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新型コロナ対策 医療崩壊の真実

医薬品等のコスト圧縮に向け、SPD・共同購入・フォーミュラリなどの取り組みを複数実施せよ―福祉医療機構

2021.3.17.(水)

医薬品等に関する費用が年々増加する中では、病院経営の安定化のためにコスト圧縮が重要である。そこでは、SPD導入・共同購入・フォーミュラリ導入などの取り組みを複数実施することが効果的である―。

福祉医療機構(WAM)が3月10日に公表した「2020 年度(令和2年度) 病院における医薬品・医療材料・医療消耗器具備品の購入に関するアンケート結果」から、こういった状況が明らかになりました(WAMのサイトはこちら)。

医薬品費等のコスト、2017→18→19年度と増加傾向

アンケートは、WAMが貸付を行っている123病院に対し、▼医薬品等の購入額の推移▼医薬品等の購入に関する組織体制▼医薬品等の購入額適正化に向けた取り組み▼新型コロナウイルス感染症禍における医薬品等の購入▼院内処方の取り組み―を聞いています。

まず「医薬品等の購入額」を見ると、医薬品については39.0%が「増加」、27.6%が「横這い」、33.3%が「減少」となり、医療材料等については54.5%が「増加」、30.1%が「横這い」、15.4%が「減少」となりました。全体で見ると、2017年度→18年度→19年度と「医薬品等の購入費用」「医業利益に対する医薬品等の購入費用の割合」は増加を続けています。

増加の理由を見ると、医薬品では▼入院、外来患者の増加▼高額な医薬品の採用・使用量の増加▼医療機能の変化、診療科の新設―など、医療材料等では▼ディスポーザブル化▼職員数の増加▼医療ガスの増加(在宅酸素等の増加)―などとなっています。

逆に、減少した理由を見ると、医薬品では▼後発医薬品の利用増▼患者数、病床数の減少▼フォーミュラリの導入―など、医療材料等では▼共同購入の実施▼手術件数の減少▼価格交渉・在庫管理の取り組み―などとなっています。

医薬品では医療機能の変化などの「内的」要因が、医療材料等では「外的」要因が目立つようです。

このうちフォーミュラリとは、医療機関等が作成した「医学的妥当性や経済性などを踏まえた医薬品使用方針」のことで、「●●疾患には第1選択としてA医薬品(特定の銘柄や成分)を使用する」といったリストのイメージです。採用医薬品を集約化することで「経営の質」が向上する(医薬品の購入コストを抑えることが可能)ことはもちろん、何よりも「医療の標準化」→「医療の質」向上という大きな効果が期待されます。

この点、個別個別の医療機関が独自にフォーミュラリを作成するよりも、地域単位で医療機関が共同してフォーミュラリを作成し、それに則ることで「より大きな効果」が生まれると考えられます。共同購入と合わせて、フォーミュラリについても地域で検討していくことが重要となりそうです。



次に「購入体制」を見てみると、「主に自院に決定権がある」ケースが9割近く、1割強が「法人本部などに主な決定権がある」状況です。また、購入担当部署を設置している病院が7割に上りますが、組織のメンバー数は1人から6人以上と多様です。

コスト圧縮に向けた取り組みの複数実施が効果的

まず「購入費の適正化(削減)目標」を設定している病院は、全体の22.0%にとどまっており、小規模病院ではさらに少なくなります(医業収益20億円未満の病院では12.0%)。病院サイドには「さらなるコスト圧縮の余地がある」ことが伺えます。

また「削減目標」は、「5%減未満」が大多数(70.4%)で、「5-10%減未満」が22.2%、「10-15%減未満」3.7%、「15-20%減未満」3.7%と続きます。

購入費を削減するには「単価の削減」が必要です。量の削減(例えば「不要な抗菌剤の使用を抑制する」など)も重要な選択肢の1つですが、「粗診粗療」を避ける必要があり、慎重な検討が必要です。

単価を下げるための取り組み内容としては、▼SPD(物品・物流管理システム)の導入:54.5%▼共同購入の実施:35.8%▼フォーミュラリによる標準化:53.7%(医薬品について)―という具合です。複数の取り組みを実施しているところもある(3項目すべて実施が17.9%)一方、「何もしていない」病院も22.2%あります。先進事例を参考に「自院にマッチした取り組み」の実施を検討する必要がありそうです。

SPDについては、自前での実施が31.4%、業者委託が68.6%です。委託費は平均で年間1352万円余りとなり、平均医業収益の0.33%に相当します。SPD導入のメリットとしては▼「過剰在庫を抱え期限切れになる」などの損失が無くなる▼物品管理の煩雑さから解放される▼購入価格の低下、人員削減▼使用分のみの支払いで済む―などが、逆にデメリットとしては▼委託業者任せとなり院内の人材が育たない▼マージン発生による費用高騰▼SPD として定数で組んでいる商品は納入してもらえるが、欠品や臨時品の発注が遅れることが多い▼医療材料の単価が高いか安いか判断が難しい―などが挙げられています。

なお、急性期病院(急性期一般入院料1-7を全体の50%以上取得する病院)において、「SPD導入の有無」と「医薬品等の医業利益に対する割合」とには明確な関係はないようです。サンプル数が少ないために、早計な判断は危険ですが、「SPD導入=医薬品等の圧縮」という構図には必ずしもなっていないようです。

また共同購入については、▼規模のメリットで単価が抑えられる▼購入のハードルが下がる(購入単位による制限が少ない)▼ベンチマークの入手により価格交渉がスムーズに進む―というメリットがある一方で、▼品目が限定される▼交渉に時間がかかる▼病院の規模や患者層の違いに対応できない▼共同購入の医療材料、医薬品については価格が決定しているため、それ以上の価格交渉ができない―というデメリットもあります。

フォーミュラリ等による標準化でも、地域単位で進める場合には同様のメリット・デメリットが相当され、「まず自院で導入する」ことが第1選択となるかもしれません。なお、サンプル数は限られますが、「フォーミュラリの導入を行った急性期病院」では、そうでない急性期病院に比べて「医薬品等の医業利益に対する割合」が低くなっており、「コスト圧縮」に一定の効果がありそうです。

WAMでは、「医薬品等の購入額の適正化のための取組みは1つだけよりも複数実施していたほうが高い効果が得られる」と分析しています。

医薬品購入費適正化に向けた取り組みを複数実施すると効果が出やすい



なお、コロナ禍では、とりわけ医療材料等について、ほとんどの病院で「購入単価・購入量とも増加した」状況です。医療材料等の「安定供給」に向けた対策が今後も重要となってきます。



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