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がん治療で体内に金198グレイン・ヨウ素125シードを永久挿入した患者の退出基準—厚労省

2018.7.20.(金)

 がん治療のために、体内に金198グレイン(頭頸部がん)・ヨウ素125シード(前立腺がん)を永久挿入した患者が放射線治療病室等から退出する際には、最近のICRP勧告を踏まえて設定した基準や留意事項の遵守が求められる―。

 厚生労働省は7月10日に通知「診療用放射線照射器具を永久的に挿入された患者の退出及び挿入後の線源の取扱いについて」を発出し、今後の診療用放射線照射器具を用いた治療において、さらなる安全性に配慮するよう求めました。

第三者への被曝などが生じないよう、患者や家族に適切な注意・指導も行うこと

 舌がん等の頭頸部がんの治療においては「金198グレイン」、前立腺がんの治療においては「ヨウ素125シード」といった、体内に永久的に挿入して治療を行う診療用放射線照射器具が使用されます。

今般、厚労省の「医療放射線の適正管理に関する検討会」において、近年の国際放射線防護委員会(ICRP、International Commission on Radiological Protection)勧告(一般公衆・患者を訪問する子供の線量限度(1年間につき実効線量で1ミリシーベルト)、介助者・介護者の線量拘束値(1行為あたり実効線量で5ミリシーベルト)を確保すべし)などを踏まえて、「診療用放射線照射器具を永久的に挿入された患者の退出及び挿入後の線源の取扱いに関する指針」が固められ、これを医療現場等に周知することで、より安全性に配慮した治療を目指すこととしたものです。

具体的な基準としては、上述のICRP勧告を踏まえて▼一般公衆・患者を訪問する子供の線量限度:1年間につき実効線量で1ミリシーベルト▼介助者・介護者の線量拘束値:1行為あたり実効線量で5ミリシーベルト―とされました。

また、これらを確保できる患者の退出基準として、次のような規定を定めています。患者を退出させる場合には、これらを遵守しなければなりません。

◆放射能および1cm線量当量率による基準
患者が病院内の診療用放射線照射器具使用室または放射線治療病室等から退出する場合には、次の(1)または(2)のいずれかが、下表(表1)の数値を超えてはならない
(1)適用量・減衰を考慮した残存放射能に基づく基準
(2)測定線量率(患者の体表面から1m離れた地点で測定された1cm線量当量率)
放射線器具の体内挿入患者の退出基準 180710の図表
 
◆診療用放射線照射器具を挿入された後の線源の取扱い
診療用放射線照射器具の脱落に備えるため、挿入後は診療用放射線照射器具ごとに次の対策を講じることが求められる
(1)ヨウ素125シード
膀胱や尿道への脱落が術中に確認された場合は、膀胱鏡検査で脱落したシードを回収すること。検査後に膀胱や尿道に脱落したシードは翌日までに尿中(体外)に排出されるため、少なくとも「1日間」入院させ、この間に尿中に排出された線源の有無を確認した後に退院させること
※前立腺に挿入されたヨウ素125シードが膀胱や尿道に脱落する症例は1%程度
(2)金198グレイン
治療部位によっては挿入された線源が脱落することがある(調査ではすべての線源脱落は挿入後3日以内であった)。少なくとも「3日間」期間入院させ、脱落に十分備えること

また、患者が前述の基準を満たして、診療用放射線照射器具使用室等から退出する場合、▼一般病室に入院する場合は、当該一般病室を一時的な管理区域(医療法施行規則第30条の14の3第1項第5号)とする▼必要に応じて迅速に連絡がとれるよう、当該患者の連絡先を記録し、退出後少なくとも1年は保存する▼一定期間(現時点では1年)内に、挿入された線源が脱落し、患者が死亡した場合は、脱落線源を提出させ、線源摘出のための剖検の手配を行うなどの、線源回収手続きを早急に行う―ことなどが求められます。

 
◆患者・家族等への注意事項、指導事項
患者の退出を許可する場合、次のような注意・指導を患者・家族等に対して「口頭および書面」で行うことが求められる
(1)患者から第三者に対する被曝が生じないよう、必要に応じ以下のような注意・指導をする
▽ヨウ素125シード
▼子供・妊婦と接触する▼公共交通機関を利用する▼職場で勤務する▼同室で就寝する者がいる―のいずれかに該当する場合には、一定期間、防護具等で遮蔽を行うなどの、適切な防護措置を講じること
▽金198グレイン
▼子供・妊婦と接触する▼公共交通機関を利用する▼職場で勤務する▼同室で就寝する者がいる―のいずれかに該当する場合には、一定期間、適切な防護措置を講じること

(2)退出後一定期間内に脱落線源を発見した場合は、直接手で触れず、スプーン等で拾い上げ、ビンなどに密閉して速やかに担当医に届け出る

(3)患者の退出後、一定期間内に当該患者が死亡した場合は、家族等から速やかに担当医に届け出る

 
なお、患者を退出させる場合は、▼退出の根拠となった「適用量」「体内残存放射能」「退出時に測定した線量率」▼退出した日時▼患者への具体的な注意▼指導事項—などを記録し、これを1年ごとに閉鎖し、閉鎖後2年間保存することも求められます。
 
 
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