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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

診療データ提出を小規模病院にも義務化し、急性期病棟にも要介護情報等提出を求めてはどうか―入院医療分科会(3)

2019.9.20.(金)

 小規模な回復期リハビリテーション病棟や療養病棟についても、診療データ提出の義務化を行うべきではないか。また、患者の「要介護情報」について、現在、療養病棟などでのみ提出が義務付けられているが、急性期病棟でも提出を義務化してはどうか―。

 さらに提出データの精度を評価する【提出データ評価加算】については、ベースとなる【データ提出加算2】を取得する病院の9割が取得しており、要件を厳格化してはどうか―。

 9月19日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)では、こういった議論も行われました(関連記事はこちらこちら)。

9月19日に開催された、「令和元年度 第7回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

 

50床以上200床未満の回復期リハ5・6や療養にもデータ提出を義務化してはどうか

 DPCが多く導入されている一般病棟、地域包括ケア病棟、一部の回復期リハビリテーション病棟・療養病棟を持つ病院では、「データ提出」が義務付けられています。包括評価ゆえに「どのような医療提供が行われているのか」が見えにくく、粗診新療により患者に不利益が生じていないか、医療の質低下が生じていないかを確認する必要があるためです。

 
 この点、9月19日の入院医療分科会では、(1)データ提出を義務付ける病院の範囲をどう考えるか(2)データ提出の内容をどう考えるか(3)【提出データ評価加算】の要件をどう考えるか―という3つのテーマが議題となりました。

 まず(1)のデータ提出義務については、現在、義務の課せられていない回復期リハビリ病棟・療養病棟を持つ「小規模な病院」をどう考えるかが論点となる見込みです。

 回復期リハビリ病棟・療養病棟を持つ病院については、2018年度からで一部でデータ提出が義務付けられました。ただし、データ提出のためには診療情報管理士の配置などを考慮しなければならず、小規模病院では対応が困難なことから、▼回復期リハビリ病棟5・6▼療養病棟―については、「許可病床200床以上」の病院においてデータ提出が義務となっています。逆に言えば、許可病床数200床未満で回復期リハ5・6や療養を持つ病院ではデータ提出義務はないのです。

 
しかし、この仕組みにより回復期リハについては病床数ベースで全体の62.3%、療養については同じく29.5%しか診療データ収集ができていません。収集されたデータは診療報酬改定にも活用されていますが、「限られたデータで回復期リハ・療養の診療報酬を考える」ことになってしまうのです。

厚労省では、「50床以上200床未満」の回復期リハ5・6や療養を持つ病院をデータ提出義務対象とすることで、回復期リハについては87.2%、療養については91.7%(いずれも病床数ベース)のデータ取得が可能になると試算しています。


 
こうした方向に明確な反対意見は出ておらず、「データ提出義務対象病院の拡大」に賛同する意見が多数出されています。もっとも、データ提出には病院側の準備(設備整備やマンパワーの確保など)が必要となるため、池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)から「準備期間を十分にとり、医療現場の意見も踏まえて丁寧に進める必要がある」、神野正博委員(全日本病院協会副会長)から「データ提出に関する教育・研修体制を整備する必要がある」との注文がついています。

とくに池端委員は、「将来的には回復期リハ・療養をもつすべての病院にデータを提出してもらうべきであるが、2年後(2020年度改定で義務化を宣言し、一定の経過措置を置いて実施)で50床以上200床未満にも拡大し、4年後(2022年度改定で宣言し、経過措置を置いて実施)ですべてに拡大する」などの具体的な配慮を求めました。

こうした意見も考慮しながら、義務対象の拡大や経過措置期間(例えば50床以上200床未満では、2020年度改定で「データ提出義務」を決定し、そこから1年後に義務を課すなど)などを中医協で検討していくことになるでしょう。

 
なお、200床以上の回復期リハ1-4・療養を持つ病院であっても、当該病床が200床未満の場合(例えば「精神病棟200床+療養病棟50床」のような場合)には、「病院の体力を考えると、データ提出への対応が難しい」という点に配慮し、中医協では「2020年3月31日までデータ提出要件を満たしていると見做す」(データ提出を行っておらずとも、当該入院料の取得を認める)との新たな経過措置を設けています(関連記事はこちらこちらこちら)。この経過措置をどう考えるのか(2020年4月以降も継続するのか、2020年3月で終了し実際のデータ提出を求めるのか)は、別途、中医協で検討することになります。

 

