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オンライン初診解禁を踏まえた【オンライン診療料】等見直し、中医協でエビデンスベースの議論を―中医協総会

2020.12.23.(水)

「初診からのオンライン診療の恒久化」論議が進められており、これを踏まえて診療報酬の【オンライン診療料】などの見直し論議を2022年度の次期診療報酬改定に向けて進める必要がある。その際には、中央社会保険医療協議会でエビデンスに基づく議論をし、点数や要件等の見直し内容を決定する必要があり、決して「政治決着 → 中医協で追認」という流れになってはいけない―。

12月23日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった議論が行われました。

【オンライン診療料】等の見直し、中医協が形骸化しないように議論を進めよ

新型コロナウイルス感染症対策の一環として、電話・情報通信機器を用いた診療」が臨時特例的に大幅拡大され、過去に一度も自院を受診したことのない患者にまで可能「となっています【臨時特例】。

この特例は、新型コロナウイルス感染症の収束によって廃止されます(もちろん収束→廃止がいつになるのかは全く見えない)が、菅義偉内閣総理大臣の指示を踏まえ、平井卓也IT担当大臣、河野太郎行革担当大臣、田村憲久厚生労働大臣が「安全性と信頼性をベースに、初診も含めオンライン診療は原則解禁する」方向を決定【恒久化】。現在、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下、検討会)で制度設計に向けた議論が進められています。

検討会では、例えば▼初診であっても、「過去一定期間(例えば1年)以内に受診した患者」であれば、当該患者の情報を相当程度把握できており、オンライン診療の対象に含めて良いのではないか▼一度も受診歴がなく、診療情報等もない患者でも「予防接種や健診などで患者情報を一定程度把握できている場合」には、例外的にオンライン初診を認めても良いのではないか▼オンライン診療の申し込みから実際の受診までには数時間かかるケースもあり、その間に重篤な状態に陥る可能性もあり、事前のトリアージを行い「オンライン診療まで待機してよい」「すぐに医療機関を対面受診すべき」「すぐに119番要請すべき」などの判断を行うこととしてはどうか▼医師が必要と判断した場合には、すぐに「対面診療」に移行できる体制の確保を要件とすべきではないか▼オンライン診療に特有の技術(問診のスキル、視診のスキルなど)を獲得するための研修事項を必須化してはどうか▼処方可能な医薬品について一定の制限を設けてはどうか―など、さまざまな角度からの議論が進められています(検討会の議論に関する記事はこちらこちらこちらこちら)。

新型コロナウイルス感染症がみたび猛威を振るっている状況を踏まえ、検討会の議論は▼来年(2021年)6月に恒久化・制度設計に関する意見とりまとめ▼同じく9月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(オンライン診療指針)の改訂―というスケジュール感で進められることになりました。

初診を含めたオンライン診療の恒久化に向けて、来秋に指針見直しを行う(オンライン診療指針見直し検討会1 201221)



12月23日の中医協総会では、厚労省保険局医療課の井内努課長からこうした状況が報告されるとともに、「2022年度の次期改定に向けて、検討会などの議論経過を都度、中医協に報告し、しかるべき時期から【オンライン診療料】(診療報酬上のオンライン診療)の見直し論議を行ってもらう」旨の考えが提示されました。現在は、【オンライン診療料】においても「初診からのオンライン診療」は原則として認めておらず、検討会で「初診からのオンライン診療」実施が認められた場合には、それを踏まえた診療報酬体系の整理・整備(例えば、【オンライン診療料】でも初診からの算定を認めるのか、認める場合の要件をどう考えるのか、など)が必要となるためです。

