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病院病棟への「介護福祉士配置とその評価」を正面から検討すべき時期に来ている―入院医療分科会(3)

2019.10.7.(月)

 療養病棟はもちろん、急性期の一般病棟においても、入院患者の高齢化が進んでおり、介護業務が増加している。多忙な看護師の負担を軽減するためにも、介護福祉士などの配置とその評価を検討すべきではないか―。

 10月3日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)では、こういった議論も行われました(DPC病棟から地域包括ケア病棟への転棟等に関する記事はこちら、ICUの関する記事はこちら)。

10月3日に開催された、「2019年度 第9回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

 

入院患者の高齢化、重症化が進む中で療養生活支援が重要だが、看護師は極めて多忙

 お伝えしているように、入院医療分科会では2020年度の診療報酬改定に向けて「入院医療に関する技術的課題についての調査・分析」を行っており、10月3日の会合では、▼特定集中治療室管理料等▼療養病棟入院基本料▼抗菌薬適正使用加算▼地域包括ケア病棟入院料―などを議題としました。このうち「療養病棟」については、排尿自立に焦点が合わせられました。

厚労省の特別調査分析からは、次のような状況が明らかになっています。

▽膀胱留置カテーテルを長期間(3か月以上)使用している患者が少なからずいる

膀胱留置カテーテルの状況(入院医療分科会(3)1 191003)

 
▽膀胱留置カテーテルの留置期間短縮に向けた取り組みを行っている病棟では、そうでない病棟に比べて「カテーテルを抜去できた」患者の割合が高い

膀胱留置カテーテルと留置期間短縮取り組みとの関係(入院医療分科会(3)2 191003)

 
▽【排尿自立指導料】算定病棟では、そうでない病棟に比べて「膀胱留置カテーテルを抜去できた」患者の割合が高い

排尿自立指導料と膀胱留置カテーテル抜去の関係(入院医療分科会(3)4 191003)

 
▽【排尿自立指導料】算定病棟では、療養病棟全体と比べて「膀胱留置カテーテル留置患者割合」が低い

膀胱留置カテーテル留置患者割合(入院医療分科会(3)5 191003)

排尿自立指導料と膀胱留置カテーテル抜去の関係(入院医療分科会(3)6 191003)

 
 
 手術後の患者や転倒リスクの高い患者などでは、膀胱留置カテーテル実施が必要なケースも少なくありません。しかし長期間のカテーテル留置により▼尿路感染▼膀胱結石▼尿道皮膚瘻―が生じるほか、可動域が狭まるために「身体機能」および「精神機能」の低下も引き起こしてしまいます。

 この点、上記の分析結果からは「膀胱留置カテーテルの留置期間短縮の取り組み」や「【排尿自立指導料】の要件となっているケア」によって、膀胱留置カテーテルの抜去が一定程度可能であることが示唆されます。

 入院医療分科会では、松本義幸委員(健康保険組合連合会参与)が「従前、議論した中心静脈栄養と同じく、早期の膀胱留置カテーテル抜去に向けた取り組みを進めるべき」と指摘。池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)も「同感である。ただし、急性期病棟で膀胱留置カテーテルを留置される患者も一定程度いる。急性期病棟では排尿自立に向けた支援・ケアを行えず、療養病棟に任せきりというところもある」と述べ、急性期からの「排尿自立」が重要と強調しました。2020年度の次期診療報酬改定では、2016・18年度改定と同じ「排尿、排泄の自立」支援も大きなポイントとなりそうです。

2018年度改定(排尿自立指導料)

 
 
 この点に関連し、入院医療分科会では「患者のケア」というテーマでも意見交換が行われました。排尿や排泄のケアは、どちらかと言えば「介護」「介助」に分類されるでしょう。看護業務の一環ではありますが、多忙な看護師に「排泄のケア、自立に向けた支援を十分に行え」と求めることが難しい場面もあるでしょう。とりわけ、昨今の診療報酬改定では「重症患者の受け入れ」要件が厳しくなっており、看護師の業務負担がますます重くなっています。

 こうした状況を受け神野正博委員(全日本病院協会副会長)は、「そろそろ病棟における介護福祉士の配置・役割などについてきちんと議論すべき時期ではないか」と提案しました。現在でも、介護福祉士が配置されている病棟は少なくありませんが、「看護補助者」として配置されています。神野委員は「国家資格を取得しながら『看護補助者』としてしか評価されない。質の高い療養環境を確保するためには、『介護福祉士』としての評価をすべきではないか」との考えも示しています。

