「経腸栄養分野の小口径コネクタ」新規格製品に問題浮上、課題解決のため旧規格製品の出荷を「2022年11月まで」認める―厚労省
2021.2.18.(木)
「経腸栄養分野の小口径コネクタ」に関する新規格製品には衛生上の問題が生じているとの指摘があり、この対応策を検討する必要がある。このため、旧規格製品の出荷は、これまで「2021年11月まで」としてきたが、「2022年11月まで」延長する―。
厚生労働省は2月16日に通知「経腸栄養分野の小口径コネクタ製品に係る旧規格製品の出荷期間の延長について」を示し、こうした考えを明確にしました(厚労省のサイトはこちら)。
新規格製品には「衛生面」の問題が生じる可能性あり
医療現場では、各種のチューブやラインを患者に接続するため、例えば「経腸栄養剤を誤って血管内に注入してしまう」といった医療事故が発生しかねません。そこで、製品分野間の相互接続(誤接続)を防止するため、コネクタの国際規格(ISO(IEC)80369シリーズ、以下「新規格」)制定が進められています。
新規格では、ベッドサイドで起こりうるコネクタ接続を、(1)呼吸器システムおよび気体移送(2)経腸栄養(3)皮下注射および血管系等(4)神経麻酔(脊椎麻酔、硬膜外麻酔および神経ブロック)(5)四肢のカフ拡張(6)泌尿器—の6種類に分類し(現時点)、異なる種類間では相互接続できない(非嵌合性)ように形状を規定します。
このうち(2)の経腸栄養分野の新規格製品は2019年12月から供給がスタートし、医療機関や介護施設では「新規製品への切り替え」や「接続用の変換コネクタ準備」が進められています。あわせて、新旧規格の混在を減らしていくために「旧規格製品の供給については、出荷を2021年11月末に終了する」こととされていました。
しかし、日本重症心身障害学会などから「重症心身障害児・者の医療的ケアにおいて新規格製品を使用した際には問題が発生する(新規格シリンジは液体を清潔に吸い取ることが非常に難しく、接続部の溝に栄養剤などが溝に残り汚染の危険性がある、など)可能性があり、旧規格製品の存続を希望する」旨の要望が示されました。薬事・食品衛生審議会でも、この点が議題となり、「基本的な方向性としては医療事故防止と安定供給確保の観点から新規格製品への切替えは引き続き進めていく」が、「重症心身障害児・者の医療的ケア等における切り替えに伴う課題の整理、対応策の検討を行うため、旧規格製品の出荷期間を延長す ることが適切」との結論が出されました。
これを受け厚労省は、次のように「旧規格製品の出荷延長」方針を固めました。
▽2018年3月16日付の通知「経腸栄養分野の小口径コネクタ製品の切替えについて」の別添で示された製品について、旧規格の出荷期間を「2022年11月末まで」延長する
▽上記製品のうち、新規格製品への変更に係る承認、認証、届出事項の変更手続きを今後実施する製品については「2022年11月末まで」その手続きを行うことを可能とする
▽上記製品のうち、既に承認、認証、届出事項を新規格に適合したものへ変更する手続きを実施した製品について、製造販売業者の判断により「旧規格製品の再供給を希望する」場合においては厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課に相談する
ただし、旧規格製品と新規格製品とが混在する期間が長くなるため「誤接続」等のリスクが高まる可能性もあります。医療・介護現場において「正しくライン接続がなされているのか」の再確認徹底などが求められるといえるでしょう。
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