この考えに対し中医協委員からは「中医協論議が形骸化しないようにすべき」との意見が相次ぎました。

意見の背景には、▼薬価の中間年度改定(2021年度改定)▼新型コロナウイルス感染症に対応する小児外来経営を下支えする診療報酬上の特例措置(医科:100点、歯科:55点、調剤:12点を上乗せ算定可能とする)▼2021年度からの新型コロナウイルス感染症に対応する医療機関経営を下支えする診療報酬上の特例措置(外来診療ではプラス5点、入院医療ではプラス10点の上乗せ算定を可能とするなど)―といった本来は「中医協でエビデンスをもとに議論し、決定する」べき事項について、「政府が具体的な内容を固め、中医協がこれを『追認』する」形になってしまったこと、また政府の規制改革推進会議において「感染収束後、オンライン診療における初診の取り扱い、対象疾患等、診療報酬上の取扱い等も含めた恒久化の内容について検討し、『2021年夏を目途にその骨格』を取りまとめる」旨の考えが固められたことがあります。

規制改革推進会議では、オンライン診療に係る診療報酬等の内容を検討し、2021年夏までに骨格を取りまとめる考えを示している(中医協総会1 201223)



診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「外部論議によって中医協が形骸化してしまわないようにすべき」とコメント。さらに支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、上述のような「政府決定→中医協追認」という流れが、【オンライン診療料】の見直しでもあてはめられることを懸念し、「政府主導での決定→中医協で追認する」という事態とならないようにすべきと強く訴えました。規制改革推進会議の取りまとめ文言からは「来夏(2021年)に規制改革推進会議で【オンライン診療料】見直しの方向を決定し、中医協でそれに沿って細部の調整論議を行う」という政府の考えが見え隠れしているためです。

また支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「現在の臨時特例や2020年度診療報酬改定の効果・影響などを十分に把握、検証し、エビデンスに基づいた【オンライン診療料】見直し論議が必要である」旨を強調しています。



診療報酬については、医療提供サイドの代表者(診療側委員)と、費用負担サイドの代表者(支払側委員)とが、データをもとに診療報酬項目の1つ1つについて「あるべき姿」「現状と課題」を議論し、要件などを詰めていきます(議論が紛糾しまとまらない場合には、学識者である公益代表が裁定を行う)。診療報酬は、保険医療機関等から見れば「収益の柱」であり、患者や保険者から見れば「診療の料金、メニュー表」であることから、直接の利害関係者が議論し、「納得」の上で料金やメニューを見直す必要があるためです。

こうした重要な過程を軽視すれば、診療報酬、ひいては医療保険制度そのものへの信頼を失わせることに繋がりかねません。

すでに検討会でも、「オンライン診療は推進しなければならない。しかし対面診療に比べてオンライン診療の報酬は低く設定されており、推進を阻害している。対面診療と同等の報酬水準とすべき」と主張する構成員もいます。しかしオンライン診療では、医師が得られる情報は限定されるために見落としや誤診のリスクが高いことが知られています(それ故に、医師が必要性を認めた場合には、すぐに「対面診療に移行できる」体制の整備などが検討されている)。この点からは、「現時点では、オンライン診療は対面診療に比べて質が低い」と考えることができ、両者を「同じ報酬水準」とすることに強い疑問を呈する識者も少なくありません(質の低いサービスの高い料金を設定することは、自由診療ではいざ知らず、保険診療では認めがたい)。

もちろん「患者の利便性」というメリットもあり、その点を報酬に加味することも考えられますが、それはまさに「中医協で議論すべき論点」であり、これを軽視することは好ましくありません。

【在宅自己注射指導管理料】対象薬剤の間口広げ、感染防止と治療機会確保を両立

また、12月23日の中医協総会では、「新型コロナウイルス感染が拡大している間、新医薬品以外の医薬品についても、【在宅自己注射指導管理料】の対象薬剤の要件を満たし、学会からの要望があった場合には、原則として年4回の『新医薬品の薬価収載の時期』に合わせて追加することを検討する」方針が了承されました(2021年度に薬価改定が行われるため、最初の追加検討は2021年4月になる見込み)。

在宅自己注射指導管理料の対象薬剤追加について、新型コロナウイルス感染症拡大時の特例を設ける(中医協総会2 201223)



