収入の大きな病院はさらに収入が増加する傾向、病院の競争が激化―厚労省
2017.5.19.(金)
2015年度における医科病院の1施設当たり医療費の平均は26億円で、(前年度に比べて7800万円・3.1%増加)、バラつきがさらに大きくなっている―。
こうした状況が、厚生労働省が19日に公表した2015年度版の「施設単位でみる医療費等の分布の状況~医科病院、医科診療所、歯科診療所、保険薬局~」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
病院収入のばらつきは年々拡大、収入の大きな病院では、より収入が増加
厚生労働省では、毎月の「医療費の動向」(MEDIAS)の中で医療機関1施設当たりの医療費データなどを明らかにしています。もっとも、医療機関の規模や状況はさまざまなので、医療機関の規模(1施設当たりの医療費階級別)別でも医療費の状況を分析しています(前年度の状況はこちら、前々年度の状況はこちら)。
医科病院について見てみると、2015年度の1施設当たり医療費は平均で26億円ちょうど。2011年度からの変化を見ると、平均医療費は増加傾向にあり(11年度:23億4900万円→12年度:24億1600万円→13年度:24億6400万円→14年度:25億2200万円→15年度:26億円)、かつ、バラつき(標準偏差)も大きくなっています(11年度:37億3900万円→12年度:39億900万円→13年度:40億600万円→14年度:40億9800万円→15年度:42億8100万円)。
後述するように、1施設当たり医療費は「病院収入」に読み替えることができ、このバラつきが大きくなっていることから、「地域における競争が激化している」ものと伺えます(収入の大きな病院はより大きく、収入の小さな病院はより小さく)。平均在院日数の短縮が進む中で病床稼働率を維持するためには、新規患者をこれまで以上に獲得することが必要となります。このため「より広域での新規患者獲得」を目指すことになりますが、この状況は競合となる病院も同じなので、競争が激化することになるのです。自院の状況を確認することはもちろん、「競合となる他院の状況」「全国における自院の状況」「地域での立ち位置」(今後果たすべき機能)「地域の患者動向」などを総合的に把握して、病床削減や統合・再編すらも視野に入れた経営戦略を練る必要があります(関連記事はこちら)。
また1施設当たりの医療費階級別に「1施設当たり医療費の伸び率」を見ると、医療費の少ない病院では医療費の伸び率に大きな幅があり、逆に、医療費の多い病院では、伸び率の幅が小さいこと、また医療費の多い病院のほうが医療費の伸び率が高くなることも分かりました。
「1施設当たりの医療費」は、いわば「病院収入」と考えることができます。したがって、「収入の少ない病院群では、増収病院と減収病院のばらつきが大きく、収入が大きくなるにつれて増収病院と減収病院の格差が収斂していく」、「収入の少ない病院では、収入源となる病院もあるが、収入の多い病院では安定して収入が増加している」ことが伺えます。入院と入院外に分けると、入院外においてこの傾向がより強いようです。これが、前述の「収入のバラつき拡大」につながっていると考えられ、早急な経営戦略の策定・見直しが必要と言えるでしょう。
なお、機能別に病院の「1日当たり医療費」を見ると、▼特定機能病院で高く、かつバラつきが小さい(施設数が少ないことも関係するが)▼DPC対象病院とそれ以外とでは、DPC病院で高い—ことなども明確になっています。
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