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DPC病棟から地域包括ケア病棟への転棟、地ケア病棟入院料を算定すべきか、DPC点数を継続算定すべきか―入院医療分科会(1)

2019.10.3.(木)

 DPC病棟から、「地域包括ケア病棟に転棟」した場合には【地域包括ケア病棟入院料】を算定するが、「地域包括ケア病室に転室」した場合には【DPC点数】を継続算定することになる。この異なる取り扱いを是とすべきか、取り扱いを同一とすべきか―。

 10月3日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)で、こういった議論が行われました。

 両者の取り扱いを同一とする場合、「地域包括ケア病室への転室でも【地域包括ケア入院医療管理料】を算定する」方法と、「地域包括ケア病棟への転棟でもDPC点数を継続算定する」方法とが考えられ、両者のメリット・デメリットを考慮しながら検討することが求められるでしょう。

10月3日に開催された、「2019年度 第9回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

「自院の急性期後患者の受け入れ」に偏った地域包括ケア病棟、適正化も考えるべきか

 入院医療分科会では、2020年度の診療報酬改定に向けて「入院医療に関する技術的課題についての調査・分析」を行っています。10月3日の会合では、▼特定集中治療室管理料等▼療養病棟入院基本料▼抗菌薬適正使用加算▼地域包括ケア病棟入院料―などを議題としました。まず「地域包括ケア病棟」について見ていきましょう。

 地域包括ケア病棟そのものに関しては、これまでにも入院医療分科会で議題にあがっており、2020年度の次期改定に向けて、例えば次のような問題点・論点が浮上してきています。

(1)地域包括ケア病棟では、▼急性期後患者の受け入れ▼在宅等患者の急変時の受け入れ▼在宅復帰支援―の3機能をすべて果たすことが求められ、2018年度改定では、「在宅等患者の受け入れを積極的に行う小規模病院の地域包括ケア病棟」を高く評価した。ただし、在宅医療等の提供状況を見ると、【在宅患者訪問看護・指導料】や【開放型病院共同指導料】などは極めて低調である

 
(2)地域包括ケア病棟では、▼急性期後患者の受け入れ▼在宅等患者の急変時の受け入れ▼在宅復帰支援―の3機能をすべて果たすことが求められるが、「急性期後患者の受け入れ」に著しく偏った病棟もある

 
 
 10月3日の入院医療分科会では、このうち後者(2)について、厚労省から▼許可病床の多い病院に設置された地域包括ケア病棟ほど「自院の一般病床(地域一般、地ケア、回リハ以外)」から入棟する患者割合が多く、「他院の一般病床」からの入棟患者割合が少ない▼「一般病棟と地域包括ケア病棟のケアミクス」の場合には、そうでない場合と比べて「自院の一般病床(地域一般、地ケア、回リハ以外)」からの入棟患者割合が多く、「他院の一般病床」からの入棟患者割合が少ない―という新たな分析結果が示されました。


 
端的に「大規模な急性期病院に設置された地域包括ケア病棟では、自院の急性期病棟からのpost acute患者(急性期後患者)が多い」ことを裏付けるデータです。もちろん前述のように、地域包括ケア病棟には▼急性期後患者の受け入れ▼在宅等患者の急変時の受け入れ▼在宅復帰支援―の3機能が求められており、「自院の急性期病棟からpost acute患者を受け入れる」ことそのものには問題ありません(むしろ果たさなければならない1機能)。入院医療分科会などで問題視されているのは、あくまで「自院の急性期病棟からpost acute患者」に偏り過ぎている(逆に言えば、自宅等患者の受け入れが著しく少ない)病院があるという点です。

地域包括ケア病棟にもいくつかのタイプがあり、例えば▼主に急性増悪した在宅療養中等の患者や、他院のpost acute患者を受け入れる病棟▼主に自院のpost acute患者を受け入れる病棟―が考えられます。前者は中小規模の病院に多く、後者は急性期の大病院に多い傾向があり、2018年度改定では「前者を手厚く評価し、後者の評価を据え置く」こととなりました。


 
2020年度の次期改定では、これをさらに進める方向が見え隠れしており、神野正博委員(全日本病院協会副会長)、池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は「両者を区分けした診療報酬設定を中央社会保険医療協議会で検討してもらうべき」との見解を示しています。

2018年度の前回改定で「前者(自宅等患者割合の高い地域包括ケア病棟)を手厚く評価し、後者(それ以外の地域包括ケア病棟)の評価を据え置いた」ことを考えれば、例えば、「自院のpost acute患者受け入れ割合が著しく高い(自宅等入院患者割合の著しく低い)、急性期の大病院に設置された地域包括ケア病棟について、入院料(基本料)を引き下げる」ことなどが検討される可能性も出てきそうです。