【在宅自己注射指導管理料】の対象薬剤は、新薬については「薬価収載の時期」に合わせて、新薬以外の医薬品について「診療報酬改定」に合わせて、追加すべきか否かが検討されます。

しかし新型コロナウイルス感染症が蔓延する中で、患者の医療機関受診控えが生じており、学会から「適切な薬剤治療が可能となるよう、医師の指導の下で患者が自身で注射を行える薬剤を、より迅速に、かつ広く認めてほしい」との要望があがっています。そもそも基礎疾患を抱える患者であり、新型コロナウイルス感染症に罹患すれば「重症化・重篤化」の恐れがあることから、「医療機関を受診して薬剤注射を受ける」ことを避けるケースが増えているのです。治療を控えれば、当然「悪化」が懸念されます。この点、「在宅で自己注射できる薬剤」の範囲が広まってくれば、「感染防止」と「適切な治療機会の確保」との両立が可能となってきます。もちろん、薬剤の注射にはリスクが伴うことから、必要な要件を満たし、学会から要望があるものに限定されます。

この点、支払側の間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は「新型コロナウイルス感染症の流行時に限らず、安全性が担保されているのであれば、新薬以外の医薬品についても『年4回』の対象薬剤への追加検討を行ってもよいのではないか」「厚労省から学会に『対象薬剤への追加検討要望』を検討するよう働きかけてほしい」とコメントしています。

卵巣がん患者への抗がん剤(ゼジューラ)適用の効果予測などする新機器等を保険適用

なお12月23日の中医協総会では、次の新たな医療機器・臨床検査の保険適用も了承されています。

【新たな医療機器の保険収載】(来年(2021年)1月に保険適用予定)
▽卵巣がん患者への抗がん剤「ニラパリブトシル酸塩水和物」(ゼジューラカプセル100mg)の適用判定を補助する「myChoice 診断システム」(特定保険医療材料としては設定せず、D006-18【BRCA1/2遺伝子検査】の「1 腫瘍細胞を検体とするもの」(2万200点)とD004-2【悪性腫瘍組織検査】の「1 悪性腫瘍遺伝子検査」の「ロ 処理が複雑なもの」の「注2のロ 3項目以上」(1万2000点)の合計である3万2200点の中で評価)

▽重篤な大動脈弁狭窄などのある患者に対する経皮的心臓弁留置に用いるバルーン拡張型人工心臓弁(ウシ心嚢膜弁)システムである「エドワーズ サピエン3」(保険償還価格は451万円)



【新たな臨床検査の保険収載】(今年(2020年)12月に保険適用予定)
▽「救急搬送された患者」「集中治療を要する患者」「集中治療管理下の患者」についての重症度判定を補助する「インターロイキン-6(IL-6)」の測定(170点)

▽二次性進行型多発性硬化症患者に対し、治療薬「シポニモド フマル酸」(メーゼント錠)投与の可否や投与量についての判定を補助する「薬物代謝酵素遺伝子CYP2C9(*2/*3)」の測定(2037点)

▽ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)感染の診断を補助する「HIV-1特異抗体およびHIV-2特異抗体」の測定(660点)

薬価算定組織等のメンバーや議事録等を2021年から公開、審議の透明性を高める

このほか、年明け(2021年)から、これまで非公開であった薬価算定組織(ルールに沿って新薬価案等を議論する中医協の下部組織)、保険医療材料専門組織(ルールに沿って医療材料価格案等を議論する中医協の下部組織)、費用対効果評価専門組織(ルールに沿って費用対効果評価案を議論する中医協の下部組織)のメンバーや議事録などを公表する方針も了承されました。

審議の透明性を高める狙いがあり、支払側の幸野委員は「可能であれば新薬の保険適用論議等を中医協で行うまでに、各組織の議事録を公表してほしい。時間的に難しければ、保険適用論議において重要となる部分(例えば、「加算設定等において委員間で意見が割れた部分」「メーカーが原価開示を十分に行えない理由」「メーカーと委員との間で意見が割れた部分」など)を、ポイントを絞って示してほしい」と要望しています。



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