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外来診療 経営改善のポイント 2024年度版ぽんすけリリース

慢性腎疾患患者への「腎移植の選択肢もある」などの情報提供を促進せよ―中医協総会(2)

2019.10.10.(木)

 我が国では「血液透析」が数多く行われているが、患者へのメリットの大きな「腎移植」を推進するよう、医療機関が慢性腎疾患患者に「腎移植などの治療法もある」旨をきちんと説明するよう促していく必要がある―。

 また血液透析については、合併症治療薬の後発品が出現していることなどを踏まえた評価の適正化、シャント形成術の点数適正化と算定要件の柔軟化を検討すべきである―。

10月9日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういった議論も行われています。

10月9日に開催された、「第425回 中央社会保険医療協議会 総会」

 

腎移植の推進に向け、患者への情報提供促進を

 お伝えしているとおり、10月9日の中医協総会では、2020年度の次期診療報酬改定に向けて▼がん対策▼腎代替療法▼移植医療―の3テーマを議題としました。本稿では「腎代替療法」と「移植医療」に焦点を合わせます。

 腎代替療法については、大きく▼腎移植▼腹膜透析▼血液透析―の3種類が知られています。それぞれにメリット・デメリットがあり、患者の状況などを踏まえて適切に選択することが必要です。例えば、血液透析は手術(後述)は小さなもので済みますが、「生活の制約が大きく、週3回の通院(透析)が必要になる」というデメリットがあります。一方、腎移植には大手術(移植手術)が必要ですが、「生活の制約はほぼなく、通院回数も少ない(移植後1年間に、月1回程度)」というメリットがあります。この点、我が国では、極端に血液透析に偏っており、患者が「適切な治療の選択肢に関する情報を得られていない」可能性があります。

腎代替療法の比較(中医協総会(2)2 191009)

 
こうした状況を是正し、患者にマッチした腎代替療法選択を促進するため、2018年度の前回診療報酬改定では、例えば▼「患者の希望に応じ、適切に腎移植に関する相談に応じており、かつ腎移植に向けた手続きを行った患者が過去2年間で1人以上いる」ことなどを施設基準とする【導入期加算2】(【人工腎臓】の加算)、【腎代替療法実績加算】(【慢性維持透析患者外来医学管理料】の加算)新設▼腹膜透析の推進に向けた、腹膜灌流に係る費用を入院料とは別に算定可能とする(包括の見直し)―などが行われました。

2018年度診療報酬改定(腎移植の推進)(中医協総会(2)1 191009)

 
この点について、厚生労働省保険局医療課医療技術評価推進室の岡田就将室長は、我が国において▼腎移植はいまだ十分に進んでいない(生体腎移植は年間1500件程度、献腎移植(脳死・心停止下)は年間200件程度)▼献腎移植登録も少ない(55歳未満の透析患者約4万8000名のうち、登録者1万2449名・25.9%)―という状況をさらに強力に是正する必要があるとし、「人工腎臓等の評価について、腎移植の現状を踏まえ、『慢性腎臓病の患者に対し、移植を含めた腎代替療法に関する情報提供をより推進する』観点から評価を⾒直す」ことを検討してはどうかと提案しています。多面的に「移植という選択肢(第1選択)があり、QOLも高く、また生命予後も良い」ことなどを情報提供することを評価等するとともに、こうした情報提供のない人工腎臓の点数については「引き下げ」が検討される可能性もあるでしょう。

この方向に中医協委員から異論は出ておらず、今後、具体的な仕組みの検討が進められる見込みです。なお、診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)は「移植希望者への情報提供」だけでなく、「臓器提供そのものが増えるような仕掛けが必要ではないか」との考えも示しています。

腹膜透析と血液透析、別施設で実施した場合にも点数算定を認めてはどうか

 腹膜透析は、腎代替療法の中ではメリット・デメリットともに「腎移植と血液透析との中間に位置する」ものと言えるでしょう。「腎移植よりも小さな規模の手術」で、「血液透析よりも高いQOLを得られる」と見ることも可能です。

 ただし、腹膜の機能が低下した場合、透析効率も下がってしまうことから「腹膜透析と血液透析とを併用する」ケースがあります。

この点、併用には高度な医学的管理が必要になることや医療安全の確保などの点を考慮し、現在は「同じ施設での併用」のみが評価されています。逆に言えば、腹膜透析を実施する施設(C102【在宅自己腹膜灌流指導管理料】を算定する施設)以外の施設が、当該患者に人工腎臓や連続携行式腹膜灌流を行っても、それらの所定点数は算定できないのです。

腹膜透析と血液透析の併用の評価(中医協総会(2)3 191009)

