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GemMed塾 「看護必要度」新制度シミュ―レーション

ウクライナ情勢を受け貴金属価格が急騰、歯科用貴金属価格を5月に緊急改定―中医協総会

2022.4.13.(水)

ウクライナ情勢を受け、貴金属、とりわけパラジウムの価格が今年(2022年)に入ってから急騰している。価格変動に柔軟に対応するルールを2022年度診療報酬改定で導入したが、そこでの想定をはるかに超える価格急騰が生じており、「特例的な緊急の歯科用貴金属の材料価格改定」(引き上げ)をこの5月1日(2022年5月1日)に行う―。

4月13日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした方針が決定しました。他国の戦争が「我が国の保険診療」にも影響を及ぼしている点に少なからず驚愕を覚えます。

ウクライナ情勢を受けた「過去に例を見なく貴金属価格の急騰」に特例的に対応

歯科医療においては、義歯やインレー(詰め物)、冠(かぶせ物)などで貴金属を多く使用します。貴金属の価格は様々な要素で変動するため、従前、定期的に「価格変動が一定以上の場合に償還価格を見直す」というルールが設定されていました(最大で年4回、ただし価格変動が一定に満たない場合には改定しない)。価格見直しを行わなければ、貴金属価格が高騰する中では「歯科技工所や歯科医療機関の持ち出しが生じてしまう」、逆に貴金属価格が下落する中では「保険者や患者サイドの負担が相対的に増加してしまう」事態を招いてしまうためです。

さらに昨春(2021年)に「価格が著しく変動する」事態が生じ、歯科医療現場から「より柔軟に償還価格見直しを行ってほしい」との強い要望があったことなどを受け、2022年度の今回診療報酬改定で次のような「歯科用貴金属の償還価格ルール」見直しが行われました。「1年度に4回、価格変動幅が大きな場合はもちろん、価格変動幅が小さくとも価格改定が必ず行われる」こととなり、より柔軟に「実勢価格に応じた償還価格に見直す」ことが可能となったのです。

(従前)
▽平均素材価格(前回の改定から改定3か月前までの平均価格)が「一定以上変動」した場合に償還価格を改定する

(2022年度改定後)
▽変動幅に関わらず、平均素材価格(前回の改定から改定前2か月前までの平均価格)に応じて年4回(4月、7月、10月、1月)に償還価格を改定する

2022年度診療報酬改定で歯科用貴金属の償還価格を柔軟に改定する仕組みが設けられた(中医協総会4 220413)



ところで今般、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発し世界情勢が不安定となる中で、貴金属、とりわけパラジウムの価格がこれまでにない「急騰」を見せています。

上記の新ルール(2022年度改定)に則れば、この7月(2022年7月)に価格引き上げなどの対応が行われることになりますが、厚生労働省保険局医療課の宮原勇治歯科医療管理官は、▼2022年度改定で想定していない特殊事情による価格高騰が生じている▼価格高騰のスピードが急激である▼歯科医療現場から大きな悲鳴が出ている―といった点に鑑み、「7月の価格改定を待たずに、この5月1日(2022年5月1日)に次のような緊急改定を特例的に行ってはどうか」ことを提案しました。

(ウクライナ情勢を踏まえた特例的な緊急改定)
▽今年(2022年)1-3月の平均素材価格を用いて算出した価格に改定する(2022年5月1日から下表の最右段の価格に改定する)

5月に緊急価格改定が行われる(最右段の価格への見直し)(中医協総会3 220413)



この提案に対し診療側委員は歓迎の意を示しましたが、松本真人委員(健康保険組合連合会理事)や安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)ら支払側委員は「状況は十分に理解できるが、『価格変動への柔軟な対応』を可能とするために2022年度改定で新ルール(上述)を創設した。7月には価格変動を踏まえた見直しが行われるのでそれを待つべきではないか。なぜ特例的な緊急改定を行われなければならないのか」と疑問を提示。同じく支払側の間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)や末松則子委員(三重県鈴鹿市長)は「患者負担増にもつながる」点を心配しました。

この点、宮原歯科医療管理官は次のような特殊事情を改めて説明。当初難色を示した支払側委員も、この説明を受けて提案内容を了承しました。ただし「こうした特例を繰り返せば保険制度・診療報酬制度への信頼が失われてしまう、今回限りの対応としてほしい」と注文しています。

▼2022年度改定で新ルール(上述)を創設した際には、想定しえなかった事態(ウクライナ情勢)が生じている

▼価格急騰の程度が著しい(例えば、一般に使用される「金12%以上の金銀パラジウム合金」の平均素材価格(下図の緑色の折れ線グラフ)を見ると、「2021年3-5月の価格上がり幅」(350円増)に比べ「2022年1-3月の価格上がり幅」(610円増)は2倍程度(1.7倍)と大きい)

▼歯科医療現場からの要請も強い

▼補助金などでの対応は現在のところ政府与党で検討されていない

▼特例改定による患者負担増は、大臼歯(奥歯)の複雑なインレー(一般的な「金12%以上の金銀パラジウム合金」の詰め物)の材料について180円程度にとどまる(現行の材料費2000円程度が180円程度アップする形)

ウクライナ情勢を受け、今年(2022年)1-3月に急激に貴金属、とりわけパラジウム価格が高騰している(中医協総会2 220413)



もっとも5月の緊急価格改定までに時間がない(2週間強)ため、診療側の林正純委員(日本歯科医師会常務理事)は「周知を十分に行い、歯科医療現場に混乱が生じないようにしてほしい」と注文しています。歯科医療機関においても「患者への丁寧な説明」が強く求められることは述べるまでもありません。

なお、5月に緊急改定が行われたのち、この4月(2022年4月)の実勢価格を踏まえて「7月(2022年7月)に通常の新ルール(上述)に沿った償還価格改定が行われる」ことになる点にも留意が必要です(さらなる価格急騰が確認されれば「さらなる償還価格引き上げ」となる可能性、逆に価格下落が確認されれば「償還価格引き下げ」となる可能性がある)。

5月に緊急価格改定を行った後、2022年4月の実勢価格をもとに、7月(2022年7月)に再び価格改定が行われる(中医協総会4 220413)



関連して、支払側の間宮委員は「貴金属の代替材料(セラミックなど)の開発・保険適用を進めるべき」とも提案しています。この点、貴金属の代替材料についての研究・保険適用は順次進められてきており、宮原歯科医療管理官は「安全性・有効性を確認したうえで保険適用を進めている」旨を明確にしています。



このほか4月13日の中医協総会では、▼新薬(8成分・11品目)の保険適用(4月20日に薬価基準収載予定)▼抗がん剤「エンハーツ」の費用対効果評価にかかる価格見直し(現在:100mL1瓶16万8434円 → 2022年7月以降:同16万4811円)▼DPCにおける高額新薬の出来高対応(高額な新薬、高額薬の適応拡大など)▼DPC病院の合併(国立病院機構弘前病院+弘前市民病院)▼偏頭痛発作抑制に用いる「エムガルディ皮下注」の在宅自己注射指導管理料・対象薬剤への追加―などが了承されました。



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