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多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術、実施に当たっての留意事項や徴収料金の考え方整理—日本眼科学会

2022.5.12.(木)

「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は、適応症例の決定、術前検査、患者説明、術後経過観察の注意点などにおいて単焦点眼内レンズとはかなり異なる。メリットだけでなくデメリットもあるため、基本知識をよく理解し適正使用に努める必要があり、要件を満たした医師が、適切な患者を選択し実施する必要がある—。

また2020年度から選定療養に位置づけられており、患者からは保険診療部分(3割負担)のほか▼多焦点眼内レンズに係る差額▼追加検査の費用▼術前の患者説明に関わる手数料—を徴収可能であり、分かりやすく院内掲示する必要がある—。

日本眼科学会は5月11日、「多焦点眼内レンズに係る選定療養の運用について(第2版)」を示し、こうした点に留意するよう呼びかけました(学会のサイトはこちら)。

学会の定めた指針など遵守し、適切な患者に実施を

2020年度から「老視矯正(多焦点)眼内レンズを用いた水晶体再建術」が先進医療から除外されました。「疾病に対する治療」という観点からの既存治療に対する優越性が示されていないことを踏まえたものです。

ただし「白内障に対する水晶体再建術における、眼鏡装用率の軽減効果を有する多焦点眼内レンズ」の使用は、通常の水晶体再建術に係る保険診療との併用を認める「選定療養」に位置づけられました。自由診療であれば一連の治療すべてが自費となるところ、選定療養となったことから「水晶体再建術は保険診療で3割負担」+「多焦点眼内レンズ使用は10割負担」という取り扱いとなります(関連記事はこちらこちらこちら)。

学会では、この選定療養の運用について、(1)学会の定める指針の遵守(2)多焦点眼内レンズに関する研修(3)対象となる眼内レンズ(4)患者から徴収する料金(5)掲示と報告—の5点について考えを示しています。

まず(1)では、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術を実施する場合には、日本眼科学会が策定した多焦点眼内レンズに係る選定療養に関する指針を遵守することを求めています。指針では、例えば「白内障による視機能障害を有し,術後になるべく眼鏡装用をせずに生活したいと希望し、多焦点眼内レンズのメリット・デメリットを理解できている」患者を対象とし、▼術後視機能に影響を与える角膜疾患、ドライアイ、緑内障、ぶどう膜炎、網膜疾患、視神経疾患などの眼合併症を有するケース▼弱視▼Zinn小帯脆弱▼重度の小瞳孔▼白内障を有しない症例における屈折矯正を目的とした refractive lens exchangeは—は対象とならないこと、実施医師には▼専ら眼科に従事し、眼科経験が5年以上ある▼眼科専門医である▼水晶体再建術について100症例以上の経験がある▼日本眼科学会が実施する「多焦点眼内レンズの基本知識および適正使用に関する研修」を修了している—などの要件を満たすべきことなどが示されています。



また(2)では、上述の医師要件の1つである研修(多焦点眼内レンズに関する基本知識および適正使用についての受講を明確に求めています。そこでは、「多焦点眼内レンズは独特な光学特性を有し、適応症例の決定、術前検査、患者説明、術後経過観察の注意点などにおいて単焦点眼内レンズとはかなり異なる。メリットだけでなくデメリットもあることから、使用に先立って基本知識をよく理解し適正使用に努める必要がある」ことを強調しています。



他方、(3)の対象レンズについて学会は、「薬事承認された多焦点眼内レンズ」のうち▼眼鏡装用率の軽減効果を有するとして承認されたもの▼先進医療の枠組みで評価を受けたもの—のみが対象になるとしています。



さらに、(4)の患者から徴収する料金に関しては「次のように計算してはどうか」との考えを示しています。

▽医科診療報酬点数表のK282【水晶体再建術】の「1 眼内レンズを挿入する場合」の「ロ その他のもの」(1万2100点)の部分が医療保険の給付対象となり、「眼鏡装用率の軽減に係る部分」が特別料金として患者から徴収可能となる

▽患者から徴収する料金は、次のように計算する((a)から(c)の合計額を患者が徴収する)
(a)多焦点眼内レンズに係る差額
→多焦点眼内レンズの購入価格(製品毎)から、保険診療での水晶体再建術で使用している眼内レンズ(自施設で使用しているもののうち主なもの)の購入価格を差し引く

(b)本療養に必要な検査の費用
→通常の水晶体再建術における術前検査に含まれず、かつ本療養に必要と考えられるものとして▼D265-2【角膜形状解析検査】(105点を患者1人につき月1回に限り算定可)▼D263-2【コントラスト感度検査】(207点を患者1人につき手術の前後においてそれぞれ1回に限り算定可)—の2つがある

(c)術前の患者説明に関わる手数料
→多焦点眼内レンズの特性や適応など、術前に十分な患者説明を行う必要があることから、その分を手数料として加算することができる(医療従事者の時給額の0.5-1時間分を目安とする)

多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術における費用負担の考え方(日本眼科学会)



なお、(5)では、▼患者から徴収する料金をそれぞれの製品について、本療養の趣旨も含めて、院内の見やすい場所に患者にとって分かりやすい方式で掲示する▼本療養を実施する場合(内容を変更する場合も含む)は、患者から徴収する料金等の内容について、地方厚生(支)局長に報告する(多焦点眼内レンズ(製品毎)の購入価格と、通常の水晶体再建術で使用している主な眼内レンズの購入価格を示す資料の添付が必要)▼本療養を実施した場合は、毎年、その実施状況を地方厚生(支)局長に報告する—ことを求めています(必須事項)。



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