DPCでは「別個」でも、一般則で「一連」となる入院、【救急医療管理加算】等の算定不可―中医協総会(3)
2019.12.16.(月)
DPC制度上、再入院7日ルールによって「別個の入院」と扱われる入院であっても、診療報酬算定の通則上「一連として通算する」入院については【救急医療管理加算】や【栄養サポート体制充実加算】などの算定はできないことを明確化する―。
12月13日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こうした点も固められました。
目次
再入院7日ルールでDPCでは「再入院」扱いとなるが、一般測で「一連」とされる入院
2020年度の次期診療報酬改定に向けて、中医協総会では「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」(HBOC)対応の方針や入院医療について議論しました。Gem Medでは、すでに▼重症度、医療・看護必要度の記録▼特定機能病院に係る評価―についてお伝え済です。ここでは、その他の項目について見ていきましょう。
DPC制度では、入院基本料や投薬、検査などの費用を包括した点数が1日単位で設定されており、入院期間に応じて低くなっていきます(逓減性)。しかし一部に「一度、患者を退院させた数日後に再入院させることで入院期間をリセットし、再び高い点数を算定する」事例が生じたため、「一定期間以内の再入院は、一連の入院として入院期間を通算する」というルールが設けられています。具体的には、▼二度目の入院の「入院の契機となった傷病のDPCコード上2桁」が、一度目の入院の「医療資源を最も投入した傷病のDPCコード上桁」が同一の場合▼「入院の契機となった傷病のICDコード」が定義テーブルに定義されていないICDコードの場合―であって、一度目の退院から二度目の入院までは7日以内の場合には、両入院は一連として入院期間等が通算されます。
逆に言えば、一度目と二度目の入院が同じDPCコードであっても、その間に8日以上の期間があれば、「別の入院」と扱われることになります。
一方、診療報酬上、入院料等の通則(出来高ルール)では「一旦治癒に近い状態になって再発した場合、退院日から3か月以上経過した場合を除き、初回入院日を起算日として入院期間を通算する」ルールが設けられています。例えば、一度目と二度目の入院との間に8日以上の期間があっても「同じ入院」と扱われるのです。この場合、【栄養サポート体制加算】や【救急医療管理加算】、【がん拠点病院加算】などは、二度目の入院時には算定できないこととされています。
このDPCルールと出来高ルールの取り扱いの違いにより、例えば「8日間の期間を開けた再入院」について▼出来高病院では「一連」と扱われ【栄養サポート体制加算】などを算定できない▼DPC病棟では「別の入院」となるため【栄養サポート体制加算】などを改めて算定しているケースがある―ことが分かりました。同じ入院であるにもかかわらず「不合理」な状態となっています。
そこで厚生労働省保険局医療課の森光敬子課長は、この点について「DPCの再入院7日ルールによって『別の入院』と扱われるケースでも、出来高の入院料等通則に照らして『同一の入院』とされる場合には、【栄養サポート体制加算】等の二度目の算定は認めない」ことを明確化する考えを提示。中医協委員もこの方向に賛同しています。DPC病院に置かれては、「自院の再入院と加算算定状況」を再度確認しておく必要があります。
費用対効果評価の対象となる医薬品等を用いた治療、DPCでは出来高算定に
このほかDPCについて、「費用対効果評価の対象となる医薬品」等、「当該医薬品等を比較薬として算定したもの」を使用する場合、該当する診断群分類において出来高算定とすることも決まりました。
高額な新薬が保険適用された場合、「直近の改定までは出来高算定とする」ルールがあります。既存のDPC点数にはその薬価が反映されていないため、包括対象とすれば「病院側に大きな負担となってしまう」ためです(直近の改定において、包括点数に組み入れるか、新たな分岐を設けるか、出来高算定を継続するかなどを決定する)。
この費用対効果評価の対象となった医薬品・医療材料については、「一度、薬価等を設定するが、それは暫定価格とし、一定期間後にデータを踏まえて費用対効果評価を行い、薬価等を設定しなおす」こととされています。このためDPC制度においても、薬価等が正式に確定するまで当該医薬品等について出来高算定とするものです。