 池端委員も「名称はさておき、介護福祉士の評価を検討すべき」と神野委員に賛同(日本慢性期医療協会の武久会長も記者会見でこうした点を提案している)。また牧野憲一委員(日本病院会常任理事)も「急性期病棟においても介護福祉士配置は重要なテーマである。看護師は多忙を極めており、療養生活の支援はその道のプロフェッショナルが担当することを考える必要がある」旨の考えを示しました。

 高齢化が進む中で「質の高い入院医療提供」を確保するためには、名称はさておき「介護福祉士の病棟配置とその評価」について正面から議論することが必要でしょう。2020年度の次期診療報酬改定に向けて、大きな論点が浮上した格好です。

抗菌薬適正使用支援加算、「チームの院内各部門への積極的な介入」という大きな成果

 このほか10月3日の入院医療分科会では、「抗菌薬の適正使用」をどう推進していくかも議論されました。

薬剤耐性菌の発生を是正するため、全世界的に「抗菌薬の適正使用」が重要テーマとなっています。2018年度の前回診療報酬改定でも重要課題の1つに位置付けられ、例えば入院基本料等加算の1つとして【抗菌薬適正使用支援加算】が新設されました。

具体的には、院内に「抗菌薬適正使用支援チーム」を設置し、▼感染症治療の早期モニタリングと主治医へのフィードバック▼微生物検査・臨床検査の利用の適正化▼抗菌薬適正使用に係る評価▼抗菌薬適正使用の教育・啓発▼院内で使用可能な抗菌薬の見直し▼他の医療機関から抗菌薬適正使用の推進に関する相談を受ける―といった取り組みを実施することを評価するものです。

2018年度改定(抗菌薬適正使用支援加算2)

2018年度改定(抗菌薬適正使用支援加算2)

 
本加算について神野委員は「これまで、どちらかというと『受け身』であったスタッフが、積極的に院内の各部署に抗菌薬適正使用を『能動的』『積極的』に働きかけている。非常に大きな成果である」と高く評価。今般の特別調査では、ほとんどすべての抗菌薬適正使用支援チームが「診療相談がなくても 必要に応じて助言を行う」という実態が明らかになっています。

この点、牧野委員も「抗菌薬適正使用支援チームが、院内のどの診療部門にも積極的に介入することが一般化している。一定程度の病棟では『必須』にしても良いくらいだ」と高く評価しています。

抗菌薬適正使用支援加算の効果(入院医療分科会(3)10 191003)

 
 
しかし、本加算の取得状況を見ると、急性期一般1(旧7対1一般病棟)の70.1%、特定機能病院の94.2%、専門病院の75.0%と、急性期病棟で取得割合が高い一方、急性期一般4-7での取得は14.3%、地域一般では6.3%にとどまっています。

抗菌薬適正使用支援加算の届け出状況(入院医療分科会(3)9 191003)

 
この点については、本加算が▼感染防止対策加算(言わば1階部分)▼感染防止対策地域連携加算(2階部分)―の上に乗る「3階部分の加算」であるという点も関係していると指摘されます。3つの加算の施設基準等は重複する部分もあるため、「ベースの加算を取得すれば、新加算取得のために新たな人員配置などをしなくともよい(相当程度の兼務可能)」というメリットがある一方で、「1階部分の感染防止対策加算、2階部分の感染防止対策地域連携加算を取得できなければ、抗菌薬適正使用支援加算も算定できない」というデメリットも生んでしまっているようです。今後、中央社会保険医療協議会でこうしたメリット・デメリットに遡った議論が行われると見込まれます。

 
 
なお、入院医療分科会では【総合評価加算】の在り方も議題となりました。

【総合評価加算】は、75歳以上の後期高齢者医療制度創設に合わせ、2008年度の診療報酬改定で設けられた加算です。65歳以上の高齢入院患者、40-64歳のうち特定疾病を有する入院患者(つまり、介護保険サービスを受ける可能性の高い入院患者)について、▼基本的な日常生活能力▼認知機能▼意欲―などを総合的に評価する診療報酬項目です。患者の総合的なニーズを把握し、それを可能な限り満足させるサービス提供を目指しています。

しかし、後に【退院支援加算】や【認知症ケア加算】、【薬剤総合評価調整加算】など、個別ニーズを把握し、それにマッチしたサービス提供を目指す加算が創設されたため、【総合評価加算】と他の個別の入院基本料等加算とで「機能分担、役割分担が見えにくくなってしまっている」と指摘されます。

牧野委員や松本委員らは「加算の目的、要件などを見て、整理してもよいかもしれない」との考えを示しています。診療報酬の簡素化にもつながる重要なテーマです。

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