の実現
(3)介護予防・健康づくり施策の充実・推進(地域支援事業等の効果的な実施)
(4)有料老人ホームとサービス付き高齢者住宅に係る都道府県・市町村間の情報連携の強化
(5)認知症施策推進大綱等を踏まえた認知症施策の推進
(6)地域包括ケアシステムを支える介護人材確保及び業務効率化の取組の強化

地域によって全く異なる「介護ニーズの増加・減少動向」を踏まえた計画再生を

このうち(1)では、地域ごとに異なる「介護ニーズの動態」をしっかりと踏まえてサービスの見込み量を設定することが重要です。現在の第7期計画までは「高齢化の進展により、介護ニーズは増大を続ける」という前提でサービス見込み量を推計していました。しかし、▼今後も介護ニーズが増大し続ける地域(主に都市部)▼今後は介護ニーズが減少していく地域(高齢者人口そのものが減少する過疎地等)▼しばらく介護ニーズが増大するが、ある時期から減少に転じる地域―という具合に、介護ニーズの動態は地域で異なるのです。このため、近い将来を考えれば「介護サービスの整備を続けなければならない」が、それでは「遠い将来に介護サービスが余ってしまう(特に施設系で問題となる)」ことになりかねません。逆に、遠い将来を視野にいれて「サービス整備を抑制」すれば、足元の介護ニーズに対応することが困難となってしまう地域も出てきてしまいます。

このため、厚労省老健局介護保険計画課の山口高志課長は「地域の人口動態(介護ニーズの動態のベースとなる)を十分に把握することが必要である」と強調しています。

地域によって人口動態は異なり、介護ニーズ動向も異なることから、それをまず把握する必要がある(介護保険部会2 200221)



なお、この介護ニーズ把握に関連((4)の施設整備にも関連)して東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は「特別養護老人ホームの待機者数を額面通りに受け取ってはいけない。待機中に死亡等した場合に待機者数から除外されることはなく、実際の待機者は調査・推計結果よりもはるかに少なく、老健施設における待機期間も年々短縮している。こうした点を勘案しなければ、施設が過剰に整備されてしまう」と指摘しています。

介護予防等のPDCAサイクル推進が重要、ただしKPI設定等どこまで求めるか・・・

また(3)の介護予防等では、▼一般介護予防事業に関する「PDCAサイクル沿った推進」「専門職の関与」など▼総合事業の対象者や単価の弾力化(要支援段階で総合事業を受けていた高齢者について、要介護状態になっても総合事業を継続して受けることを可能とする)▼保険者機能強化推進交付金(所謂インセンティブ交付金)等を活用した施策の充実・推進▼看取りや認知症への対応強化等の観点を踏まえた在宅医療・介護連携の推進▼今後、国が示す指標に基づくリハビリテーションの目設定▼データの利活用を推進と、個人情報保護のための環境整備(医療関係部局と介護関係部局で個人情報保護のレベルを揃える)―ことなどが、第8期計画で重視されます。

この点について鈴木隆雄委員(桜美林大学大学院自然科学系老年学研究科教授)は「介護予防等の取り組みと、成果との結びつきが重要である。自治体が分析可能なように、国でデータ利活用の具体的などを示してあげるべき」と提案。また佐藤主光委員(一橋大学国際・公共政策大学院、大学院経済学研究科教授)や河本滋史委員(健康保険組合連合会常務理事)らは「KPIを設定し、工程表の作成を求めるべき」と提案しましたが、小規模な町村にそこまで求めるかは検討の余地が大きそうです。



一方、(4)は、介護保険施設整備が困難な都市部(土地代等が高く、介護報酬では償還できないと指摘される)において、増大する介護ニーズに対応するために「サ高住などを活用する」ものです。(1)の介護ニーズ動態の地域差とも関連するテーマと言えるでしょう。



また(5)の認知症施策に関しては、介護保険事業(支援)計画における位置づけを格上げする考えが山口介護保険計画課長から明らかにされています(これまでは「地域包括ケアシステム構築のため重点的に取り組むことが必要な事項」の下位項目であったが、同格とする)。さらに、介護保険事業計画・介護保険事業支援計画のいずれにおいても、▼認知症施策推進大綱等を踏まえ、普及啓発の取組 やチームオレンジの設置、「通いの場」の拡充など▼教育、地域づくりなど、他分野の関連施策との連携等に関する事項―について具体的に記載することが期待されます。

認知症施策推進大綱の概要(介護保険部会3 200221)

介護人材の確保を先んじて考え、その人材で運用できる施設数を後追いで考えるべきでは

さらに今後(もちろん今でも)の最重要事項となる(6)の人材確保に関しては、▼介護職に限らない専門職を含めた人材確保の重要性▼「要介護認定を行う体制の計画的な整備を行う」ことの重要性▼ポイント制度や有償ボランティア等▼「要介護認定の質の確保等に向けた支援」の重要性▼地域医療介護総合確保基金(介護人材分)を活用した労働環境等改善の具体的な方策▼業務仕分けやロボット・ICTの活用、元気高齢者の参入による業務改善などの「介護現場革新」の具体方策▼「業務効率化に取り組むモデル施設を育成し、モデル施設が地域内の介護事業所へ先進的な取り組みを伝えていく」ことの重要性▼文書負担軽減に向けた具体的な取り組み―などを、新たに介護保険事業(支援)計画に記載することになります。

介護人材確保に向けて総合的な対策を講じる(介護保険部会4 200221)



この点について、介護保険部会では「ロボット等の活用は小規模事業では難しい、連携や大規模化の必要性にも踏み込んではどうか」(佐藤委員)、「計画では施設数を先に設定し、そこに何人の介護職員が必要かを勘案しているが、逆である。まず地域で介護職員がどれだけ確保できるかを勘案し、それに見合った施設整備とすべき」(桝田和平委員:全国老人福祉施設協議会介護保険事業等経営委員会委員長)、「地域によって地域医療介護総合確保基金のバラつきが大きい。国から都道府県に活用を促すべき」(久保芳信委員:UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長)などさまざまな意見が出されました。また、この人材確保についても「目標設定を全計画の中で必須とすべきではないか」との指摘も出ており、さらに厚労省内部で検討することになります。



山口介護保険計画課長は「委員から出された意見を踏まえて、基本指針策定に向けた考え方をブラッシュアップし、基本指針案を作成する。それを介護保険部会に提示し、その後(2020年6月見込み)に全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議の場を活用して自治体関係者にその内容を周知する」との考えも提示。併せて自治体では、「介護ニーズの見込み量把握」「介護療養・医療療養などから介護医療院への転換意向の把握」などを進め、来春(2021年春)の介護報酬改定(2021年度改定)も踏まえて、2020年度中に第8期介護保険事業(支援)計画を作成することになります。

2021-23年度を対象とする第8期介護保険事業(支援)計画策定に向けた大きなスケジュール(介護保険部会1 200221)



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