一般病床、5年前から平均在院日数は短縮しているが、病床利用率が十分に向上せず―病院報告、16年9月分
2017.1.16.(月)
昨年(2016年)9月に入って、一般病床の平均在院日数は前年同月に比べて0.5日短縮し16.2日となったものの、病床利用率は同じく1.7ポイント向上し72.9%になってしまった―。
このような状況が、13日に厚生労働省が発表した2016年9月分の病院報告から明らかになりました(前月の状況はこちら)(厚労省のサイトはこちら)。
メディ・ウォッチで何度もお伝えしていますが、病院経営においては「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」を同時に達成することが重要です。今般の結果からは、真逆の方向に進んでしまっており、前月までの動きから一歩後退したと見ることもできます。
前月に比べて、平均在院日数が延伸し、病床利用率が低下してしまった
厚労省は毎月、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を集計し、「病院報告」として公表しています。
(1)の1日平均患者数は、2016年9月には病院全体で入院124万1233人(前月比9200人・0.7%減)、外来136万3068人(同1978人、0.1%減)で、入院・外来とも微減となりました。
病院の一般病床を見てみると、入院患者数は66万717人で、前月に比べて7378人・1.1%減少しました。また病院の療養病床については、入院患者数は28万8464人で、前月に比べて1314人・0.5%の減少となっています。
(2)の平均在院日数については、病院全体では28.7日で、前月から1.0日の延伸となりました。病院の病床種別に見ると、▽一般病床16.2日(前月比0.5日短縮)▽療養病床153.4日(同0.8日短縮)▽介護療養病床314.3日(同0.7日短縮)▽精神病床264.4日(同1.0日短縮)▽結核病床65.6日(同0.3日短縮)―となり、一般、療養(医療・介護)病床で平均在院日数が僅かですが延伸してしまっています。
前月(2016年5月)には、すべての病床種別で相当程度の平均在院日数短縮があったため、この揺り戻しとも思われますが、長期的な傾向をしっかり見ていく必要があります。
(3)の月末病床利用率を見ると、病院全体では78.6%で、前月に比べて1.1ポイント低下(悪化)しました。病院の病床種別に見ると、▽一般病床72.9%(前月から1.7ポイント低下)▽療養病床87.5%(同0.4ポイント低下)▽介護療養病床91.4%(同変動なし)▽精神病床86.2%(同0.2ポイント低下)▽結核病床35.2%(同0.1ポイント上昇)―という状況です。
なお一般病床の平均在院日数を経年的に見てみると、▼5年前の2011年9月には17.9日▼4年前の2012年9月には17.8日▼3年前の2013年9月には17.5日▼2年前の2014年9月には16.5日▼1年前の2015年9月には16.5日―であり、徐々に減少している状況が伺えます(厚労省のサイトはこちら)。
一方、病床利用率は、▼2011年9月には74.2%▼2012年9月には70.9%▼2013年9月には73.0%▼2014年9月には73.1%▼2015年9月には74.0%―となっており、明確な傾向は見いだせません(厚労省のサイトはこちら)。
メディ・ウォッチで繰り返しお伝えしていますが、病院経営において「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の上昇」を同時に達成することが極めて重要です。この点、平均在院日数については好ましい「短縮」傾向を維持できていますが、それに伴う「空床」対策が必ずしも十分に効果を生み出していないようです。近隣の医療機関との連携強化や、救急搬送患者の積極的受入れなどが基本的な「空床」(増患)対策と言えますが、これには限界もあります。早い段階で「ダウンサイジング」や「近隣病院との再編・統合」といった選択肢も検討する必要があるかもしれません。
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