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社会福祉法人、従業者1人当たり収益増が人件費増を上回り、効率的な経営が進む—WAM

2021.1.8.(金)

2018年度から19年度にかけて、社会福祉法人の「従業者1人当たり人件費」の増加(5万8000円)に対して、「従業者1人あたり収益」の増加(6万8000円)が上回っており、効率的な経営が進められている状況が伺える―。

ただし、社会福祉法人としての収益性は2018年度から19年度にかけて悪化も好転もしていない—。

福祉医療機構(WAM)が1月6日に公表した「2019年度(令和元年度)決算 社会福祉法人の経営分析参考指標」の概要から、こうした状況が明らかになりました(WAMのサイトはこちら)。2020年度に入ると新型コロナウイルス感染症の影響(介護サービス利用者の減少など)が出てくるため、経営状況は厳しくなると予想されます。

2019年度における社会福祉法人の経営状況

社会福法人の収益率は、2018から19年度にかけて横這い

WAMでは、経営資金を融資している社会福祉法人から財務データ等の提供を受け、法人経営を考える際の拠り所となる「経営分析参考指標」を毎年度公表しています。2019年度には8386の社会福祉法人からデータ提供を受けています。指標の中から目立つものをピックアップしてみます。

まず、社会福祉法人の経営状況を見る指標の代表格と言える「サービス活動収益対サービス活動増減差額比率」は、2018年度に2.9%、19年度に2.9%となり、増減はありませんでした。「サービス活動収益対サービス活動増減差額比率」は「サービス活動増減差額÷サービス活動収益」で計算され、この数値が高いほど「収益性が高い」と、低いほど「収益性が低い」と言えます。

社会福祉法人全体として、2018年度から19年度にかけて経営状況は悪化も好転もしていない、と考えられます。ただし、2020年度には新型コロナウイルス感染症の影響(介護サービス等の利用控えなど)が現れるため、収益性は相当程度低くなると予想されます。



収益と支出(コスト)との関係は、次の4パターンに整理できます。
(1)収益が上がり、コストが下がる
(2)収益が上がり、コストも上がる
(3)収益が下がり、コストも下がる
(4)収益が下がり、コストが上がる

このうち(1)では収益性が確実に高まり、(4)では収益性が確実に低くなります。(2)と(3)では、両者の度合いにより収益性が高まることも、低くなることもあります。収益を高め、コストを下げることが経営安定に向けた王道と言え、社会福祉人でも営利法人でも基本的には同じ構造です。

収益を見る代表的な指標と言える「従事者1人当たりサービス活動収益」は、2018年度は587万7000円であったのに対し、2019年度は594万5000円となり、6万8000円の増加となりました。

これに対し、「従事者1人当たり人件費」は、2018年度は394万2000円であったのに対し、2019年度は400万円となり、5万8000円増加しています。

スタッフ1人当たりで見ると、「コスト増(人件費増)」に対し「収益増」の額が1万上回っており、「効率的な事業運営が進んでいる」ことが伺えます。社会福祉法人ではコストの7割弱が人件費を占めています。上述の(1)から(4)に照らし「経営安定化のためにコスト減が必要である。シェアの大きな人件費を圧縮しよう」と安易に考えることは、「給与減→モチベーションの低下→介護サービス等の質悪化」に繋がり、結果として「収益の減少」にもつながりかねません。

この点、2018年度から19年度の状況を見ると「スタッフ1人1人が、給与増(コスト増)を上回る収益増を実現できている」と考えられ、理想的な経営改善方向に進んでいると見ることができそうです。しかも、1法人当たりのスタッフ数は増加(2018年度:105.6人→2019年度:111.1人)しており、効率的な経営が相当程度進んでいると評価することができそうです。

2019年度における社会福祉法人の人材確保状況



今後は、上述した「サービス活動収益対サービス活動増減差額比率」の上昇に向けた取り組み(例えば介護保険事業所であれば、加算取得を目指すなど)をさらに充実していくことなどが重要でしょう。なお、アウトソーシングも進んでおり、委託費等の状況とセットでのより詳しい分析にも期待が集まります。



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