「1月」の状況だけを経年比較すると、在院日数短縮と病床利用率向上を両立―病院報告、17年1月分
2017.5.11.(木)
ここ数年における1月分の平均在院日数・病床利用率を比較すると、「平均在院日数」は緩やかな減少を続け、「病床利用率」は2016年・17年と連続で上昇しており、多くの病院で「空床対策」に成功している可能性がある―。
このような状況が、厚生労働省が10日に発表した2017年1月分の病院報告から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
平均在院日数は明確な減少傾向、病床利用率は2016・17年と連続で上昇
厚労省は毎月、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―について集計し、「病院報告」として公表しています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
(1)の1日平均患者数は、今年(2017年)1月には病院全体で入院125万4204人(前月比1万1501人・0.9%増)、外来126万5340人(同8万3290人、6.2%減)で、入院では微増、外来は大幅減少となっています。
病院の一般病床において入院患者数は67万7725人で、前月に比べて1万1397人・1.7%増加しました。また病院の療養病床における入院患者数は28万8157人で、前月に比べて266人・0.1%の微増となりました。
(2)の平均在院日数は、病院全体では30.1日で、前月から2.0日延伸しています。病院の病床種別に見ると、▼一般病床17.3日(前月比1.3日延伸)▼療養病床153.5日(同11.6日延伸)▼介護療養病床322.2日(同31.1日延伸)▼精神病床289.8日(同19.2日延伸)▼結核病床66.1日(同2.8日延伸)―となり、すべての病床種別で平均在院日数は延伸してしまっています。
(3)の月末病床利用率については、病院全体では82.1%で、前月に比べて10.6ポイントと大幅に上昇しました。病院の病床種別に見ると、▼一般病床78.9%(前月から18.1ポイント上昇)▼療養病床88.2%(同0.7ポイント上昇)▼介護療養病床89.8%(同0.7ポイント低下)▼精神病床85.7%(同0.1ポイント上昇)▼結核病床31.4%(同0.4ポイント上昇)―という状況です。一般病床で18.1ポイントと大きく上昇していますが、12月末の数値が「年末年始は自宅で過ごしたい」との患者の要請に応えて著しく低下したことの反動と考えられます。
また一般病床の平均在院日数(1月分)を5年前から見てみると、▼2012年:18.8日→(0.3日減)→▼2013年:18.5日→(0.3日減)→▼2014年:18.2日→(0.5日減)→▼2015年:17.7日→(0.4日減)→▼2016年:17.3日→(増減なし)→▼2017年:17.3日―と推移しており、短縮傾向が伺えます。2016年から17年にかけて短縮傾向がストップしたのか、単なる階段の踊り場にあるのか、来年以降の状況も見ていく必要があります。
一方、病床利用率は、▼2012年:79.1%→(0.2ポイント上昇)→▼2013:79.3%→(1.8ポイント低下)→▼2014:77.5%→(3.0ポイント低下)→▼2015年:74.5%→(0.1ポイント上昇)→▼2016年:74.6%→(4.3ポイント上昇)→2017年:78.9%▼―という状況です。2015年で大きく低下し、その後、盛り返してきているように見えますが、ここだけで明確な特徴を見ることは難しそうです。
メディ・ウォッチで度々お伝えしていますが、病院経営においては「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の上昇」を同時に達成することが極めて重要です。平均在院日数の短縮は、例えばDPCII群要件の1つである「診療密度」向上に大きく寄与するほか、院内感染やADL低下のリスクを低く抑えることができ、経営の質と医療の質の双方を向上させることにつながります。1月分の経年比較からは減少傾向が把握でき、良い方向に進んでいることが分かります。
一方、単純な在院日数短縮は「空床」発生要因になるため、短縮と併せて「新規入院患者の獲得」などの対策をとらなければいけません(例えば近隣のクリニックや中小病院との連携強化による重症新患の紹介増や、救急搬送患者の積極的受け入れなど)。1月分の経年比較からは明確な傾向が見出せませんが、2016年・17年と上昇している点だけを見れば、「在院日数の短縮」と「稼働率の上昇」との両立が実現できているようにも見えます。
ただし、少子化により地域の患者数が減少していく今後においては、「空床」(増患)対策に限界もある(ライバル病院も同じ対策をとります)ため、「ダウンサイジング」や「近隣病院との再編・統合」といった選択肢も視野に入れておかなければいけないでしょう。
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