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7割超が自己負担補填のために民間保険に加入、負担率の限界と見るか、補填されるので引き上げ可能と見るか―厚労省

2017.10.25.(水)

 我が国においては、20歳以上の7割超が「民間の医療保険や介護保険」に加入しており、うち4割弱の人は「公的医療保険・介護保険の自己負担分を補うため」に加入している。また「今後、社会保障の給付水準を維持するべきで、少子高齢化による負担増はやむを得ない」と考えている人がおよそ3割でもっとも多い—。

 厚生労働省が10月24日に公表した、2015年の「社会保障における公的・私的サービスに関する意識調査」結果から、こういった状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら(要旨)ととこちら(全文))。少子高齢化が進行する中で社会保障費が増加を続け、「給付と負担の見直し」が避けられない事態になります。今般の調査結果は、その見直し論議において極めて重要な意味を持つと考えられます。

7割超が民間保険に加入、とくに40代では85.7%が加入

今般の調査は、全国から無作為に抽出した20歳以上の9811名を対象に、▼医療▼介護▼年金▼子ども・子育て支援―に関わる公的サービスと私的サービスの機能・役割分担、社会保障における自助・共助・公助のバランスのあり方などに関する意識を調べたものです。

まず「民間の医療保険・介護保険への加入状況」を見ると、全体では72.1%の人が加入していることが分かりました。

年齢階級別に見ると、30-69歳で高く(76.7-85.7%)、20歳代(60.2%)、70歳以上(52.4%)で低くなっています。20歳代では「健康や介護に関する不安」への実感が低く、また70歳以上では加入資格が厳しくなっている(若いうちに加入した保険の給付期間が切れ、高齢になってからの再加入は健康・介護リスクを勘案して、保険料が極めて高額になっているケースもある)ことなどが、加入率の低さの原因として考えられそうです。

7割超の成人が民間の医療保険・介護保険(いずれか、または双方)に加入している

7割超の成人が民間の医療保険・介護保険(いずれか、または双方)に加入している

 
また「民間の医療保険・介護保険」のいずれに加入しているのかを見ると、全体では「医療保険のみ」が最も多く72.6%、「医療保険・介護保険の両方」が26.4%となりました。また、年齢が上がるにつれて「医療保険・介護保険の両方」「介護保険のみ」の割合が高くなり、「介護リスクへの不安」が加齢とともに高まっていることが如実に現れていると言えるでしょう(いずれか、または双方に加入している人を100%に設定)。

民間保険加入の最大の理由は「自己負担の補填」

さらに「民間の医療保険・介護保険」に加入している理由(複数回答、調査対象はいずれか、または双方に加入している人)を見てみると、「公的医療保険・介護保険の自己負担分を補うため」がもっとも多く56.3%、次いで「治りにくい病気にかかり治療が長期化することに備えて」46.9%、「公的医療保険で賄えない高度の医療や投薬を受けるかもしれないから」32.6%、「入院や介護が必要になることなどに伴って仕事ができなくなるかもしれないから」29.9%などが多くなっています。

民間保険に加入する理由としては、「自己負担の補填」画もっとも多く、次いで「治療の長期化」「保険外の医療を受ける」ことなどを見越している点も少なくない

民間保険に加入する理由としては、「自己負担の補填」画もっとも多く、次いで「治療の長期化」「保険外の医療を受ける」ことなどを見越している点も少なくない

 
年齢階級別に見ても、いずれの年代でも「公的医療保険や公的介護保険の自己負担分を補うため」がもっとも多い加入理由となっています。過去の調査(2009年は61.3%、2003年は61.6%、1998年は57.9%)に比べて加入している人の割合が大幅に増えている点を併せて考えると、「自己負担が重い」「重くなる」と考えている人が増加していると考えられそうです。

 また、今後「公的医療保険の自己負担を引き上げるべきではないか」といった議論になった場合、「7割超の成人が民間保険で自己負担を補填している」状況がどのように影響するのか(「補填が必要なほど自己負担が高い」と考えるのか、「補填されているので更なる自己負担増も可能ではないか」と考えるのか)、注目すべき点の1つと言えるでしょう。