 
しかし、そもそも「腹膜透析」を実施できるのは透析施設全体の16.7%に過ぎず(都道府県別では6.3-37.5%)、また日本透析医学会等の調べによれば「併用療法(腹膜透析+血液透析)患者の半数近くが何らかの影響を受け、その多くは『通院への制約等の理由による施設変更』を、また一部患者では『血液透析への移行』を余儀なくなされた」という課題があります。

岡田医療技術評価推進室長はこうした状況を踏まえ、医療安全等を十分に確保した上で「⾃施設以外でも⾎液透析が実施可能となるよう要件等を⾒直す」ことを検討してはどうかと提案しました。

この提案にも中医協委員からは特段の異論は出されず、今後、「別の施設で両者を実施する場合に、医療安全等を確保するための方策」などを具体的に検討していくことになります。

エリスロポエチン製剤の後発品出現など踏まえ、人工腎臓の点数適正化へ

 血液透析については、岡田医療技術評価推進室長から、いくつかの論点が提示されています。

まず、代表的合併症である「腎性貧⾎」治療が重要となるため、【人工腎臓】の点数の一部に、治療薬である「エリスロポエチン製剤」「ダルベポエチン製剤」の費用が予め織り込まれています。今般、「エリスロポエチン製剤」(ダルベポエチン)について、後発バイオ医薬品(いわゆるバイオセイム)・バイオ後続品(いわゆるバイオシミラー)が登場したことから、製剤の実勢価格等を踏まえた「評価の⾒直し」(つまり点数の引き下げ)を検討することが提案されました。

ダルベポエチンの後発品(中医協総会(2)4 191009)

 
また、「腎性貧⾎」治療について新たな作用機序の新薬(HIF-PHD阻害薬)が薬事承認されたことを受け、当該薬を用いる治療について「どのように診療報酬で評価するか」を検討する必要があります。

新たな腎性貧血治療薬の薬事承認(中医協総会(2)5 191009)

 
併せて、療養病棟において「入院基本料とは別に⼈⼯腎臓が出来⾼で算定できる」ことを踏まえ、「HIF-PHD阻害薬も出来高で算定できる」取り扱いとすることも検討されます(療養病棟入院基本料では薬剤料が包括評価されるため、通常であれば内用薬であるHIF-PHD製剤は包括評価となる)。

バキュラ―アクセスの概要(中医協総会(2)6 191009)

 
 
さらに、血液透析を実施する際の小手術・処置(K610-3【内シャント又は外シャント設置術】、K616-4【経皮的シャント拡張術・血栓除去術】、A400【短期滞在手術等基本料3】の「3 (リ)経皮的シャント拡張術・血栓除去術」)について、▼評価の適正化(多くが外来で実施され短時間で可能な手技である)▼算定制限の見直し(3か月に1度しか算定できないが、一部に狭窄等が生じやすく、高頻度に手術を行う必要のある患者がいる)―を検討することも重要な論点です。

 
これらにも明確な異論・反論は出ておらず、今後、具体的な見直し内容の検討が進められます。

移植医療、医療機関に「患者・家族への臓器提供の説明等を行う」よう求めよ

 「移植医療」については、岡田医療技術評価推進室長から次のような課題が示されました。

▽移植件数は横ばいから減少傾向にあるが、成績は極めて良好である

▽「脳死下の移植」評価に比べて、「心臓死下の移植」の評価が低すぎるとの指摘がある

移植医療の概要(中医協総会(2)7 191009)

脳死下臓器移植の診療報酬(中医協総会(2)8 191009)

心臓死下臓器移植の診療報酬(中医協総会(2)9 191009)

 
▽医療機関から患者・家族への臓器提供に関する選択肢提示が重要だが、負担(説明、脳死判定、ドナーの全身管理、関係者との調整など)が大きいようで、臓器提供に関する選択肢提示が十分に行われていない

臓器提供について多くの医療機関では患者・家族に情報提供していない(中医協総会(2)10 191009)

 この点、診療側の島委員は「心臓死下移植では、脳死判定こそ実施しないが、医療従事者には様々な負担があり、現行点数では十分に評価されていない」と指摘。医療施設への選択肢提示に関する教育を進め、患者にも「臓器提供」を普及啓発していくことが重要と強調しました。

また診療報酬が「臓器提供に関する選択肢提示が行われない」遠因になっているとも考えられ、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「国民の理解を得て、診療報酬での十分な評価を行うべき」と訴えています。

【更新履歴】島委員の所属について「日本病院会常任理事」と記載しておりましたが、正しくは「日本病院会副会長」です。大変失礼いたしました。お詫びして訂正いたします。記事は訂正済みです。

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