DPC病棟から地域包括ケアへの転棟と転室、現在は「一物二価」状態

 また10月3日の入院医療分科会では、新に「地域包括ケア病棟入院料」(病棟)と「地域包括ケア入院医療管理料」(病室)とで、異なる取り扱いとなっている点が議論されました。

 例えば、DPC病棟(一般病棟)の患者が急性期治療を終え、自院の地域包括ケア病棟(一般病棟)に転棟した場合には、地域包括ケア病棟では【地域包括ケア病棟入院料】を算定します。この場合【急性期患者支援病床初期加算】(300点、14日まで)も算定可能です(パターンAとする)。

 また、DPC病棟(一般病棟)から、自院の療養病棟に設置された地域包括ケア病室に転倒した場合も、上記と同様の取り扱いとなります(パターンBとする)。

 一方、DPC病棟(一般病棟)の患者が急性期治療を終え、当該病棟に設置された地域包括ケア病室に転室した場合には、【地域包括ケア入院医療管理料】ではなく、引き続きDPC点数を算定することとなり、【急性期患者支援病床初期加算】(300点、14日まで)の算定もできません(パターンCとする)。


 
 この取り扱いの差について、入院医療分科会委員では「違和感がある」との声が多数だされました。牧野憲一委員(日本病院会常任理事)や神野委員、池端委員は、こぞって「一物一価の原則に反する」とし、次期改定で見直しを検討すべきではないかと指摘しました。とくに牧野委員は、パターンCについて「地域包括ケアへの移行後もDPCを引きずっており、皆おかしいと思っている」とコメント。ここから、パターンCをパターンA・Bと同じ取り扱い、すなわち「地域包括ケア病室に移行した後は、DPC病棟であっても【地域包括ケア入院医療管理料】を算定する」こととすべきとの考えを持っていると伺えます。

 
 ただし厚労省は従前、「DPC病棟(一般病棟)から地域包括ケア病棟への転棟時期を見ると、点数が『DPC<地域包括ケア病棟』となる時点に集中している」ことを問題視する資料を提示しました。

 7月25日の入院医療分科会には、次のような事例が紹介されています。

 
▽「胸椎、腰椎以下骨折損傷 (胸・腰髄損傷を含) 手術なし」(160690xx)症例について、DPC病棟に入棟してから9日目に、地域包括ケア病棟へ転棟する患者が突出して多い

▽「胸椎、腰椎以下骨折損傷 (胸・腰髄損傷を含) 手術なし」(160690xx)のDPC点数は、▼入院期間I(8日まで):3014点▼入院期間II(9日目―):2271点―に設定

▽地域包括ケア病棟入院料の点数は、入院から14日までは▼「入院料2」(DPCでは大規模な急性期病院が多く、入院料2を届け出る病院が多い)で2708点(初期加算150点を含む)▼「入院料1」(200床未満で在宅患者受け入れ割合などの高い病棟)で2888点―に設定

▽入院から9日目に「DPC点数<地域包括ケア病棟の点数」となり、これと同じ時点で地域包括ケア病棟への転棟が数多く生じる

 
 病院経営的には「点数の高低を見た転棟」も理解できますが、「患者の状態にマッチした病棟・病院での入院治療」という観点では疑問が生じます。病棟の機能分化・診療報酬の設定という観点からすれば、「急性期病棟での濃厚な治療の必要性が薄くなり、地域包括ケア病棟での在宅復帰支援のほうが相応しい」として転棟することが望ましく、こうした転棟が「DPC入棟から9日後に集中する」とは考えにくいのです。

 この問題は、かつての【亜急性期入院医療管理料】(病室単位)においても生じていました。そこで2014年度の診療報酬改定において【亜急性期入院医療管理料】を、【地域包括ケア病棟入院料】(病棟単位)と【地域包括ケア入院医療管理料】(病室単位)に改組し、後者については、こうした問題を是正するためにパターンCの取り扱いが導入されたのです(疑義解釈の中で示された)。

このような経緯も考慮すれば、「点数のみに着目した転棟」を是正するために、パターンA・BをパターンCの取り扱いと同じにするとの見直し方向も考えられそうです。つまり、DPC病棟から地域包括ケア病棟に転棟した場合には、【地域包括ケア病棟入院料】ではなく、【DPC点数】を継続して算定するというものです。

これにより「点数のみに着目した転棟」が是正されるとともに、前述した「自院の急性期病棟(DPC病棟)から地域包括ケア病棟への転棟」も一定程度減少することが予想されます。もっとも、この場合「急性期病棟の一部を地域包括ケア病棟に機能転換する」インセンティブが非常に小さくなるため、「旧7対1である急性期一般入院料1の削減」という面で課題も出てきそうです。

今後、中医協総会でどのような議論が行われるのか注目を集めそうです。

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