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健保組合の後発品割合、2021年6から7月にかけて減少、地域間の格差も大きい—健保連

2022.3.10.(木)

昨年(2021年)7月時点で、健康保険組合における後発医薬品の使用割合(調剤ベース)は82.1%であるが、「6月から7月にかけて0.6ポイントも減少している」「都道府県間のバラつきが大きい」などの問題点がある―。

健康保険組合連合会が3月8日に発表した「後発医薬品の普及状況」(数量ベース)【令和3年7月診療分】から、こういった状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。

後発品割合の伸び悩みは「後発品の供給不安」によるところが大きいと考えられ、「安定供給」に向けた関係者の努力に期待が集まっています。

調剤ベースでは8割を超えているが、医科・DPCなど含めた場合には厳しい状況も

医療技術の高度化(例えば脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似した、やはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場)が進み、医療費は大きく膨張を続けています。

また、少子高齢化の進展(来年度(2022年度)から団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となる。その後2040年度にかけて高齢者の増加ペース自体は鈍化するが、現役世代人口が急速に減少する)により、やはり医療費は膨張し、その一方で支え手となる現役世代が減少していきます。

このように、我が国の医療保険財政は厳しさを増しており、「医療費の伸びを、我々国民が負担できる水準に抑える」(医療費適正化)ための取り組みが欠かせない状況となっています。

政府は、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます。

このうち後発品に関しては、昨年(2021年)6月18日に閣議決定された骨太方針2021(経済財政運営と改革の基本方針2021)で「後発医薬品の数量シェアを、2023年度末までに全ての都道府県で80%以上とする」との目標が確認しています。



主に大企業のサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合全体でも後発品割合の向上に向けて取り組んでいますが、昨年(2021年)7月時点では「82.1%」であることが示されました(調剤分)。

この数字を見ると「調剤ベースでは80%をクリアできている」と見ることもできますが、次のように2つの課題があります。

(1) 調剤ベースの健保組合後発品割合は、昨年(2021年)に入ってから伸び悩み、6月から7月にかけては0.6ポイントも「減少」してしまっている

健保組合の後発品割合(調剤)は昨年(2021年)6月から7月にかけてダウンしてしまった(健保組合後発品割合(21年7月)1 220308)



(2) 都道府県別にみると大きなバラつきがあり、▼東京都▼京都府▼徳島家▼香川県▼高知県―では80%をクリアできていない

健保組合の後発品割合(調剤)は都道府県間のバラつきが大きい(健保組合後発品割合(21年7月)2 220308)



また、これらの数字は「調剤」ベースであり、調剤・医科・DPC・歯科分の合計でみると低くなると考えられることから、(1)(2)の問題点はより深刻であると言えます。

このうち(1)の問題は、「後発品の供給不安」が根底にあると考えられます。後発医薬品をめぐっては「一部メーカーによる不祥事」(関連記事はこちらこちら)などに端を発し、供給停止・出荷調整が頻発(A医薬品が出荷停止になると、代替薬であるA1医薬品のニーズが高まり品薄になる、そして次なる代替品A2医薬品のニーズが高まり・・・と連鎖していく)。このため医療機関・薬局の責に帰せない事情により「後発品割合を維持・向上することが困難」な状況が生じているのです。厚労省は診療報酬上の手当て(供給不安になっている品目を加算算定のベースから除外することを認めるなど、関連記事はこちら)を行っていますが、「供給不安そのものを解消するための取り組み」も求められています。

また(2)の都道府県間のバラつきは、協会けんぽ(主に中小企業の会社員とその家族が加入)でも同様で、例えば▼後発品割合が進んでいる地域(沖縄県など)の取り組み内容を参考にする▼医療機関や薬局での情報提供、働きかけを強化する―などの対応を強化していくことが重要です(関連記事はこちら)。

上述のように「医療保険の安定的な運営確保」という重要テーマが根底にあることを関係者全員がしっかりと理解する必要があります。



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