具体的には、2020年4月の次期改定前に「費用対効果評価の対象となった新薬等」については、価格調整(正式な薬価等確定)を待ち、2022年度改定でその取扱い(包括点数に組み入れるか、新たな分岐を設けるか、出来高算定を継続するかなど)を決めることになり、それまでの間は「出来高算定」となります(当該医薬品等の価格だけでなく、診療行為すべては出来高算定となる)。
データ精度を評価する「提出データ評価加算」、200床以上病院での廃止も検討
Gem Medで既にお伝えしていますが、許可病床200床未満の病院が設置する「療養病棟」や「回復期リハビリテーション病棟(入院料5・6)」においてもデータ提出義務が拡大される方向が検討されています。粗診新療により患者に不利益が生じていたりしないか、医療の質低下が生じていはしないか、などを確認するとともに、「エビデンスに基づく診療報酬改定」に向けた重要資料としても活用されます。
これらデータは、当然のことながら「正確性」が非常に重要となります。このため2018年度の前回診療報酬改定では、入院・外来の双方の診療データ提出を求める【データ提出加算2】を取得する病院において、▼DPCデータの様式▼DPCデータの外来EFファイル▼診療報酬明細書―のデータの「未コード化傷病名が10%未満」である場合には【提出データ評価加算】(20点)の上乗せが認められています。
この点、データの正確性を表す指標と言える「未コード化傷病名」割合を、200床未満病院と200床以上病院とで比較すると、前者は平均7.85%、後者は平均3.15%と、「200床未満病院でデータがより正確である」ことが分かりました。
こうした状況を踏まえて森光医療課長は【提出データ評価加算】の在り方を見直す考えを示し、例えば▼200床未満病院において、「未コード化傷病名」割合要件を「5%以下」に設定する(より正確なデータ提出を目指し、平均よりも厳しい基準とする)▼200床以上病院において、【提出データ評価加算】を廃止する(すでに正確性は相当程度担保されている)―ことなどを提案しました。
これに対し、支払側委員は賛意を示しましたが、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「200床未満病院では「未コード化傷病名」割合に大きなバラつきがあり、「5%以下」への厳格化は難しい。経過措置などを十分に設ける必要がある」と、また同じ診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は「200床未満病院のバラつきを見ると、2020年度改定での見直しは避けるべき」との考えを示しています。今後の調整に注目する必要があるでしょう。
「医療資源の少ない地域」の診療報酬特例、対象地域を見直しへ
このほか12月13日の中医協総会では、次のような方向も概ね固められています。ただし、「医師偏在指標」の活用について診療側の松本委員から「問題があるのではないか」との指摘も出ており、詳細は今後を待つ必要があります。
▽診療報酬の届け出等にかかる要件緩和等が行われる「医療資源の少ない地域」について、「医師偏在指標」(人口10万対医師数に人口や医師の高齢化状況などを勘案した指標、医師確保計画等において大きな意味を持つ)などを用いて対象地域を見直す(厚労省の試算では、該当地域は30医療圏で継続され、新たに5医療圏が該当し、11医療圏が該当しなくなる)とともに、現在、当該要件等が緩和されている医療機関について一定の配慮を行う
▽へき地医療拠点病院における配慮要件(遠隔画像診断、医療機関間連携による病理診断に関する施設基準)を、「医療資源の少ない地域」の医療機関にも適用する
▽【地域加算】の経過措置の対象地域となっている7地域について、現状の取扱いを踏まえ、人事院規則で定める地域に準じる地域に定める
▽「老視矯正(多焦点)眼内レンズを用いた水晶体再建術」が先進医療から除外される(「疾病に対する治療」という観点からの既存治療に対する優越性が示されていない)ことを踏まえ、「白内障に対する水晶体再建術における、眼鏡装用率の軽減効果を有する多焦点眼内レンズ」の使用を選定療養に位置付け、通常の水晶体再建術に係る保険診療との併用を認める
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