高所得者では「自己負担・給付水準に満足している」ので加入しない

逆に、「民間の医療保険・介護保険」に加入しない理由(複数回答、調査対象はいずれにも加入していない人)を見ると、「保険料を払えない」がもっとも多く(51.2%)、「公的医療保険や公的介護保険に満足(信用)している」(28.3%)、「商品を知らない」(11.3%)、「貯蓄や自費で足りる」(10.8%)などと続きます。さらに所得の状況(等価所得階級)と加入しない理由とを組み合わせると、所得の低い層では「保険料を払えない」が多く、所得の高い層では「公的医療保険や公的介護保険に満足(信用)している」が多くなっています。

民間保険に加入しない最大の理由は「保険料を払えない」というところにあり、ほかに「公的保険に満足している」という理由も多くなっている

民間保険に加入しない最大の理由は「保険料を払えない」というところにあり、ほかに「公的保険に満足している」という理由も多くなっている

低所得者の多くは「保険料負担」を理由として民間保険に加入せず、高所得者になると「現在の公的保険に満足している」ために民間保険に加入しないという大きな傾向がある

低所得者の多くは「保険料負担」を理由として民間保険に加入せず、高所得者になると「現在の公的保険に満足している」ために民間保険に加入しないという大きな傾向がある

 
これらを勘案すると、高所得層では▼公的保険に満足している人は民間保険に加入しない▼給付水準などに満足のいかない人は民間保険に加入する—状況にあり、低所得層では「公的保険の給付水準などに満足のいかない場合でも、保険料負担がネックとなって民間保険の加入できない」状況にあると言えそうです。所得水準によって「医療へのアクセス」に格差が生まれてきている可能性もあり、より詳細な分析が待たれます。

一般国民の多くは「先進医療などにも公的医療保険を拡大すべき」と考える

 公的医療保険の対象範囲については、62.1%の人が「現在のまま、傷病の治療のために病院や診療所などを利用した場合を公的医療保険の対象とすべき」と考えていますが、「予防や健康づくりなどにも拡大すべき」(23.4%)、「重い疾病に限定すべき」(8.7%)という人もいます。年齢による特段の傾向は見られません。

 先進医療の費用をどう賄うかについては、約半数(51.0%)が「税や社会保険料の負担が増加しても、適切な負担で治療が受けられるよう公的医療保険で賄うべき」と考えており、年齢が上がるほど、その割合も高くなっています。

 一般国民の多くは、「公的保険の範囲は、より高度な医療にも拡大していくべき」と考えていることが分かります。ただし、「どこまでの負担増を許容するのか」といった点は明確でなく、安易な保険給付拡大論議は現状では危険を伴いそうです。

一般国民の半数は「負担増になっても、先進医療も医療保険で賄うべき」と考えており、高齢になるとその割合が増加する

一般国民の半数は「負担増になっても、先進医療も医療保険で賄うべき」と考えており、高齢になるとその割合が増加する

一般国民の多くは、「生活援助も介護保険サービスとして維持すべき」と考える

一方、公的介護保険については、「現在の上限額、現在の自己負担の割合でよい」(44.9%)と「税や社会保険料負担が増加しても、範囲の拡大や上限額の引き上げなどによって、より充実した介護サービスを受けることができるようにすべき」(40.6%)とが拮抗しています。また「給付範囲を減らし、自己負担増や家族介護で対応すべき」との声は3.9%にとどまりました。

さらに、より細かく「どのサービスを公的介護保険で賄うべきか」については、▼福祉用具の購入・貸与(70.4%)▼掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助(55.7%)▼外出の手伝い・送迎・移送サービス(54.0%)―などについて、「公的サービスの充実・維持」を望む声が大きくなっています。

生活援助については「保険給付の割合を低くすべきではないか」「そもそも保険サービスとして妥当なのか」といった指摘もありますが(関連記事はこちら)、一般国民の多くは「保険サービスとして妥当であり、給付率も維持すべき」と考えているようです。

福祉用具貸与・購入や生活援助サービスについて、一般国民の多くは「公的介護サービスとしての維持・充実」を求めている

福祉用具貸与・購入や生活援助サービスについて、一般国民の多くは「公的介護サービスとしての維持・充実」を求めている

 

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