急性期から慢性期まで一貫した実態把握を可能にするため、データ提出内容を標準化

 一方(2)は、病棟の特性に配慮した上で、「提出データの内容を揃える」べきではないかという論点です。

 入院医療分科会における診療報酬改定論議をエビデンスに基づいたものとするために、厚労省は「入院医療等の調査」を行っており、そこでは例えば、入院患者の▼栄養摂取方法(経口か、経管化、両者の組み合わせか)▼要介護度▼入院継続の理由―などを病棟の種類にかかわらず調べています。これにより「急性期病棟や回復期の病棟では経口で栄養を摂取する患者が多いが、慢性期病棟では少なく、慢性期病棟の中でも差がある」「急性期病棟の中にも相当程度、要介護認定を受け、かつ重度の方が入院している」などといった具合に、急性期から回復期、慢性期までを網羅した医療の実態把握が可能になっています。

 
 一方、データ提出の内容を見ると、▼「肺炎の重症度分類」は急性期病棟などのみで必須▼「要介護度」や「要介護情報」などは療養病棟などのみで必須―という具合に、病棟の種類によって提出すべきデータの内容が異なっており、「急性期から回復期、慢性期において統一されたデータで診療内容を把握する」ことが困難な状況です。

 
このため、必要なデータについては「すべての病棟でデータを提出してもらう」ことを検討してはどうか、という論点が浮上しているのです。こうしたデータ提出内容の標準化が進めば、「入院医療等の調査」内容を縮小でき、回答医療機関の負担軽減→回答率の向上にもつながると期待できます。厚労省は、「入院患者の高齢化が進んでいる」ことや「急性期病棟における早期リハビリの重要性・必要性が高まっている」ことなどを踏まえ、例えば▼要介護度▼要介護情報▼FIM(患者のADLを数値化したもの)―などを病棟種類にかかわらず提出してもらうことを検討してはどうか、と問いかけました。

この点、「要介護度」「要介護情報」については多くの委員が「すべての病棟で提出する」方向に賛成しています。牧野憲一委員(日本病院会常任理事、旭川赤十字病院院長)は「入退院支援などの場面でも患者の要介護度などに関する情報が有用であり、急性期病棟でも取得している」ことを紹介し、データ取得・提出の重要性を強調。また池端委員も「急性期病棟における栄養情報(要介護情報の1つ)は極めて重要である」とコメントしています。

一方、「FIM」については「患者1人1人の評価が大変なことはもちろん、評価者は研修を受けなければならない。データの精度・信頼性という面も考慮すると、急性期病棟でのFIMデータ取得は時期尚早ではないか」との声が牧野委員や神野委員、山本修一分科会長代理(千葉大学医学部附属病院長)らから出ており、支払側である松本義幸委員(健康保険組合連合会参与)も理解を示しました。

こうした声も踏まえて、中医協で最終的にデータ提出内容を考えていくことになります。

【提出データ評価加算】は9割の病院が取得、基準値を厳格化すべきか

一方、(3)の【提出データ評価加算】は、データの質向上を目指すために2018年度の前回診療報酬改定で導入されたものです。入院・外来の双方の診療データ提出を求める【データ提出加算2】を取得する病院のうち、▼DPCデータの様式▼DPCデータの外来EFファイル▼診療報酬明細書―のデータについて、「未コード化傷病名が10%未満」である場合に【提出データ評価加算】を算定できます。

この点、「未コード化傷病名」の出現率を見ると、様式1と外来EFファイルについては、ほとんどの病院で1%未満(ゼロ%の病院も多い)、レセプトについては1割程度となっており、【データ提出加算2】の取得病院の9割以上が【提出データ評価加算】を取得しています。


 
こうした状況を踏まえ、入院医療分科会では多くの委員から「より厳しい基準(現在の10%未満よりも小さい値)を設定すべき」との声が出されました。池田俊也委員(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)は「5%未満が妥当な基準値ではないか」と具体的な提案を行っています。

もっとも「外来EFファイルについては提出義務化からの時間も浅く、厳しすぎる基準値は好ましくない」(牧野委員)、「新規にデータ提出加算を取得する病院については、緩やかな基準値を設けるなど2段階としてはどうか」(神野委員、池端委員)といった意見も出ています。

この点について井原裕宣委員(社会保険診療報酬支払基金医科専門役)は「様式1などののDPCデータは3か月に1度の提出ゆえ、医療機関でコーディングを精査でき、未コード化傷病名の出現割合は極めて小さくなる。一方、レセプトは毎月提出するためにコーディングの精査ができず、未コード化傷病名の出現割合が相対的に大きくなってしまう」という状況には理解を示したうえで、「レセプトについてもさらに正確なデータを目指すことが求められる。ハードル(加算の基準値)は高めに設定するべきである」と強調しています。

 
なお、算定率が9割を超えるような加算については、「既に加算の役割を終えた」と判断し、廃止(ベースとなる診療報酬の施設基準等に組み込むなど)することも考えられますが、入院医療分科会では「データ提出を新規に行う病院の『目標値』としての意味もあり、存続すべき」との見解が多数を占めているようです。

 
 
 

 

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